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「さらば愛しきアウトロー」(ネタバレ)ロバート・レッドフォード、82歳、最後の出演作

ロバート・レッドフォードさん、82歳、俳優として最後の映画になるようです。

 

さらば愛しきアウトロー

さらば愛しきアウトロー / 監督:デヴィッド・ロウリー


「明日に向って撃て!」からちょうど50年、下積みの時代が10年ほどあるようですのでおよそ60年、ハリウッドの第一線で俳優として活躍し、さらに監督、製作という立場でも一定の評価を受け、そうした成功に奢ることなく、インディペンデント系の映画を上映するサンダンス映画祭の顔として40年、映画界を引っ張ってきたということになります。

 

最後の作品は、実在の銀行強盗フォレスト・タッカーという人物の話で、当局の推定では生涯で400万ドル盗んだと言われています。映画は、1981年、実際にはタッカー本人は1920年生まれですので61歳の頃なんですが、おそらくレッドフォードさんの年齢を考えてのことなんでしょう、映画では74歳の設定になっています。

 

サンダンス映画祭のネーミングにも使われているサンダンス・キッドという銀行強盗役で世に出たことから考えれば、最後の作品が A old bank robber というのも何か思うところがある選択だったのかもしれません。その意味では、原題は「The Old Man & the Gun」ですが、邦題の「さらば愛しきアウトロー」というのもいいタイトルとも言えます。

 

映画はタッカー晩年の話ですので、犯罪としては銀行強盗のシーンしかありませんが、このタッカー、脱獄の常習犯らしく、15(16?)歳の時に初めて脱獄して以来、本人が語るところによれば「18回成功し12回失敗した」という、エスケープ・アーチストとも呼ばれる人物です。

レッドフォードさん、 若い頃にこの脱獄をメインにした映画を撮っていればまた面白い映画になっていたかもしれません。

 

映画はいきなり銀行強盗のシーンから始まります。といっても派手な打ち合いやアクションがあるわけではありません。老年の紳士が銀行の窓口の女性に粋に挨拶し、お金の詰まったカバンを持って立ち去っていくだけです。フォレスト・タッカー(ロバート・レッドフォード)その人です。

 

実際、タッカーは拳銃は持ってはいたが一度も使ったことがないと言われており、本人は、「To me violence is the first sign of an amateur」と語ったそうです。「暴力なんて素人のやることさ」といった信念とプライドの言葉なんでしょう。

 

タッカーは車で逃走します。当然通報され警察が追ってきます。タッカーはいつも補聴器をつけていたと言われており、実はそれは警察無線を傍受していたらしく、映画でもその追跡をかわすために、逃走途中、路上で車の故障で立ち往生している女性ジュエル(シシー・スペイセク)を助ける(フリをする)ことで追跡をかわします。

ただ、このシーンもそうですが、映画全体がオールドスタイルでつくられており、緊迫感とか危機一髪を感じさせるような映画ではありません。実際、ジュエルとの会話ものんびりしたもので、手助けしようか? いえ、大丈夫、と言われながらも、巧みな会話でジュエルのハートをつかみ(笑)、故障した車のことなどどうなったかもわからないまま、自分の車に同乗させ、ダイナーで口説きにかかるのです。

 

このシシー・スペイセクさん、笑顔が可愛い俳優さんです。多分いろいろ見ているのでしょうが、これとはっきり思い出すことができずウィキペディアを見てみましたら、「キャリー」の俳優さんなんですね。とは言っても40年前の映画ですので顔を見て結びつくわけではありません。

 

このジュエルは、タッカーの3人目の妻がモデルになっているそうです。現実のタッカーは3度結婚し、男と女の子2人の子どもがいるとウィキペディアにはあります。

 

映画ではこのジュエルとの老年のラブロマンスがひとつの軸になっています。何といってもスペイセクさんの笑顔が効いているのですが、ちょっとした会話の駆け引きやお互いに惹かれ合っていることはわかっているのにそれ以上進もうとしない禁欲さ(ちょっと違うけど)とか、これらもかなりオールドスタイルです。

ジュエルは農場を持つ未亡人で、農場でくつろぎ会話するシーンや宝石店を訪れブレスレットをつけたまま店を出てしまう、いたずら半分本気半分のシーンもあります。ジュエルへのプレゼントを選んでいる時、店員がその場を離れたすきにタッカーがジュエルを店の外へ連れ出します。おそらくタッカーはジュエルに見せるいたずらのつもりの本気なんでしょう。ジュエルの心情はちょっとわかりませんが、笑顔を見せつつ、途中でタッカーの腕を取り店に戻ります。

そうした付き合い方を続けていきます。もちろんタッカーは自分が銀行強盗であることを言っていませんし、まさかジュエルも想像だにしないでしょう。

 

ある時、タッカーは銀行へ赴きます。強盗ではありません。ジュエリーの農場の借金を肩代わりしようと、妻へのサプライズなのでこの場で現金で支払いたいと申し出ます。もちろん本人のサインがないとだめだと受け付けられません。このシーンだけで終わってしまう中途半端なシーンではあるのですが、タッカーの人物像を表現するシーンではあります。

 

この映画はなんといってもロバート・レッドフォードさんの映画ですのであまり重要人物としては描かれませんが、ふたりの相棒がいます。テディ(ダニー・グローバー)とウォラー(トム・ウェイツ)です。三人で銀行を襲うのは1シーンだったと思います。それにあまり絡みもありません。映画としては物足りませんがやむを得ないところでしょうか。

刑事のジョン・ハント(ケイシー・アフレック)も同じような意味で物足りないです。こちらは出番は多く、妻や子どもも登場し、タッカーを追いかける刑事として悶々とするなどのシーンが結構あります。

偶然ダイナーで鉢合わせになるシーンもあります。タッカーはテレビでハントの顔を知っていますのですぐに気づきます。ハントがトイレに入ったのを見て後を追い、ふたりだけのシーンになります。ハントもすぐにタッカーだと気づきます。タッカーが余裕を見せて上手に出ます。

というシーンなんですが、もうひとつ、何を見せたいのかが伝わってきません。ハントの気持ちが映画に出てきていないからでしょう。逮捕できない忸怩たる思いであるとか、真逆に尊敬するような思いを抱いたであるとか、何にしろハントの気持ちを見せておかないとせっかくのタッカーの余裕綽々の態度が空振りに終わってしまいます。

 

ケーシー・アフレックさんって、昔からああいう演技でしたっけ? 最近見ている「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」でもそうですが、(批判ではありませんが)やる気があまり見えない(笑)演技が多いですね。この映画ではあまりはまっていないです。

 

ところで、実在のタッカーや相棒、そしてハントの写真とレッドフォードさんたち俳優の写真を並べたサイトがありました。

www.historyvshollywood.com

 

ということで、映画の結末は、タッカーがFBIに逮捕され収監されます。面会に訪れたジェリーに過去の16回(18回?)の脱獄を記したメモを渡します。つまり、脱獄するよというメッセージなんでしょうが、ジェリーは刑期を終えなさいと笑顔で諭します。

 

刑期を終えて出所します。ジェリーが迎えに来ています。ふたりはジェリーの農場で穏やかに暮らします。そして、ある日、タッカーはソファーでまどろむジェリーに買い物に行くが欲しいものはないかと訪ね街へ出かけていきます。

 

タッカーは公衆電話からハントに電話します。何を話したのか記憶できていません。その後、タッカーは銀行へ入っていきます。

 

ということで、ロバート・レッドフォードさん最後の映画としてはぴったりの映画かとは思いますが、映画の面白さや完成度から言えばかなり物足りないものではありました。

 

監督は、「セインツ 約束の果て」「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」のデヴィッド・ロウリー監督です。

 

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セインツ(字幕版)

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