「ステージ・マザー」ネタバレレビュー・あらすじ:音楽と俳優でみせる映画、深くはないけど楽しい

 

いい音楽といい俳優がいれば映画は成り立つという典型でしょうか。もちろん、コメディやファンタジーに限ってのことであり、シリアス系であれば当然それらとともに監督なりつくり手の視点が問われることになりますのでこの限りではありません。

 

ステージ・マザー

ステージ・マザー / 監督:トム・フィッツジェラルド

 

この映画はいわゆるファンタジー映画のジャンルではありませんが、ありえないことが起きるという意味ではファンタジーです。

 

 

俳優と音楽で持つ映画 

こんなにうまくいくはずがない、きっとなにか起きるにちがいない、じゃなきゃ映画じゃない(笑)なんて幾分かの挫折を期待しながら見ていましたが、なんと!最後まで何事も起きずにすべてうまくいきました。

 

でも、そんなバカななんて気持ちは起きません。よかった、よかったとなります。

 

その理由には、基本としてセクシュアルマイノリティを描いているということはありますが、やはり主役のメイベリンを演じているジャッキー・ウィーヴァーさんの力によるところが大きいのではないかと思います。

 

アメリカで最も保守的と言われるテキサスに暮らし教会の聖歌隊の指導をしているメイベリンが、いきなりゲイバーのオーナーとなり、傾きかけた経営を立て直すという物語ですので、仮に最後は成功するにしてもいくつかの挫折を入れ込むのが常道かと思われます。

 

しかしこの映画はそんなことなど構うことなく最後まで成功パターンで突っ走ります。ジャッキー・ウィーヴァーさんが演じるメイベリンにはそれに疑問を挟ませないだけの説得力があります。

 

メイベリンを受け入れようとしない者たちの拒絶や非難の言葉を聞く時の表情や目の動きにそれが現れています。小柄であることも功を奏しています。メイベリンからはとにかくやってみるという前向きさや許容度の高さが感じられます。

 

ジャッキー・ウィーヴァーさん、出演作品の一覧を見ても「イノセント・ガーデン」くらいしか見ていませんのでどんな俳優さんかはわかりませんが、オーストラリアの俳優さんでハリウッドデビューが65歳くらいということです。現在73歳です。

 

そして、この映画が見られるものになっているもうひとつのわけは音楽です。劇伴ではなく劇中歌です。

 

ラスト、メイベリンがドラァグクイーンと一緒に歌う曲はボニー・タイラーの1983年の曲「愛のかげり(Total Eclipse Of The Heart)」ですが、他の曲もその頃にヒット曲だと思います。

 


Bonnie Tyler - Total Eclipse of the Heart (Video)

 

懐メロですから泣けます(笑)。

 

泣ければいいというわけでもありませんが、音楽で泣かせるというのはわりと簡単ということです。

 

いずれにしても、この映画は俳優と音楽で持たせている映画です。

 

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

物語としてはこれといった話ではありません。ゲイの息子が薬物の過剰摂取で亡くなり、それまで疎遠であった母親が息子のやっていたゲイバーを再建するという物語です。

 

サンフランシスコ、カストロ・ストリートのゲイバー、パンドラ・ボックスではドラァグ・クイーンのショーが繰り広げられています。店のオーナーでありドラァグ・クイーンでもあるリッキーがステージ上で倒れて亡くなります。

 

カストロ・ストリートのカストロって、キューバのカストロさんではなくカリフォルニアがメキシコの統治下にあった時の軍人ホセ・カストロという人の名前から取られているようです。

 

リッキー死亡の知らせがテキサス州の両親のもとに届きます。両親との関係は断絶状態です。父親は息子がゲイであることが受け入れられません。母親のメイベリン(ジャッキー・ウィーヴァー)は教会の聖歌隊の指導をしており敬虔なクリスチャンと思われますが、最初から許容度の高い寛容さを感じさせる人物として登場します。

 

この映画、セクシュアルマイノリティは登場しますが、その社会的問題についてシリアスにとらえる視点はありませんので、メイベリンがどういう考えを持っているかなどということに深入りしたりはしません。息子への愛から入り、そこからその息子のパートナーや息子がやろうしていたことの仲間たちというところへ自然に入っていくというつくり方がされています。メイベリンが最初に親しくなる人物に息子の友人であるシエナ(ルーシー・リュー)というシングルマザーを置いているのも計算づくの人物配置でしょう。

 

ということでメイベリンは夫の反対を押し切りサンフランシスコへ向かいます。葬儀には出たもののドラァグ・クイーンたちが歌い踊る葬儀で顔をしかめるばかりです。また、息子のパートナーのネイサン(エイドリアン・グレニアー)を訪ねるも冷たく拒絶されてしまいます。

 

戸惑うメイベリンですが、偶然通りかかったシングルマザーのシエナがリッキーのママ?と声を掛けてくれ、ネイサンとの間に入ってくれます。

 

ネイサンはパンドラ・ボックスの共同経営者でもあるのですが、遺言がないために店はあんたのものだと刺々しく言い放ちます。メイベリンはいらないわよと言いながらも店を訪れます。店ではドラァグ・クイーンのショーが行われています。しかし、店は傾きかけているらしく、またリッキーで持っていたようでショーの演出担当もやめてしまいます。

 

メイベルが再建に乗り出します。これまでのショーは口パクで過剰な振りを見せるものでしたがメイベルはそれを生歌で訴える演出に変えようとします。

 

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チェリー、ジョーン、テキーラの3人です。

 

画像の左のチェリーは「タンジェリン」のマイア・テイラーさんです。その映画では俳優ということではなく出演しており、リンク先のレビューには俳優になればいいのにと書いていますので、よかった、よかった(笑)。

 

そんなにうまくいくかい?と思いますが、何の障害もなく客には大ウケです。

 

メイベリンは次に集客を考えホテルのコンシェルジュに売り込みにいきます。担当のコンシェルジュには断られますが偶然(笑)やってきたチーフコンシェルジュがテキサス出身(じゃなかったかも)ということで意気投合しチラシを置いてくれることになります。

 

パンドラ・ボックスは連日満員の盛況です。

 

3人のひとりジョーンが薬物をやっています。メイベリンが息子と同じことにならないでと説得します。不安ならついていてあげるとそっと見守ってあげます。

 

また、チェリーは母親が自分を認めてくれないことに悩んでいます。メイベリンは母親を説得しショーを見に来るようにと話します。ショーを見に来た母親は次第に笑顔になっていきます。

 

メイベリンはシエナのアパートメントに泊まっています。メイベリンが子どもの面倒をみてくれますので助かっているようです。ある日、シエナの寝室から男の暴力的な声とシエナの叫び声が聞こえます。メイベリンはバッグから拳銃(これがアメリカ?)を取り出し男に突きつけます。男は逃げていきます。男はシエナのボーイフレンド(候補)です。

 

メイベリンはホテルのチーフコンシェルジュとデートします。すでにまわりのみんなもメイベリンを応援するようになっています。メイベリンにとっては若い頃を思い出すような楽しいデートです。男性が軽くキスをして別れようとしますとメイベリンが熱いキスで返します。

 

メイベリンの夫がやってきます。夫にはメイベリンがまったく理解できません。ただ寂しさもあるようでメイベリンに愛している、帰ってきてくれと言います。メイベリンは店をネイサンに譲ることを条件に帰ることにします。

 

ここ、夫に、売ればそれなりの金になると言わせて取引に仕立て上げていましたが、やや無理があります。夫にしてみれば息子と認めたくないもののお金を欲しがるほど堕ちちゃいないでしょう。

 

とにかくメイベルはテキサスへ帰ります。しかし、あくまでも息子を認めようとしない夫に我慢ができなくなっています。家を出る決心をしふたたびサンフランシスコへ向かいます。

 

チーフコンシェルジュの男性とも再会(自分から会いに行っていました)します。

 

そしてラスト、メイベリンはパンドラ・ボックスのステージで息子リッキーとの共演を果たすのです。

 

リッキーは自分のショーをチェックするために撮影してDVDにしており、それをステージに投影し、リッキーとメイベルが「愛のかげり」をデュエットするのです。

 

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価値観の転換

メイベリンの夫はひとり寂しく残されていました。

 

この映画ではメイベリンの夫は一顧だにされていません。

 

老後をひとり寂しく過ごすことになりそうです。

 

そういう時代(世界?)がもうすぐやってきます。

 

タンジェリン(字幕版)

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  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: Prime Video