「アンモナイトの目覚め」ネタバレレビュー・あらすじ:実在の人物をセクシュアリティ(だけ)で描くことの功罪

ケイト・ウィンスレットさんが演じている「化石採集者で古生物学者(ウィキペディア)」のメアリー・アニングさんは実在の人物です。ということをこの映画で知りました。

男女差別ゆえに歴史に埋もれている女性が再発見されることはいいことだと思います。が、こういう取り上げ方はどうなんだろうとは思います。

 

アンモナイトの目覚め

アンモナイトの目覚め / 監督:フランシス・リー

 

 

セクシュアリティ先行のドラマ 

この題材、この俳優、このロケーション、なのに、それをセクシュアリティの描写だけに浪費しているような感じがします。

 

いきなりちょっと言い過ぎちゃっていますが(ペコリ)、メアリー・アニングという人はイギリスではよく知られた人なんでしょうか。そうであれば史実に基づかなくてもいろいろな描き方もいいのでしょうが、公式サイトのプロダクションノートを読みますとそうでもなさそうで、フランシス・リー監督自身も知らなかったか、知っていたとしても名前程度ではないかという感じがします。

 

であるならば、もちろん伝記である必要はないにしても、歴史上の人物なんですからもう少し多面的に描くべきじゃないかと思います。

 

母親との関係もなにかギクシャクしたまま何かありそうなのに映画からはよくわかりません。メアリー(ケイト・ウィンスレット)が一貫して不機嫌なのも腑に落ちません。メアリーにしてみれば化石を採集すること自体は楽しかったんじゃないかと思いますけどね。

 

シャーロットも実在の地質学者なのに…

それに、シアーシャ・ローナンさんが演じているシャーロット・マーチソンも実在の人物で、なおかつ地質学者じゃないですか!

 

 

映画にもでてくる夫のロデリック・マーチソンは地質学においてそれなりの功績があるようですが、それにしたってあの時代ですからシャーロットの功績が夫のものになっている可能性だってあると思います。

 

それが映画では中流階級の「妻」という類型に押し込められてしまっています。

 

仮に映画のポイントをセクシュアリティにおくにしても、地質学者としてのお互いのリスペクトであるとか、信頼関係とかを描いていけば映画にも厚みが出ると思いますけどね…、って余計なことです。

 

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

時代は1840年代と公式サイトにありますので、1799年生まれのメアリーは40歳代ということになります。1847年に亡くなっていますので晩年ということになりますが、完全創作なので映画としては関係ないです。

 

冒頭は、魚竜イクチオサウルスの全身骨格化石が大英博物館に持ち込まれ、メアリー・アニング採集のキャプションが剥ぎ取られ、男性の名前(実在の名前だったのかな?)の寄贈に替えられるというシーンです。

 

女性の、また労働者階級の功績は歴史上抹消されるというシーンです。その化石はメアリー12歳の時に発見したものです。

 

40歳代のメアリー(ケイト・ウィンスレット)はイギリス南西部の町ライム・レジスで母と二人で暮らしています。観光客向けの化石店で生計を立てています。かなり貧しさが強調されています。

 

 

 

ラストシーンでメアリーがロンドンへ行くのですが、船旅でした。島の南を回ってテムズ川からロンドンに入るというのが一般的だったんでしょうか。

 

どんよりとした曇り空、岩場に打ち付ける波、かなり険しい岸壁、メアリーがよじ登って泥にまみれながら化石を採集しています。

 

化石店にロデリック・マーチソンと妻シャーロット(シアーシャ・ローナン)がやってきます。ロデリックは採集に同行させてほしいと頼みます。メアリーは不機嫌そう(理由はわからない)に断りますが、謝礼を出すと言われて引き受けます。

 

翌日、海岸に採集に行きます。この時もとにかく不機嫌そうに(ってクドいか)、ロデリックに対して採集した化石が糞の化石だと言っていました。ロデリックだって地質学者でしょうと思います。

 

映画ではメアリーの貧困が強調され、後にシャーロットを預かることになるシーンでもお金のために引き受けるように描いていたりと、メアリーの不機嫌さが貧困からくるように見えることがとにかく気になります。

母親との関係もわかりにくいです。母親は10人の子どもを生んで8人を亡くしたと語り、その代わりに動物(馬?)のヤキモノを大切にしているという描写ももうひとつよくわかりません。

 

ロデリックがどこかへ旅行に行くのでとシャーロットを預かることになります。公式サイトによれば流産のショックで鬱になっており、ライム・レジスで療養させたいということだったようです。

 

シャーロットは化石採集に同行しますが何をするわけではありません。メアリーがサンドイッチを分け与えるも食べようとしません。

 

その後のシーンがシャーロットが何やら荷車のようなものに乗って海に出るシーンだったと思います。泳ごうとしたんでしょうね。たしかメアリーに泳いできたらとか言われていました。あんな荒波で泳ごうなんて無茶です(笑)。ライム・レジスをストリートビューで見ますと砂浜もありますし海に入っている人もたくさんいました。

 

翌日、シャーロットが高熱で倒れます。医師はつきっきりの看護が必要だと言い、メアリーは知らない女よと突き放した言葉を口にしますが、その後つきっきりの介護をします。

 

ここでもメアリーはとにかく不機嫌です。どういうシナリオになっているかわかりませんが、こういうシーンでメアリーの内面の揺れ動きのようなものを描いておかないと映画が深まりません。

 

シャーロットが回復します。医師が訪れて診察し奇跡的だみたいなことを言います。そして、メアリーをサロンコンサートに招待します。

 

メアリーはシャーロットも一緒じゃなければ行かないとなんだかムキになっていました。この医師はメアリーに何らかの好意を持っているという設定だと思いますがなんだか中途半端です。それに、おそらくメアリーがシャーロットと一緒じゃないとと主張したことには、すでに性的なものも含んだ愛情があるんだと思いますが、これも見えにくいです。

 

サロンコンサートの前の介護中に、メアリーがエリザベス・フィルポットを訪ねて軟膏を買うシーンがあります。この軟膏をシャーロットに塗って回復していくという流れなんですが、このエリザベス・フィルポットも実在の人物で「化石収集家、アマチュア古生物学者(ウィキペディア)」とあります。三姉妹でメアリーの協力者でもあったようで、後に甥のトーマス・フィルポットが三姉妹のためにフィルポット博物館(現ライム・レジス博物館)を建てたそうです。それに実際に自家製軟膏を作っていたともあります。

 

 

映画では、メアリーとエリザベスには過去に愛情関係があったと匂わせています。

 

医師の邸宅でのサロンコンサート、シャーロットとそのエリザベスが親しく話をする姿を見てメアリーはひとりで抜けて帰ってしまいます。

 

嫉妬ということなんでしょうか。すべての行動の源がセクシュアリティになっています。

 

このあたりのシーンの前後がわからなくなっていますが、看病中に椅子で眠ろうとするメアリーにシャーロットが隣で寝てというシーンがあり、そして、このサロンコンサートから帰った夜はセックスシーンになっていたと思います。

 

二人が海で戯れるシーンがあります。このあたりではメアリーも若干顔が緩んだりしますが、相変わらず不機嫌そうで、ひょっとして罪悪感のようなものが表現されているんでしょうか。シャーロットにしても心の動きがよくわからず、メアリーが自分の気持ちを抑え込んでいるのに対してあっけらかんと自分からメアリーを求めにいきます。

 

ロデリックからシャーロットに戻ってくるようにと手紙が来ます。最後の日、ふたりは激しく愛し合います。そしてシャーロットは去っていきます。

 

母親が亡くなります。ただこれはかなり簡単に流されています。そしてシャーロットから手紙が来ます。メアリーは船でロンドンに向かいます。

 

ロンドン、マーチソン邸、メアリーを迎えたメイドに裏口に回ってと言わせていました。いわゆる見るからに労働者階級であるということなんでしょうが、ここでそれを持ち出しますか?と私は思います。さらに、客間で待つ間にメアリーはロデリックが買っていった化石(アンモナイト?)のキャプションにメアリー・アニング採集とあることを見つけさせています。シャーロットが張り替えたということです。

 

シャーロットが飛び込んできていきなりキスです。メイドが見ています。シャーロットはたかがメイドよ(字幕)と言っています。シャーロットは喜び勇んで邸宅内に用意したメアリー用の部屋へ案内します。そしてここで一緒に暮らしましょと言います。

 

メアリーの顔色が変わります。自由な鳥(だったかな?)を金の籠に閉じ込めようと言うの?!と怒り、ホテルを取るわと出ていってしまいます。

 

大英博物館、メアリーは自分が採集したイクチオサウルスの展示を見ています。ふと顔を上げると、ガラス越しにシャーロットの姿があります。無言で見つめ合う二人。

 

展示をはさんで向かい合う二人の横からの全身ツーショットで終わります。

 

このラストシーンはよかったです。終え方もよかったです。

 

ケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナン

ケイト・ウィンスレットさんの演技にはかなり力が入っていることは認めますが、単調です。というよりもシーンの位置づけが単調ということで、ウィンスレットさんの力量を引き出すシーンがないという方が正解なんだろうと思います。

 

このメアリーには適役かと思いますが、もう少しいろいろな顔を持った人物として描けばウィンスレットさんも引き立ったんだと思いますが、このメアリーでは常に切羽詰まったような感じで現実のメアリー・アニングさんとはかけ離れているのではないかと思います。

 

ウィンスレットさんの映画はあまり見ていませんが、「愛を読むひと」はよかったです。

 

シアーシャ・ローナンさんはあまり見せ場がないです。シャーロットがどんな人物が見えてこないです。

 

ブルックリン」で知りましたが、「レディ・バード」とか「追想」「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」もよかったです。

 

やっぱり、セクシュアリティをポイントにするにしても、シャーロットも地質学者の設定にしてふたりの信頼関係も含めた人間関係の映画にするべきだったと思います。

 

フランシス・リー監督、評判のいい「ゴッズ・オウン・カントリー」を見ていませんので見てみようと思います。

 

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