「スターダスト」ネタバレレビュー・あらすじ:ジギー・スターダスト誕生に迫れているか…?

音楽映画は鉄板というのはほぼ間違いなく、迷いなく見に行けます。

 

と思い、見に行ったのですが、音楽映画ではありませんでした。もう3年前になりますが、フレディ・マーキュリーの伝記もの「ボヘミアン・ラプソディ」のような映画を期待していきますとややがっかりするかもしれません。

ただ、様々な世界(ジャンル)でアイコンと言われたデヴィッド・ボウイの原点(かもしれないもの)、つまり、何者かになりたいという欲求だけは感じられる映画です。

 

デヴィッド・ボウイが「ジギー・スターダスト」になる前のある一時期を想像的に創造した映画とみればいいように思います。

 

スターダスト

スターダスト / 監督:ガブリエル・レンジ

 

 

音楽映画にならなかった訳

デヴィッド・ボウイの遺族(なのか管理人なのかは?)から音楽使用の許可が下りないままに制作された映画だそうです。

 

ですので映画の中で歌われている、と言ってもきっちり歌うシーンはラストシーンくらいでほとんどありませんが、歌われているのはヤードバーズの「I Wish You Would」とか、ジャック・ブレルの「My Death」という曲だそうです。

 

制作の経緯についてはガブリエル・レンジ監督のインタビューを読みますとよくわかります。

 

レンジ監督は、当初、1977年頃のデヴィッド・ボウイとイギー・ポップにフォーカスした伝記的な映画を考えていたけれども権利関係で音楽が使えないとなり、そんな頃にエージェントから別の企画があるということでクリストファー・ベルが書いていた脚本がもたらされ、それに乗ったということのようです。

 

実際に、デヴィッド・ボウイは1971年にアメリカツアーを目的にアメリカに渡っており、映画の中ではプロモーターの不手際になっていましたが、就労ビザが取れずに雑誌のインタビューに応じたりラジオ局まわりをひとつきほどやっています。

 

音楽が使えないのであればということでこの1971年にしぼった映画にしたということでしょう。

 

兄テリーの影

で、映画が何を描いているかと言いますと、10歳年上の異母兄弟のテリーが統合失調症で精神科病院に入っていることから、自分にもその遺伝的素質があるのではないかという恐れです。映画の中では叔母さんもそうであったというような台詞がありましたが、実際に広範囲の家族という意味では統合失調症スペクトラム障害を持つ人が何人かいたようです。

 

とにかく、アメリカでのプロモーションツアーはうまくいきません。そのたびにテリーとの対面シーンがフラッシュバックで挿入され、デヴィッドが不安に苛まれます。

 

そうしたシーンの繰り返しですので、まあ映画としてもメリハリがなくあまりいい出来とは言えません。結局、大枠以外はすべて創作になるわけですからもう少し工夫して、もっと内省的な映画にするとか、ハチャメチャなところも入れるとか、ちょっとだけでもかっこいいシーンを入れるとか、なにか方法があったのではないかとは思います。

 

デビュー初期のデヴィッド・ボウイ

デヴィッド・ボウイは、この時期すでに3枚のアルバムをリリースしています。そのジャケットデザインを見ますとデヴィッド・ボウイがどう変わっていったか、どうやって売っていこうとしたかがなんとなく見えてきます。

 

1967年「David Bowie」デビューアルバム

 

画像の引用は著作権上問題がありそうですのでウィキペディアへのリンクですが、これがデビューアルバムのジャケットです。

20歳の頃、確かにデヴィッド・ボウイではあります。イギリスの真面目な(?)青年のイメージです。

 

1969年「David Bowie」マーキュリーからリリース

 

アメリカのレーベル、マーキュリーと契約してリリースしたアルバムで、上の画像はイギリス版のもの、リンク先を開きますとアメリカ版のジャケットも見られます。ボウイの顔が全面になっています。いずれにしてもセルフタイトルです。

 

このアルバム制作の前にケネス・ピット(映画にでてきたマネージャーかも?)というマネージャーと契約し、その勧めにより、「Love You till Tuesday」というプロモーションフィルムを作っています。その中に「Space Oddity」というバート(かな?)があり、YouTube に上がっています。

 

 

50年前のものですが、曲からも映像からも古臭さは感じられません。

 

で、それが1972年にRCAレコードから再リリースされ、そのときに「David Bowie」と並列して収録曲である「Space Oddity」がアルバムタイトルとして使われています。ウィキペディアの上のリンク先でその画像が見られます。

 

1970年「The Man Who Sold the World」(世界を売った男)

 

これがこの映画の直前にリリースされたアルバムで、映画の中で暗いだのと散々に言われていました。ジャケットもアメリカンコミック風と言えばいいのか、とにかくレコード会社がこれで売ろうとしたということでしょう。

上のリンク先にはイギリス版のジャケット画像もあり、映画の中でデヴィッド・ボウイがローリングストーンズ誌のインタビューを受ける際にウェストのしまったコート風の衣装を着てソファーに横たわったりといろいろポーズを考えるシーンがありましたが、そのポーズの写真が使われています。

 

映画では、この価値観のズレが大きく描かれています。

 

その衣装は、アメリカ入国の際にイミグレーションであれこれ問いただされ、スーツケースを開けられ、いつも女物を着ているのかと偏見のまなざしを向けられるシーンの衣装です。

 

ネタバレあらすじ

といったデビュー当時の経緯の中で、1971年2月にプロモーションのためにアメリカに渡ります。そのひとつき程度の物語です。映画では、ボウイ自身は大々的なコンサートツアーをイメージしているように描かれていますが、実際は最初からラジオ局まわりだったんだと思います。コンサートツアーなら単身ということはあり得ません。

 

スペース・オディティからか…

デヴィッド・ボウイ(ジョニー・フリン)が宇宙遊泳しているような映像から始まります。夢を見ていたという設定です。この中にも兄テリーの映像が織り交ぜてあったような気がしますが、なにせファーストシーンですので記憶は曖昧です。

 

デヴィッド・ボウイが1969年に発表したアルバム「David Bowie」のちに「Space Oddity」となったところからの想像的イメージシーンでしょう。

 

ボウイがメンバーやマネージャー、そして妻のアンジー(ジェナ・マローン)らとミーティング、アメリカツアーの話をしています。結局、単身でいくことになります。

 

このシーンでは気づきませんでしたが、この時アンジーは妊娠しており、後のシーンではお腹が大きくなっていました。あのお腹の子はのちに映画監督となるダンカン・ジョーンズさんですね。DVDですが「月に囚われた男」を見ています。あまりはっきりした記憶はありませんが、惜しいーという感じでした。

 

ボウイ、ワシントン・DCに降り立つ

すでに書きましたが、イミグレーションで引っかかります。観光ビザしか持っていないのにコンサートツアーでやってきたと答えたからです。スーツケースを調べられ、ステージ衣装を見て女物を着るのかなどと揶揄されます。

 

到着ロビーに出ます。ファンや取材のカメラを期待したのでしょう、誰もいないロビーに怪訝の面持ちです。車寄せに出ますとリムジンが止まっています。やっと顔をほころび乗り込もうとしますと、マーキュリーの宣伝担当ロン・オバーマン(マーク・マロン)が近づいてきます。

 

オバーマンはボウイを自家用のステーションワゴンに導き、食事を用意していると自宅に連れていきます。ホテルは?と尋ねるボウイに自宅のひと部屋を用意していると答えます。

 

ロードムービー風プロモーションツアー

ということで、ボウイの期待は裏切られ、オバーマンが必死に各誌に頼み込むインタビューとラジオ局まわりのツアーが始まります。

 

これが映画の8割方をしめ、ほとんど変化していかないのが残念なところで、ボウイは一貫して自信なげに見えますし、インタビューもみな失敗、ラジオ局では下ネタでひんしゅくを買い、オバーマンが持ってくるライブのプロモーションはなにかのセールスマンのパーティーの余興という有様です。

 

そうしたプロモーションツアーで精神的に消耗したボウイは頻繁に兄テリーの妄想を見ます。

 

実際にボウイはテリーから音楽的な影響を受けたようです。ただ、映画で描かれるのは精神科病院に入院しているテリーの妄想ばかりです。

 

ボウイは次は自分の番だと恐れています。

 

オバーマンと言い合いをしながらもプロモーションツアーは続きます。やっと朗報がもたらされます。ローリングストーン誌の記者がインタビューの依頼を受けてくれ、LAで落ち合うことになります。

 

しかし、このインタビューもあっけなく撃沈です。

 

このあたりの展開がどうしてこうなのかよくわからないですね。うまくいかないにしてもワンパターンです。脚本家の力量の問題なんだと思いますが、本当に映画がデヴィッド・ボウイの何を見せようとしたのかよくわからなく、ボウイが自信なげに噛み合わない答えを返すシーンばかりなんです。

 

ということで、ボウイは失意のままイギリスに戻ります。

 

ボウイ、ジギー・スターダストになる

突然、コンサートシーンです。ボウイがメイクをし、衣装を着てジギー・スターダストに変身しています。

 

アンジーがメンバーに衣装を指示しています。ピンク一色のつなぎに、黒にラメ(だったか?)のつなぎに、もうひとつは忘れましたが、バックバンド「The Spiders from Mars」のメンバーも引きまくっています。

 

それでも無理やり着させて「ジギー・スターダスト」のステージです。

 

でも、歌う曲は、ビリー・ボーイ・アーノルドの曲をヤードバーズがカバーした「I Wish You Would」です。そういえば、デビューアルバムのジャケットの写真ヤードバーズ風でした。

 

ライヴ映画「ジギー・スターダスト」

来年2022年の1月7日から「ジギー・スターダスト」ツアーの最終公演を収めたライヴ映画「ジギー・スターダスト(Ziggy Stardust and the Spiders from Mars」公開されるという記事がありますね。

 

デヴィッド・ボウイのドキュメンタリーとかっていろいろ作られているように思いますが、これは未公開のものなんでしょうか、どうなんでしょう。