「ポップスター」(ネタバレ)ナタリー・ポートマンがマドンナ、レディ・ガガになる

面白い映画でした。

ただ、映画そのものが面白いということではなく、この映画、何をやろうとしているんだろう? と考えながら見ていましたら、最後まで集中してみられたという意味です(笑)。

 

ポップスター

ポップスター / 監督:ブラッディ・コーベット

 

とにかく、つくりが最初から最後まであざとく感じられるんですが、それがひょっとしたら真面目さからきているかも知れないと思わせられるのです。

 

物語は、1999年、セレステ(ラフィー・キャシディ)の通う学校内で銃乱射事件が起きます。セレステは目の前で教師や同級生が射殺されるところを目撃し、また自分も脊髄に致命的な怪我を負います。

一命をとりとめサバイバーとなったセレステは、姉エレノア(ステイシー・マーティン)とともに作った追悼曲が注目を浴び、それに目をつけたやりてのマネージャー(ジュード・ロウ)によってミュージックスター(ポップスター)となっていきます。

 

そして2017年、31歳となったセレステ(ナタリー・ポートマン)は酒と薬に溺れ、また過去の自動車事故やその時の人種差別発言、そして若くして娘アルビー(ラフィー・キャシディの二役)を生んだことなどからバッシングを浴びる日々です。

再起を期したツアーが計画されます。しかし、その直前、クロアチアのビーチで銃乱射事件が起き、その犯人たちがセレステがMVで使用しているマスクを着用していたのです。

マスメディアから質問攻めにあうセレステ、故郷でのファーストライブを前にして不安定になり薬に逃げるセレステ、しかしステージに立ったセレステは一転水を得た魚のようにポップスターを演じきるのです。

 

という映画です。

このストーリーでいけば、普通は「アリー スター誕生」や「ボヘミアン・ラプソディ」のような音楽映画を想像します。でも、つくりがまったく違います。

 

まず、音楽(に関わる)シーンはラストのライブをのぞいてまったく(と言っていいほど)ありません。そもそもシーン構成としても、銃乱射事件からデビューしたあたりのセレステ14、5歳と、すでに煮詰まってしまっている31歳のシーンだけですので、その間のサクセスストーリーもまったくありません。

 

徹底して描かれるシーンは嫌なシーンばかりです。なぜこのシーンをこんなに長く描くのだろうとうんざりしてきます(笑)。

この映画、何をやろうとしているのだろう? というのはそういうことです。

 

マネージャーがセレステを音楽プロダクションに売り込むシーン、その担当者が時間に遅れてきたり、CDだかポスターだかのデザインについてマネージャーがピーチがいいだの、それをセレステが否定したり、挙げ句に担当者は売れなくても責任は持てないなどとうだうだと喋り、それなら仕事受けなきゃいいんじゃないと思いますが、それもこれも、その後にマネージャーが汚い言葉で罵ったりするシーンを入れたいからじゃないかと思われ、そもそもジュード・ロウが演じるマネージャーも結構重要な役なのに名前もなく、登場のさせ方もかなり唐突で、誰このおっちゃん、と思いましたらジュード・ロウさんでした(笑)。

 

レコーディングシーンでは、うまくいっていないのかマネージャーがセレステを外へ連れ出し、壁ドン状態で説教するシーンも、なんでこのシーンをここにつっこむ? と思いましたら、マネージャーが汚い言葉を発している時にその後ろをエレノアが通っていき、セレステに姉の前では汚い言葉はよしてなどと言わせるのです。

 

正統的な音楽映画であれば、こうしたくだらないシーンを入れるにしてもちょっとした味付け程度というのが常道ですから、こうしたところにこの映画の本当の意味があるように思います。

 

事件後の病院でのシーンも奇妙でした。

リクライニングベッドで上体を起こして横たわるセレステ、その横にセレステの顔の方に足を向けて寝そべるエレノア、ベッドのこちら側に両親、そのカットのまま両親との会話があるのですが、カメラは固定で、その後少しパンしますが一貫して両親を撮ろうとはしません。

 

そうした奇妙なつくりが気になって、気になって(笑)。

 

映画の始め方もかなりあざといです。

まず、ホームビデオ(的)映像でセレステ家族が映し出されます。エレノア(セレステではありません)が両親の前で楽しそうに歌い踊っています。セレステはその後ろで笑顔を見せています。

突如シーンが切り替わり、暗闇の中を車が走ります。車はどこかの敷地に入り男が降りて何かやっています。何をやっているのかは暗くてわかりません。

翌日でしょう。学校です。教師が生徒たちを迎え入れ挨拶を交わしています。一人遅れた生徒が入ってきたようです。教師が怪訝な顔をします。銃が発射され教師は吹っ飛びます。セレステが静止しようとしますが、銃は乱射されます。外では車が爆発します。

 

駆けつける警察車両の映像をバックに、なんと! ここでエンドロールが流れるのです。タイトルや主演のオープニングクレジットではありません。スタッフまで含めたまさしくエンドロールです。

 

その後、事件後のセレステ14、5歳のシーンに入るのですが、そこに「Genesis(創世記)」とタイトルが入ります。

 

むちゃくちゃあざといです。

 

前半である「Genesis」の最後は、セレステがロックミュージシャンとの一夜を過ごした後、自分の(姉妹の?)部屋に戻ってみれば、そこではエレノアとマネージャーが寝ているのです。

 

セレステの苛立ちの原因が事件のPTSDや身体への後遺症だけではなく、姉エレノアへの嫉妬、劣等感、そして愛情の入り混じった愛憎、そして男の大人マネージャー(名がない)への憧れ、恐れ、そしてこれも愛情の入り混じった愛憎が影響していると描きたかったのだろうと思います。

 

後半の2017年には、「Regenesis」のタイトルがつけられています。

後半はナタリー・ポートマンの独壇場です。それも嫌なシーンばかりです。どう考えてもこれはポートマン自身がこのセレステをやりたかったという映画です。

 

後半もなぜこのシーンをこんなに長々とやるのかというつくりになっています。

 

セレステには、件のロックミュージシャンとの間にできた娘アルビーがいます。あの時の自分と同じくらいの歳になっているということです。ラフィー・キャシディさんの二役ですから、セレステが自分自身を見ているという意図なのかもしれません。

 

再起のツアーを控えています。そこにクロアチアで銃乱射事件が起きます。セレステは始終ハイテンションでイライラしています。エレノアとアルビーがやってきます。セレステはエレノアを遠ざけるようにアルビーをランチに連れ出します。

 

レストランでのふたりの会話のくだらなさは徹底しています。ひとりセレステが喋りまくります。アルビーに知られないようにワインをプラスチックの容器に入れさせ飲んでいます。店のオーナーが写真を撮っていいかと言ってきます。セレステは喧嘩をふっかけるようにつっかかります。

 

本当にくだらないシーンですがこれを実に丁寧に描いています(笑)。

 

さらにエレノアにもアルビーが付き合っている男のことでつっかかります。実質アルビーを育ててきたエレノアに、アルビーが妊娠しているかもしれないとデタラメを言い、私があなたたちを養っているのにと悪態をつきます。

 

セレステが部屋に戻りますとアルビーとマネージャーがハグしています。マネージャーはアルビーが泣いていたので慰めていただけだと言います。アルビーを追い出し、マネージャーに昨日の残りでいいから薬をくれと言い、ふたりで薬をやります。

 

この後、そのシーンは早回しのコラージュ映像で処理されます。この早回し処理は前半にもあり、(間違っているかもしれないけど)スターダムに登っていくサクセスストーリーも早回しのコラージュ映像が使われていました。

 

とにかく、再起のライブです。薬でフラフラのセレステですが、あれは演技だったのか、ステージに立てばシャキッとするところを描きたかったのかよくわかりませんが、とにもかくにも華やかなライブステージ、3曲くらいだったと思いますが(マドンナやレディ・ガガのイメージで)歌いきって終わります。客席ではエレノアとアルビーが穏やかな笑顔でステージを見つめています。

 

期待は裏切られたようです(笑)。単純に銃乱射事件からのサバイバーの再生(Regenesis)物語だったのかもしれません。

 

再びエンドロールが流れますが、逆回しに見えるよう上から下へ流していました。

 

さらにもうひとつあざとい演出があります。

映画の冒頭から「神」視点のナレーションが何か所かに入り、なんと! ラストのナレーションは、セレステが生死をさまよっているとき、テロリズムを癒やすものとしてあなたに「光の声 Vox Lux」を与える(適当につくったけどこんなような意味だったと思う)と、神の啓示を得たと語っていました。

 

ナレーションはウィレム・デフォーさんです。そして音楽はシーアさん。随分昔、日本版のMVに土屋太鳳さんが起用されたアーティストです。映画の歌は本人の吹き替えなのかな?

 


Sia 『アライヴ feat. 土屋太鳳 / Alive feat. Tao Tsuchiya』

 

長々とあらすじまで書いてしまいましたが、結局よくわからない映画としか言いようがなく、ただ、ブラディ・コーベット監督がやりたかったことのひとつには「得体のしれない憎悪」みたいなもの、それをテロリズムと重ね合わせて描きたかったのではないかと思います。

 

また、製作にも名を連ねているナタリー・ポートマンさんにしてみれば、自分自身の半生を重ね合わせられる題材と感じたということもあるのだろうと思います。

 

「シークレット・オブ・モンスター」を見てみようと思います。

 

シークレット・オブ・モンスター(字幕版)

シークレット・オブ・モンスター(字幕版)

  • 発売日: 2017/09/02
  • メディア: Prime Video