そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

おすすめ映画直近の4作品

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ナチュラル・ウーマン

監督:セバスティアン・レリオ

(ネタバレ)ロッカーの中にあったもの、それはマリーナがマリーナであるためのもの

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花咲くころ

監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス

(ほぼネタバレ)1992年トビリシ、14歳エカとナティアの二人は確かにその時そこで生きていたという映画

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ソニータ

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ

(ネタバレ)ドキュメンタリーとしての問題提起も含めオススメです

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汚れたダイヤモンド

監督:アルチュール・アラリ

(完全ネタバレ)ラスト10分のピエールの描き方が見事

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最新記事

「羊の木」(ネタバレ)悪人は天から罰を受け、悔い改めれば救われるってか?

公式サイトに「山上たつひこ、いがらしみきおという日本ギャグマンガ界のレジェンドが、原作と作画でまさかのタッグを組んだ超問題作『羊の木』」とありましたので、漫画で共作ってどうやって作業を振り分けるんだろうと思いましたら、いがらしみきおさんが原作で山上たつひこさんが作画ってことなんですね。

今さら私が言わなくてもこの映画を見る方は知っているのでしょうが、その漫画の実写版です。

監督は吉田大八さん。私は3本しか見ていませんが、過去の作品長編6本、そしてこの作品含めてどの映画も小説や漫画の原作があるんですね。

監督:吉田大八

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公式サイト

 

主役の月末一をやっている錦戸亮さんがいい感じです。市役所の職員役なんですが、リアリティがあります。地声なのかどうか分かりませんが、ちょっとかすれた声で微妙に揺れる心情が嫌味なく自然に出ていました。

 

かなり過疎化が進んでいる(という設定の)富山の地方都市魚深市は、仮釈放された受刑者を住民として受け入れるという国家プロジェクトに協力し6人を受け入れます。その担当に任命されたのが月末(つきすえ)です。

 

こういう現実的にはありえない(可能性のない)設定の映画はあまり好きではないのですが、この映画、そのことにあまり説明や言い訳をせずスパッと本題に入っていますのでさほど気にはなりません。

 

で、その6人の受刑者が犯した犯罪は殺人です。これもかなり早くに明かされますので、その段階でこの映画が、たとえば受刑者たちの過去をめぐって住民たちが疑心暗鬼になっていくといった展開ではなく、おそらく殺人事件が起きて誰が犯人なのかとサスペンスタッチで進めていくんだろうと、さらに、ならばこのキャスティングでいけば松田龍平さんがやっている宮腰一郎に違いないと予想して見ていました(嫌な見方(笑))…

 

…ら、ちょっと違っていました。

 

確かに殺人は起きその犯人は宮腰なんですが、犯行場面そのものが描かれますので犯人が誰かというサスペンスがこの映画の肝ではなく、宮腰のミステリアスさと隠し事などなさそうな月末のキャラクターのぶつかり合いと絡みのようです。

そして、そこに月末が片思いしている東京帰りの同級生石田文(木村文乃)が三角関係的に絡みラストのクライマックスへと向かいます。

そしてもうひとつ、港町である魚深の「のろろさま」という異形の守り神の逸話がキーとなっています。その昔、海から現れた巨大な怪物「のろろ」の怒りを沈めるため、2人の生け贄が崖から飛び込んだところ、1人は助かりもう1人は沈んだまま死体も上がらなかった(ちょと違うかもしれない)という言い伝えがあるというものです。

 

あの崖、ヤセの断崖ですよね、多分。

 

他の5人の受刑者は、ある1人をのぞいて各々が絡むことはありません。それぞれ受け入れ先の住人と様々な関係を持つことがエピソード的に語られるだけです。

 

皆、分かりやすい人物として描かれます。

福元宏喜(水澤紳吾)は刑務所で理容師の技術を身に着け床屋さんに就職し過去を必死に隠そうとしますが、実はその店主も受刑者だったという話、クリーニング店に就職した元ヤクザの大野克美(田中泯)は顔の傷やその物腰で誰も寄り付きませんが、女店主だけは見かけで人を判断せず一対一の人間関係を持つという話、介護センターに就職した太田理江子(優香)は、(かなり唐突だけど)身体に障害のある月末の父を好きになり親身に介護するという話、清掃員として働く栗本清美(市川実日子)の対象は人間ではなく死んだ魚や動物で、それらを拾ってきては庭先に埋め、やがてその墓から芽が出て来るという話、また清掃員ですので浜辺でしたか、木に羊がなっている(ぶら下がっている)「羊の木」のプレートを拾ってくることでタイトルと関連付けています。

 

この「羊の木」とは「バロメッツ」のことらしく、そうだと分かっても、なぜこの物語が「羊の木」なのかはよく分からず、かなりこじつけ感は強いです。さらに言えば、プレートにある5匹(頭?)の羊を5人に重ね合わせて深読みすることが出来るにしても、映画は直感的にストンと落ちなければ意味はありません。

 

そしてもうひとりの杉山勝志(北村一輝)が唯一宮腰に絡み、そして殺される人物です。この杉山と宮腰は、当て書きしているのではないかと思うくらいキャスティングがはまっています。

 

杉山は漁師として働いています(なぜいきなり船一艘持てるの?)が、いわゆるワルタイプで、田舎町で退屈しうずうずして、何となく匂いで嗅ぎつけるのでしょう、宮腰に何かやろうぜとちょっかいを出したりします。ところが、宮腰は殺人という犯罪に対して相当ハードルの低い人物で、過去自分が犯した殺人の遺族をあっけなく殺してしまい、さらにそれを目撃して脅しにかかってきた杉山も躊躇なく轢き殺してしまいます。

 

で、本筋の月末と宮腰の関係、これは錦戸亮松田龍平の真逆ともいえるキャラクターが生きて結構面白く出来ています。言ってみれば、一般人と危ない人って感じですかね(笑)。この面白さは言葉で説明しても意味がありませんので映画を見て感じてください。

 

そしてラストは「のろろさま」の逸話どおり、宮腰が月末を道連れにして崖から飛び降ります。

 

どちらが生き延びるかはわかりますよね。

 

今思い返してみれば、この映画、4人の受刑者はいなくても、月末と宮腰、そして石田文の3人で十分成立するように思います。原作があるわけですからそうもいかないでしょうが、この3人(+杉山的人物)で物語を作ったほうがシンプルで、なおかつもっと深い映画になるような気がします。

 

もう少し突っ込んだことを言いますと、何だか死んだ杉山と宮腰は悪人がゆえに天から罰を受け、更生した残りの4人は救われるみたいな話でちょっと嫌な感じがします。

 

羊の木 コミック 全5巻完結セット (イブニングKC)

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桐島、部活やめるってよ

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