そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

当サイトおすすめ映画直近の4作品

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汚れたダイヤモンド

監督:アルチュール・アラリ

(完全ネタバレ)ラスト10分のピエールの描き方が見事

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あさがくるまえに

監督:カテル・キレヴェレ

(ネタバレしても問題ない)のでよく知って見るべし。シンプルなのに情感豊か。

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ブランカとギター弾き

監督:長谷井宏紀

(ネタバレ)映画はシンプルなのに物語は深い

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残像

監督:アンジェイ・ワイダ

アンジェイ・ワイダ監督の遺作、心に残る映画です!

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最新記事

映画「人生はシネマティック!」(ネタバレ)とてもバランスの良い楽しめる映画、女性観も今に通じる

映画を見る楽しみって、ジャンルもいろいろありますし、人それぞれですが、こういう映画は多くの人から好まれるんじゃないでしょうか。

まず、構成がしっかりしていますし、人物配置もバランスがよく、ほどほどの感動、涙、笑いがあり、とにかく楽しめます。

原作ありとなっていますね。リサ・エヴァンス著『Their Finest Hour and a Half』、映画の原題も「Their Finest」、チャーチルの演説からとっているようです。

 

監督:ロネ・シェルフィグ

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イギリス映画『人生はシネマティック!』は、豪華な英国俳優陣がユニークな映画人たちに扮し、映画製作を題材にした夢の世界に観客を誘ってくれる。全米やヨーロッパ各国の映画祭で絶賛され、マスコミや批評家からも惜しみない拍手喝采を浴びた、まさに“映画好きのためのベストワン・ムービー”。(公式サイト

 

ロネ・シェルフィグ監督、おそらくこういうタイプの映画作りがあっているんでしょう。「幸せになるためのイタリア語講座」はよかったのですが、「17歳の肖像」はもうひとつでした。

 

こういうタイプというのは、一言でいえば構成力で見せていくという意味で、あまり深く突っ込まず(非難ではない)、なるほどふむふむといった受け取られ方をされるような、まあ大人の映画ということでしょうか。

 

それに、この映画では年代が1940年代ということもあり、クラシカルな空気がよくはまっています。

 

物語は、第二次世界大戦時のイギリス、1940年ですから、フランスがドイツに占領され、ロンドンも空襲をうけるという、連合軍が劣勢にある時に、イギリス国内で戦意高揚のための映画を作ることが軸になっています。

 

その題材として選ばれるのがダンケルクの戦いでしたので、ついこの間、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」を見たばかりの者としてはとても理解しやすかったです。

 

コピーライターの秘書カトリン(ジェマ・アータートン)は、情報省映画局の特別顧問バックリー(サム・クラフリン)にその才能を買われ映画局のシナリオライターとして雇われます。

 

と書きましたが、「コピーライターの秘書」や「情報省映画局の特別顧問」なんて言葉は公式サイトから拾ったもので、私の場合、カトリンが誰の秘書だったのか、バックリーがどういう立場の人物なのか、冒頭はややごちゃごちゃ感じられ、うまくつかめずに見ており、ただ、カトリンが映画製作のそれなりの立場にいるバックリーにリクルートされ、その下で働き始めることがわかれば、さほど重要なことではありません。

 

こういうところが楽なのもいい映画であるための要素のひとつだと思います(笑)。

 

で、映画部は、政府の上層部からもっといい映画、つまり国民の戦意を高揚させる映画を作れと求められ、その題材としてダンケルクの戦いにおいて、双子の姉妹が父親の船でダンケルクに駆け付けたという(映画の中のだと思う)実話をベースに製作に取り掛かります。

 

その過程にいろいろ問題が発生し、それをカトリンやバックリーが解決しつつ映画を作っていくということになります。

 

たとえば、双子の姉妹は実際にはダンケルクに到達していないとか、エンジンの故障がイギリスのプライドを傷つけるなどのクレームをカトリンのアイデアで解決したり、名優として名高いアンブローズ(ビル・ナイ)が役が不足であると不満を漏らすのをカトリンがうまくのせたりと、起きる障害も過剰ではなくほどほどであり、その解決ももったいぶったりせず、あっさりとアイデアを出して解決していくその軽さが楽に見られて印象がいいです。

 

このダンケルクの逸話に歴史上の史実をうまく取り入れているのが、上層部からの命令、アメリカ人パイロット、カール・ランドベック(ジェイク・レイシー)をヒーローとして出演させろというものです。

 

当時アメリカは、ヨーロッパの戦争に関わりたくないという中立の立場をとっていたのですが、チャーチルはこの戦争に勝つためにはアメリカに参戦させたいと考えたいたわけで、そのあたりの力関係をうまく映画に取り入れています。つまり、この映画でアメリカ人のヒーローを活躍させて、映画をアメリカに売り込み、アメリカの参戦世論を高めようという作戦です。

 

しかし、映画製作の現場としては、ど素人のランドベックを出演させるなんてとんでもないことなんですが、カトリンがアンブローズをうまくおだてて指導役にして危機を乗り越えます。

 

カトリンとバックリーの恋愛がもうひとつの軸になっています。

 

カトリンは、画家のエリス(ジャック・ヒューストン)という恋人と暮らしているのですが、エリスは収入が少なく引け目を感じています。よくあるパターンではありますが、そのことがカトリンとの間で徐々に溝を作っていくわけで、カトリンはまわりには結婚していると言っていますが、実際は結婚しておらず指輪も自分で買ったものです。

 

この設定はバックリーとの恋愛物語のドラマ作りのためのもので、つまり、バックリーはかなり早い段階からカトリンに好意を持ち始めますが、カトリンが結婚しているということでもやもやとした気持ちを抱えています。

 

カトリンも徐々にバックリーに惹かれていくのですが、この自分自身を思い込ませている指輪という小道具をうまく使って踏みとどまらせ、バックリーと仲違いをさせたり、エリスに浮気をさせることで指輪をはずす決断をさせたりします。

 

このあたりの男女間の描き方はとてもうまく、そして極めつけは、お互いの気持ちを確かめあい二人がキスをしてうまくいくかと思いきや、その次のシーンではバックリーを死なせてしまうのです。

 

このあたりのバランス感覚がとても優れています。ここで二人がうまくいけばありきたりの映画になってしまいます。

 

そしてラスト、映画が完成し、カトリンも映画館に足を運びます。

 

満員です。カトリンの両隣の女性や兵士がもう何回も見たと涙を流しています。

 

と、感動のうちに終わるわけではありません。

 

カトリンは、次の仕事、空襲監視員を題材にしたシナリオを書き始めるのです。

 

カトリンの恋人だったエリスは、スペイン戦争で足を負傷し空襲監視員をやりながら絵を描いていたのです。ただ、これオチというわけではありません。おそらく映画としてのバランスを考えた上のことでしょう。

 

そしてもうひとつ、カトリンが女性として見られる社会的状況を見つめる視点、フェミニズムといってしまえばそれまでなんですが、もう少し(現在と)同時代的なヒューマニティ感覚の女性観が随所に散りばめられていました。

 

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