NO/パブロ・ラライン監督

映画としてはもの足りませんが、あえて言えば古いニュース映像を見ているような感覚に近いということになるのでしょうか

NO (ノー) [DVD]

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決して批判的に言おうとしているのではありませんが、他に言いようを思いつきませんので、あえて言えば、メリハリなく盛り上がりに欠けた映画でした。


映画『NO ノー』予告編

淡々という表現もどこか遠い感じがしますし、わざと画質を落としてスタンダードサイズ(かな?)で撮ったりしていますので、そこに何かヒントがあるのでしょう。

1988年、ピノチェト独裁政権末期の南米チリ。
フリーの広告マンとして忙しい日々を送っているレネ・サアベドラ(ガエル・ガルシア・ベルナル)のもとに、かねてから家族ぐるみの付き合いがある友人ウルティア(ルイス・ニェッコ)が訪ねてくる。ウルティアは反独裁政権の左派メンバーのひとりで、近く実施される政権の信任継続を問う国民投票の反対派「NO」陣営の中心人物であった。
今回、投票までの27日間、政権支持派「YES」と反対派「NO」それぞれに1日15分のPR ができるテレビ放送枠が許され、広告やCM 制作の責任者として新進気鋭のクリエーターであるレネに白羽の矢が立ったのだ。
はじめ、彼の作る資本主義の象徴のようなCMは独裁政権下で弾圧をうけ迫害されてきた党員たちから非難されるが、明るい未来、喜び、そして希望を謳いあげる斬新でウイットに富んだ言葉や映像は国民の心をつかんでいく。
「YES」派と「NO」派の熾烈なCM合戦が繰り広げられ、いよいよ投票日がやってくる…(公式サイト

国民投票は単なるセレモニーで誰も勝てるとも思っていないところから、新感覚の広告手法で世論を動かし、最後には勝利をおさめるなんて流れはドラマチックそのものですし、いかようにも盛り上げられそうなんですが、その意図がないのか、徐々に「NO」派が優勢になっていくにも関わらず高揚感もわき上がってきません。

レネたちの打ち出す手に呼応して、世論が変化していく様子を上げ下げして描けば、盛り上がりとともに、広告というものの本質も描けるのではないかと思うのですが、そんな手法は安易と考えたのか、描かれるのは「NO」派にしても「YES」派にしても、内輪話が多く、国民投票という割には何だか拡がりがなく、狭い業界の話のような感じです。

ひとつ、ああこれはそうだなと思ったのは、ラストシーン、「NO」派が勝利をおさめ、群衆が街に溢れる中、レネが息子を抱きかかえながら、興奮や喜びをおさえながら(でしょう)歩くところを正面からとらえていますが、人が何かやり遂げたあとのレネのような冷静さは分かるような気がします。

結局のところ、映画としてはもの足りませんが、決してつまらないわけでもなく、あえて言えば、古いニュース映像を見ているような感覚に近い映画ということになるのでしょうか。