葬式の名人

(DVD)前田敦子を活かせていない…ということか

前田敦子さん主演ということでレンタルしたんですが、劇場ならもう少し見られたんでしょうか、さすがに目の前のモニターじゃ無理でした。

そもそも集中させるような映画ではありませんし、かと言って笑わせる映画でもありませんし、なにが狙いなのかかなり曖昧です。

葬式の名人

葬式の名人 / 監督:樋口尚文

なるほど、大阪府茨木市の市制70周年の記念事業として制作された映画ということでした。茨木市は川端康成が3歳から18歳まで過ごした町とのことで、そのいくつかの作品から構想された映画ということのようです。公式サイトには『十六歳の日記』『師の棺を肩に』『少年』『バッタと鈴虫』『葬式の名人』『片腕』の作品名が上がっています。

シナリオは大野裕之さんという方で「太秦ライムライト」と同じようにプロデューサーと脚本となっています。

「原案:川端康成」となっていますが、この映画にそんな名前の使い方していいんですかね。

監督は樋口尚文さん、映画評論が主の方のようです。

物語は、高校時代の同級生が交通事故で亡くなり、その通夜に集まった友人たちのそれぞれの思いや関係が明らかになっていく話です。卒業後10年、皆28歳という設定です。

亡くなったのは吉田創、野球部のピッチャーでいわゆるモテ男だったのですが肩を痛め野球の道を断念、その後アメリカへ行っていて帰ってきた直後にたまたま出会った子供を助けようと事故にあっています。

同級生で主要な人物は渡辺雪子(前田敦子)と豊川大輔(高良健吾)、雪子は10歳くらいの男の子あきおと暮らすシングルマザーで、創との間の子どもです。大輔は創とバッテリーを組んでいたキャッチャーで現在は教師です。その他数人の友人、創の両親、高校の学食の職員たち(公立高校に学食なんてある?)が絡んできます。

舞台となっている大阪府立茨木高等学校は川端康成の出身校のようで、ウィキペディアをみましたら大野裕之さんも卒業生でした。そういう縁の映画ということなんですね。

軸になる物語は特になく、あえて言えば、雪子があきおにお父さんはアメリカに行っており、いつか大リーグのボールを持って帰ってくると言い聞かせてあるその人に通夜の場で対面させるということ、ぐらいかな? という映画です。

ただそれでさえ他の同級生はふたりのことを知らなかったようなのに特に驚くといったシーンも入れていません。

創の両親が、結婚なのかよくわかりませんが何かを反対したというようなことも語られますが、かなり適当で、映画の中で雪子と対面するシーンでもまったく反応はありません。なのに後半では、母親に反対してごめんなさんと言わせ、あきおにはいきなりおじいちゃんおばあちゃんと呼ばせたりしていました。

大輔は創に恋愛感情を持っていたという感じもありますがそれも曖昧なまま進みます。その気持ちからなのか、創の遺体に母校を見せたいということで皆で棺桶を担いで高校へ行くことになります。

この設定からしてコメディということですが、思い切りが悪いですし、時にしんみりさせようとしたりとかなり中途半端です。物語の軸もなく、コメディとしても思い切りが悪く、コントのようでテンポもありませんのでちょっと気をはずしますともうどうでもよくなってしまいます(ペコリ)。

後半には幻想シーンがあり、有馬稲子さんが登場します。あれはどういう役割なんでしょう、よくわかりませんでした。その登場に続いて、多分川端康成の小説の中の登場人物だと思いますが、何人かが創の弔問に訪れたかのようにぞろぞろと登場します。

そして、有馬稲子さんが私の右腕を置いていきましょう(だったかな?)とか言って右腕を置いて消えていきます。

雪子と大輔とあきおがその右腕を創の遺体の右腕と付け替え、さらなる幻想シーンに続いていきます。

校庭に創と雪子と大輔がいます。あきおがおとうちゃ〜んと呼びながら創に抱きつきます。創はボールを取り出しキャッチボールをしようと言い、二人でキャッチボールをします。大輔が今まで何してたんだよ?と尋ねますと、創はボールを追いかけていたと答え、暗闇に転がっていったボールを追いかけていく創に雪子がもう追いかけなくていいんだよと声を掛け、創は消えていきます。

翌朝、創の遺体と雪子とあきおが寝ています。隣では大輔たちが集まって机の上の何かを見ています。それは創の描いた漫画です。

創と雪子とあきおの物語の漫画が映し出されます。

創が絵を描いていたことは何回か前振りされていますのでああそうとは思いますが、アメリカへ行って漫画を描いていたの?とは思います。

ということで、皆で創の遺体を担いで葬儀場へ向かいます。

葬式の名人というのは、雪子が両親も祖父も亡くしており、その創の棺を皆で担ぐシーンに雪子のナレーションで「大切な人を送るとまた新しい出会いがある。うちは葬式の名人やで」と入ります。川端康成の『葬式の名人』にある一節かもしれませんね。

『葬式の名人』も他のベースとなっている作品も読んでいませんのでなんとも言えませんが、そうした作品をベースとしてオリジナルストーリーにすることが大変だったかもしれません。

とは言っても、もう少し何とかならなかったのかなあという脚本です。大野裕之さんはチャップリン研究家らしいのですがチャップリンらしいところとかあったんでしょうか。

それと、やたら俯瞰の画とか仰角の画を使っているのですがどういう意図なんでしょう? あまり効果的だったとは思えませんでした。

前田敦子さんがこういうコント系のコメディにはあわないということもあるのかも知れません。「町田くんの世界」では無茶苦茶笑わせてもらったんですが。

伊豆の踊子・骨拾い (講談社文芸文庫)

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  • 作者:川端 康成
  • 発売日: 1999/03/10
  • メディア: 文庫
 
太秦ライムライト

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