もしも建物が話せたら/ヴィム・ヴェンダース監督他

面白いです。もっともっと世界中の建築物でやってほしい企画です。WOWOWが参加している「国際共同プロジェクト」製作とのことです。

6人の監督がそれぞれ自ら選んだ(ようです)建築をそれぞれの視点で映像化しています。

「べルリン・フィルハーモニー」監督:ヴィム・ヴェンダース
「ロシア国立図書館」監督:ミハエル・グラウガー
「ハルデン刑務所」監督:マイケル・マドセン
「ソーク研究所」監督:ロバート・レッドフォード
「オスロ・オぺラハウス」監督:マルグレート・オリン
「ポンピドゥー・センター」監督:カリム・アイノズ

建物は文化を反映しており、社会を映し出す鏡でもある。一昔前、欧米ではその街を代表する建物は教会であり、教会を見ることによってその街の文化も人々の暮らしも垣間見えた。現代におけるその街を象徴する建物とは?世界の名監督6人がそれぞれの街で人々と思い出を共有する、思い出の詰まった文化的建物のストーリーを描き出す。(公式サイト

退屈するかと思ったのですが、面白かったです。

建築物についてほとんど知りませんので、建築物そのものはもちろんのこと、それぞれの監督の撮り方への興味で飽きることはありませんでした。

特にヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・フィルハーモニー」とマイケル・マドセン監督の「ハルデン刑務所」は集中しました。

前半3本はゆったりしたカメラワークで、ナレーション、というより建物の語りなんですが、言葉が少なく、建物そのものをじっくり観察できました。

「ハルデン刑務所」、びっくりですね。あそこなら住んでもいい感じがします。「世界一人道的」な刑務所と言われているそうです。個室もそれなりに快適そうですし、運動時間でしょうか、囚人が看守とバスケットに興じたりしていました。

それでも、やはり拘束されているという不自由さは人間をおかしくするんでしょうか、独房もあり、収監された囚人が自分の排泄物で壁にFワードを書きなぐったシーンがありました。

この「ハルデン刑務所」のパートは、作りもうまいですし、映像もいい感じですし、90分位の長編にしても十分持ちそうな感じがします。マイケル・マドセン監督のプロフィールに「都市と景観を空撮した『To Damascus』(2005年)など、コンセプチュアル・アート&ドキュメンタリ一作品を発表し続けている。」とあり、なるほどという感じがします。

後半のロバート・レッドフォード監督の「ソーク研究所」は、記録映画的で言葉が多く、かえって画に集中できず、ちょっと疲れました。

「オスロ・オぺラハウス」、行ってみたいですね。北欧は何に限らず全般的に機能的でミニマムなデザインの印象ですが、建築もそのようです。そういえば、最近の映画では「1001グラム ハカリしれない愛のこと/ベント・ハーメル監督」がそうでした。

建物には興味が湧いたのですが、映画は構成がやや煩雑だったように思います。もう少しパフォーマンスを活かして、人間の動きと建物みたいなものをテーマにして撮ればよかったのではと思います。

ということで、この企画、もっといろいろな建築物でやって欲しいですね。