「焼肉ドラゴン」(DVD)在日コリアン一家の人情劇、やはり舞台向き

しばらくDVD月間ということになりそうです。

「焼肉ドラゴン」

鄭義信さん脚本、演出の2008年の舞台劇の映画化で、監督も鄭さんです。

 

焼肉ドラゴン

焼肉ドラゴン / 監督:鄭義信

 

ウィキペディアによれば、舞台劇の方は新国立劇場と韓国の芸術の殿堂(예술의 전당)の共同制作で韓国の梁正雄さんとの共同演出だったとのことです。

 

1970年頃の大阪を舞台にした在日コリアン一家をめぐる人情劇です。登場人物それぞれには人生の岐路のような出来事が起きるのですが、映画全体としては軸となるような出来事はなく、伊丹空港脇の国有地で焼肉屋を営んでいた金一家が立ち退かざるを得なくなるまでの2、3年が描かれます。

 

日本語と韓国語が入り乱れますので字幕が入ります。

お父さん(キム・サンホ)とお母さん(イ・ジョンウン)は韓国の俳優さんで、どちらもぴったりのキャスティングです。特にキム・サンホさん、体型そのままに安定感があって、一家の大黒柱(重し?)としての存在感がありました。イ・ジョンウンさんの方は激しい感情の出し方がうまいです。

 三女の美花(桜庭ななみ)が結婚したいと男とともにやってきた時、お母さんは絶対ダメと喚き散らして家まで出ていってしまっても、お父さんは、お前の人生だからと許し、男にも幸せにしてやってくれと優しく答えていました。

なぜお母さんがあんなに反対するのかよくわかりませんでした(笑)。男が妻持ちだったのを別れて娘と結婚するということからでしょうか。でもお母さんもその美花を連れての再婚なんですけどね。

 

割とそうした理由なく話をごちゃごちゃさせるところの多い映画です。これはおそらく舞台劇のせいでしょう。どちらかといいますと群像劇ですので、舞台ではこうした人と人のぶつかり合いのような動きがダイナミズムを生むということがあります。

 

長女の静花(真木よう子)と梨花(井上真央)はお父さんの連れ子です。

映画のスタートも梨花と哲男(大泉洋)のぶつかり合いから始まります。婚姻届を出しに行ったのに哲男が役所で喧嘩をして婚姻届を破ってしまったということです。しばらくは喧嘩っ早いだけかと思っていましたら、実は哲男は静花のことを(今も)思っているからでした。

 

静花は足に障害があり、その原因は、幼い頃(小学生くらい?)に哲男に誘われて空港の敷地内に侵入し警備員に追われて怪我をしたからです。哲男にその罪悪感がどう影響しているかははっきりしませんが、以前静花にプロポーズしたことがあるのです。

 

お父さんとお母さんにはふたりの間の子供、時生(大江晋平)がいます。時生は在日コリアンということから学校でいじめを受け、学校へも行かなくなり、留年し、映画の中ほどで自殺してしまいます。

 

この映画は、こうしたそれぞれ個人の人生にとってはとても大変なことに深く入っていくことはしません。あくまでもこの一家、そしてその周辺の人々全体を俯瞰して描く視点です。

 

時生への差別からくるいじめもそうですし、立ち退きの件にしても、お父さんがこの土地は誰か(佐藤さん?)から買ったものだという先から哲男にここは国有地で米軍の管轄地だったと言わせています。

ベースとしては在日コリアンの置かれた状況や差別があるのですがそれをことさら前面に出さないようにしています。

 

ということで、人と人とのぶつかり合いでダイナミックさを出しながら、人々の優しさやつながりの強さを見せていくという映画です。

 

そして時は1969年、70年、71年と過ぎ、お父さんとお母さんが立ち退く日、静花と哲男はふたりで北朝鮮へ戻る(帰国事業)ことにし、梨花も韓国人の男と結婚して韓国に戻ることにし、美花は大きなお腹を抱えて、それぞれがそれぞれの道を歩んで行くことになります。

 

そしてお母さんが子どもたちに向かって、

「ばらばらになったかて、うちら家族はつながっとる。それ、忘れたらあかんぜ」

と叫んで終わります。

 

という人情家族ものです。

 

これは多分舞台で見たほうが面白いですね。俳優(たち)の熱で見せるドラマだと思います。やはり映画は軸となるドラマ(ドラマチックという意味ではない)で引っ張ってくれないとなかなか2時間は持ちません。

 

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