「サマーフィルムにのって」ネタバレレビュー・あらすじ:伊藤万理華と金子大地の大立ち回り、サブカルがメインになる日

始まってしばらくは、なんだ…学生の卒業制作か…と、公開日早々に見に来たことを後悔していたんですが、金子大地さんが登場し中盤に入りますと、ん? 何か違うぞと思い始め、終盤に向かってどうまとめるんだろうと期待も膨らみ、終わってみれば、んー、うまいねえと感心した映画です。

 

サマーフィルムにのって

サマーフィルムにのって / 監督:松本壮史

 

 

ネタをばらしてどうするんだと… 

基本となっている物語は、高校生が仲間を集めて映画をつくるというさほど新鮮なものではなく、その中での友情や恋愛もほぼ予想できる範囲内のものなんですが、そこに、 SFとは言えないまでもとにかく未来人がやってくるという結構シュールな要素が持ち込まれ、さらにそのネタをすぐにばらしてしまうという予想外の展開となり、ラストにいたれば、なにー、そこで止めてどうするんだ?! という驚きのクライマックスとなっていました!

 

シナリオがいいですし、ラストシーンの殺陣の撮り方もうまいです。

 

公式サイトによれば、「監督はドラマや CM、MV など幅広く手掛ける松本壮史が務め、数々の映像作品を共に作り上げてきた盟友、劇団「ロロ」主宰・三浦直之が脚本を担当」とのことです。

 

今後、どちらかの名前を目にすれば見てみようと思います。

 

誰も傷つけたくない

誰も傷つけないところは今の時代のものかなと思います。

 

学園祭で上映する映画は部員の投票でラブコメに決まっているのですが、時代劇オタクのハダシは仲間を集めて「打倒ラブコメ!」で時代劇を撮り始めます。

 

これが昭和の映画なら間違いなく、また平成でも五分五分程度の可能性で、マジでラブコメをぶっ潰してしまう展開になっていたと思います。最後にはみんな仲良くなるにしてもです。

 

しかし、この映画はそんな対立関係で物語をつくりません。中盤までは多少そうした対立も見せてはいますが、終盤になればきわめて自然に互いに協力関係を築き、ラブコメ組から二本立てでいこうと提案され、映画の編集作業は背中合わせではありますが同じ部室でふた組が同時にやっています。

 

それを映画はどう撮るかと言いますと、部室を俯瞰で包み込むように撮っています。

 

ああ、令和だなあと思います。

 

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

某高校の映画サークルでは学園祭に上映する映画は部員の投票で決めており、花鈴(甲田まひる)の提案したラブコメが採用されます。

 

時代劇オタクのハダシ(伊藤万理華)は時代劇「武士の青春」を提案しますが、投票はわずか1票、自分だけです。

 

意気消沈、ふてくされ気味のハダシですが、そんなことを引きずったりはしません。仲間たちとの隠れ家があります。河原に乗り捨てられたワンボックスカーには時代劇の貴重なポスターが貼られ、時代劇のDVDが見られるようにテレビまであります。電源はどうするんだ? はおいておいて、ハダシは「座頭市」の一作目がお気に入りです。

 

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仲間は、SFおたくのビート板(河合優実)と剣道部のブルーハワイ(祷キララ)です。特にこの3人がつるむ理由はないのですが、時代劇アンドSFの仕込みです(笑)。

 

ふたりはハダシに時代劇撮ればいいじゃんと言いますが、ハダシは主役の猪太郎役がいないんだよねと言っています。

 

ハダシ・ミーツ・リンタロウ

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そして、ある日、ハダシは町の映画館で凛太郎(金子大地)に出会い、いきなり猪太郎!と呼びかけます。猪太郎役にはあなたしかいないと迫るハダシに男はムリ、ムリと言って逃げ腰です。

 

しかし結局、暴力的に拘束され(笑)、ハダシの熱意に押されて引き受けることになります。

 

仲間はさらに増え、ボールがミットに収まる音で野球選手を当てる録音担当の駒田と増山、デコチャリに乗るヤンキー風の小栗、そして猪太郎の敵役を演じるダディボーイが加わります。ハダシと7人の仲間たちです。

 

登場人物のキャラもそうですが、名前でも結構遊んでいますね。と言いますか、ある意味、いわゆる青春もののパターンを踏襲しています。

 

撮影開始

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そして撮影が始まります。

 

映画的には、この流れであれば、いろんな問題が起きてもそれを乗り越えていくという、いわゆる青春もののドラマパターンがありがちなんですが、この映画はちょっと違っていました。

 

目先のことで起きる現実的な障害はほとんどありませんし、あっても簡単に解決しています。撮影資金がなければ皆でアルバイトをしてあっという間に稼いでしまいますし、凛太郎もダディボーイも殺陣などできないとなればちゃんと剣道部のブルーハワイがいます(笑)。それに、ありがちなラブコメ組からの妨害もありませんし、むしろラブコメ組が時代劇要素を入れたいとハダシに出演依頼をしてきたり、最後にはラブコメ組が時代劇組の撮影を助けてくれます。

 

では何をドラマ要素としているのか?

 

映画がなくなる未来

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未来への不安です。

 

凛太郎は未来の映画オタクです。凛太郎が生きる未来ではすでに映画というものはなくなっています。映像はわずか5秒の表現で事足りています。何らかの記憶媒体で映画に魅せられた凛太郎は、未来では巨匠と言われているハダシの作品を収集しており、しかし一作目だけが見つからず、それを探そうとタイムマシーンで現在にやってきたのです。

 

と、凛太郎の友達の未来人がホログラムで教えてくれます。小さいボールがタイムマシンです。ちっちゃ! なんて茶々を入れつつ進みます。未来に残る映画に未来人が出ていいのかなんて「親殺しのパラドックス」も SFおたくのビーチ板が簡単に解決してくれます(笑)。

 

ということで、じゃあ未来のためにも頑張ってこの映画を完成しなくてはとなるのですが、肝心のハダシが未来になくなる映画なんてつくっても仕方ない(ちょっと違うかもしれない)と意欲をなくしてしまいます。

 

その意欲喪失は「武士の青春」のラストシーンをどうするかという創作の苦悩という、多分シナリオの三浦直之さんも監督の松本壮史さんも常日頃から感じているだろう形で表現されています。

 

ラストはラブコメ展開か? 

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さらに、そこにハダシと凛太郎のラブストーリー展開が持ち込まれます。

 

あまりはっきりした形ではなかったと思いますが、ハダシが凛太郎への好意をはっきり自分自身で認識し、それが悩んでいたラストシーンを書き上げる結果に結びつくという、パターンとしてはわりとベタな流れでした。

 

また、実はブルーハワイがラブコメ好きであったり、ビーチ板が密かに凛太郎に恋していたりと、結局、この「サマーフィルムにのって」自体もラブコメだったかと思わせつつクライマックスへ突入します。

 

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学園祭の二本立て上映会です。ラブコメが上映されます。「スキ、スキ」を連発するだけなのに大受けです。続いて「武士の青春」の上映が始まります。

 

ハダシと凛太郎が上映間際に駆け込んできていましたが、あれ、何をしていたんでしたっけ? 忘れてしまいました。なにか重要なことがあったのか…、なかったですよね、単純なドラマパターンだったんでしょうか、わかりません。


それに、上映始まってしばらくは皆つまらなそうだったのがチャンバラシーンになるとちょっと受けるというかなり細かい作り込みをしていました。

 

で、いよいよ問題のラストシーン!

 

二重構造では語れない

突然、ハダシが映写室に駆け込み上映を止めてしまいます。スクリーンの前に立ち、「違うんだ! こんなラストシーンじゃダメなんだ!」と叫び、掃除道具を持ち出し、皆に一緒にラストシーンを作ろう!(みたいな感じだったがメッセージははっきりしない)と凛太郎にモップを渡し、自分はほうきを持って決闘を挑みます。

 

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ふたりの大立ち回りになります。

 

このあたりの流れは実際に見ないと言葉じゃ伝わらないですね。実際、ハダシが何を言いたかったのかもよくわかりません(笑)。

 

それが映画だということでしょう。実際、よくわからないけれども感動します。 

 

ん? このシーン、壁ドンじゃないですかね…(笑)。

 

サブカルがメインになるとき

官民こぞってサブカル立国を目指しているかのようなこの国にあって、映画がメインカルチャーであるとすれば、メインカルチャーが消えていくことへの危機感が感じられる映画ではあります。

 

ラストシーンのハダシと凛太郎のチャンバラシーンは、結局、人と人が生身でぶつかり合って答えを出そうともがくしかないんだと言っているようでもあり、あるいは、未だ生み出し得てはいないし、答えがあるかどうかもわからないけれども、そこからしか未来では必要とされていない新しい「物語」を生み出すことはできないんだと言っているようでもあります。

 

映画も古くはカウンターカルチャーとして大きな力を持っていた時代もあるわけで、さすがに今では、特に日本では、そうした映画も少なくなり、映画館でもたまに、え? この込み具合はなに? なんて思いますと、新作のアニメを上映していたりするというのが現実です。

 

この映画も媒体自体は100分程度の映画というスタイルではありますが、内容的にはサブカルそのものであり、何もかもがうまくいく世界にまどろんでいるかのようにも見えます。

 

従来のサブカルがメインになった今、少なくとも、映像系で言えば TikTokのような縦長カルチャーには押しやられないようには頑張って欲しいものです(笑)。

 

伊藤万理華さんと金子大地さん

金子大地さんは「猿楽町で会いましょう」を見たことがこの映画を見ることにしたひとつの理由でもあります。

 

映画のつくりのせいか、俳優としてはひとり別格のような印象でした。

 

伊藤万理華さん、乃木坂の出身なんですね。といっても、乃木坂46自体をそのグループ名と時々目にするテレビの断片的な画でしか知りませんので、そう言えば、見る前に「乃木坂46の誰々が主演云々」というのを確かに見たなあと思い出した程度です。

 

乃木坂=アイドルというイメージですのですっかり忘れていました。あれ? これ、いいんですよね、アイドルっぽくなかったからという意味でほめことばなんですが…。

 

伊藤万理華写真集 エトランゼ

伊藤万理華写真集 エトランゼ

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