そんなには褒めないよ。映画評

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「アバウト・レイ 16歳の決断」(ネタバレ)トランスジェンダーであるレイの決断ではなく、母親マギーの決断

女の子として育てられたラモーナは4歳の頃から性別に違和感を持ち、自分は男の子であると自認し、名前もレイと名乗っています。そして、16歳にして性別移行を決断しホルモン療法を受けようとします。しかし、未成年ですので親の同意が必要、その顛末を描いた映画です。

最近では LGBT という言葉をよく目にしますが、広辞苑も間違えているように、LGBとトランスジェンダーの T を一緒に語ることは正確ではなく、トランスジェンダーは「性別違和」を持つ人、あるいはそれにより性別移行をしようとする人も含めた言葉で、そもそも LGB の「性的指向」とは全く概念が違います。

監督:ゲイビー・デラル

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公式サイト

 

映画は、レイ(エル・ファニング)、母マギー(ナオミ・ワッツ)、そして祖母ドリー(スーザン・サランドン)の3世代(原題:3 Generations)3人が、医師からレイのホルモン療法についての説明を受けるシーンから始まります。

 

新しい感覚だと思います。この後も映画が主に描くのは母マギーの決断の過程であって、レイの性別違和感ではありません。

 

過去振り返ってみてもトランスジェンダーがテーマの映画自体があまり多くはないのですが、その多くは性別違和に苦悩する主人公の話であり、この映画のように、性別移行そのものはすでに決定されており、それにより戸惑う周りの人間を描こうとしたものはなかったのではないかと思います。

 

極端な言い方をすれば、16歳の娘や息子が結婚したいと言いだした時の親の戸惑いとさほど違いのない描き方がされているのです。

 

もちろん、レイが社会的偏見を受けるシーンも出てきますし、レイが16歳の今、性別移行を急ぐのは大学(かな?)への進学を機に転校し、偏見のない新しい人生を始めたいと望むからです。

 

しかし、繰り返しますが、この映画はそれが主題ではなく、あくまでもそれを突きつけられた親の戸惑いを描こうとしています。

 

で、問題はそれが成功しているかですが、かなり残念です。

 

逃げていますね(笑)。

 

レイがホルモン療法を受けるための同意書には両親のサインが必要となりますが、マギーは未婚であり、レイの父親クレイグとも音信不通です。映画は、マギーのサインをするかしないかの迷いをレイの出生の秘密にすり替えることで物語を作っています。

 

つまり、当時マギーはクレイグと付き合っていたのですが、弟マシューと(も?)関係を持ち、どうやらレイはマシューの子どもらしいのです。そこにどういう愛情関係があったのかは一切語れませんので全く分かりませんが、クレイグはレイが自分の子供ではないことを知りつつ、出生証明書にはサインしたことになり、さらに、はっきりしませんが、おそらくマシューは子どもの誕生自体を知らないのではないかと思われるのです。

 

映画は、マギーの迷いや決断を描くことよりも過去に秘密がありそれを少しずつ明かしていくことで興味をつないでいこうとしているわけです。

 

もちろんそれ自体に説得力があり、マギーの人格が見えてくるような描き方であれば良しとしますが、いくら何でもこの粗の目立つストーリーはまずいでしょう。

 

さらに、ラストはあららあららの大団円という、まあいいんだけどね(笑)というしかない、全員が揃って日本料理屋さんで食事をするということになります。

 

もう少し詳しく書きますと、マギーが、なんとか見つけ出したクレイグを訪ねてみれば、クレイグは結婚して3人の子どもがいます。マギーとクレイグの言い争いは、レイのことだけではなく(何があったかは分からないけれど)過去の関係にまで及び、その中で、マギーはあたかもサインくらいしてやるわよといった勢いでサインをするのです。

 

これ、ダメですよね(笑)。

 

一方、クレイグは、確かレイがクレイグを訪ねた時だったと思いますが、マギーが弟のマシューとも関係があったことを喋ってしまいます。

 

その後若干混乱はしますが、それでも結局、レイは両親のサインをもらい、無事ホルモン療法を受けることになるというわけです。

 

そしてエンディング。レイ、マギー、そうそう忘れていましたが、レズビアンの祖母カップルがいます。この祖母カップルの存在も映画的にいきていないですね。それにクレイグの家族一同、さらにマシューまで揃って全員で食事会となるわけです。

 

アメリカですからやはりこういう内容じゃないと受けないんでしょうかね?

 

もうひとつ…

この映画のレイは FtM(Female to Male)なんですが、考えてみれば、MtF(Male to Female) の映画は、このブログに書いているものでも「わたしはロランス」「リリーのすべて」、主役ではないにしても重要な役回りの「ダラス・バイヤーズクラブ」などありますし、「オール・アバウト・マイ・マザー」もそうですね。日本でも(未見ですが)「彼らが本気で編むときは、」があります。

それに比して FtM の映画はあまり浮かびません。見ていませんので思い浮かばない「ボーイズ・ドント・クライ」という映画はあるのですが、考えに考えてやっと1本思い出しました。「トムボーイ

 

 

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