そんなには褒めないよ。映画評

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「ガラスの城の約束」(ネタバレ)ネグレストを愛情視点で描いていいものか?

まためんどくさい映画を見てしまいました(笑)。

これが今の話なら、完全に児童虐待でアウトです。それをこんな脳天気な父娘の愛情物語に描くなんて、いくら1970年代の話だとしても、映画にするならもう少し考えるべきかと思います。

もうこんなブラックな家族ファンタジーはやめましょうよ、という映画です。

 

ガラスの城の約束

ガラスの城の約束 / 監督:デスティン・ダニエル・クレットン

 

原作があります。「MSNBC.comの元ゴシップコラムニストとして広く知られているアメリカの作家兼ジャーナリスト(ウィキペディア)」ジャネット・ウォールズさんが、自分自身の半生を綴った『ガラスの城の約束』(2005)です。映画公開にあわせて日本語版が発売されたようです。

 

ガラスの城の約束 (ハヤカワ文庫NF)

ガラスの城の約束 (ハヤカワ文庫NF)

 

 

原作も映画のように、私(ジャネット)は「自由に生きる」ことを父親から教わったという内容なんでしょうか?

 

この映画の父親レックス(ウッディ・ハレルソン)は、どこからどうみても自己中心的でマンスプレイニングでアルコール依存症のネグレストです。母親ローズマリー(ナオミ・ワッツ)も夫依存症で子どもたちのことを顧みない自己中です。

 

こうしたネグレストの話を家族愛の話にすり替えるのはどうなんでしょう?

 

虐待を親の愛情と思い込むということもあるとききます。もしそうならかなり深い映画になりそうですが、この映画が描いている父娘関係はそれじゃないです。親の虐待を描きつつ、ごく一般的な父娘の愛情を描いています。両親はネグレストなのに、子どもたちはごく一般的な生活環境にいるように描かれています。それがすり替えているということです。

 

この物語を描くのであれば、ジャネット(ブリー・ラーソン)視点の映画にすべきです。出演シーンが多いですのでそのように見えるかも知れませんが、この映画の子どもたちは、父親レックスから見た、こうあってほしいという子どもたちです。「ネグレストだったけれどもいい父親だった」ではなく、「いい父親だったかも知れないけれどネグレストだった」と描くべきです。

 

レックスとローズマリー夫婦には4人の子どもがいます。 ローリ、ジャネット、ブライアン、モーリーンです。家はありません。トレーラーハウスというわけでもありません。映画では、荒野に野宿したり、空き家に勝手に入り込んだり、レックスの実家に戻ったり、いわゆるホームレス状態です。

レックスに収入があるようには描かれておらず(一部あり)、ローズマリーも絵を描いているシーン以外にはなく、子どもたちがお腹を空かしているシーンもありますが、どうやって生活が成り立っているかは一切描かれていません。

子どもたちを学校にいかせている様子もなく、レックスの自然から学べが教育方針のように描かれます。レックスは、子どもたちへのプレゼントと称して、夜空を見上げながら好きな星をひとつずつ選べなどとロマンチストの如く描かれます。

ジャネットがガラスづくりの家を欲しいと言えば、設計図(平面図)を書き、庭に穴を掘らせ、ここに建てると期待をもたせます。しかし、その穴はゴミ溜めになります。

 

こんな父親ですが、子どもたち、といってもこの映画、ジャネットしか描いていませんので、ジャネットは父親の愛情を疑うことはありません。

 

そんな生活環境でどうやって育ったかはわかりませんが、ローリ、ジャネットと順番に家を出ていきます。そして現在、ジャネットは大手新聞(ニューヨーク・タイムズって言っていた?)のコラムニストとして成功しています。

 

ジャネットは金融トレーダー(かな?)のデヴィッドと結婚しようと考えています。でも父親には言えません。このあたりの描写が適当でよくわかりませんが、ジャネットは両親のことを隠しているわけではなく、実際交流もあります。

ジャネットは、現在の自分の生活が自分の求めていることか迷っているという設定です。そうはみえないんですが、結局、最後にはデヴィッドと別れます。

 

ここの展開がまったくわからないんですが、ジャネットは何に迷い、何を捨てたんでしょう? 映画からわかることはデヴィッドと別れたことだけで、ゴシップライターという、父親が馬鹿な仕事というものを捨てたわけではなく、それでも、あたかも父親の「自由に生きろ」との言葉に従ったかのような描き方になっています。

 

とにかくしょうもない映画です。

 

ある個人がどんなにしょうもない父親であってもそこに断ち切れない愛情を感じ、自分の今があるのは父親のおかげだと思うことにどうこういうつもりはありませんが、この映画のように、「自由に生きる」ことを父親から教わったという結末をつけて、この映画で描かれているホームレス的生活をあたかも現代の管理消費社会のひずみを解消するアンチテーゼのように描き、それを子供に強いることを肯定するのは間違っています。って、私は思いますけどね…。

 

デスティン・ダニエル・クレットン監督、「ショート・ターム」はよかった印象が残っていますが、この映画はダメです。その「ショート・ターム」でケアマネージャーのグレイスをやっていたのが、この映画のジャネットのブリー・ラーソンさん、数年前ですね。

  

ショート・ターム(字幕版)

ショート・ターム(字幕版)