「空に住む」ネタバレレビュー・あらすじ:三代目JSBは多部未華子が見る空にはいない

多分 EXILE の持ち込み企画ですね。

ですが、結果として多部未華子さんで持っている映画です。そして、その周りにややこしい人物を配して煙に巻いた(笑)青山真治監督の力で、あるいは脚本に名前が入っている池田千尋さんということもあるかもしれませんが、脚本と演出で持っている映画です。

 

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空に住む / 監督:青山真治

 

基本は、都会で暮らす女性の迷い、そして吹っ切りを描いているだけですが、その周りには、本音と建前、真実と虚構のような対立項が散りばめられていますので映画の中盤まではかなり複雑な物語に感じられます。

ただ終わってみれば、未だポストバブル期の閉塞感から抜けられず現状追認の諦めから脱しきれていない人々の話です。

 

直実がもともとどこで暮らしていたのかわかりませんが、そこへ戻ればいいんじゃないのと思います。両親と同居だったわけですから、おそらくタワーマンションとは正反対の郊外でしょう。

 

それじゃあタイトルと違っちゃいますか…(笑)。

 

 

ネタバレあらすじ

小早川直実(多部未華子)28歳、両親を亡くし、叔父夫婦が暮らすタワーマンションに愛猫ハルを連れて引っ越してきます。叔父夫婦はかなり裕福そう(何をしているかは不明)で、その部屋は投資用に買った39階のワンルームです。

 

叔父夫婦は奇妙な馴れ馴れしさと能天気さを振りまいています。直実の前のふたりは仮面夫婦のようにみえます。妻明日子(美村里江)は夫雅博をマーちゃんと呼び、直実にもそう呼ぶことを半ば強要します。雅博はそれを楽しんでいるようです。

 

明日子は直実の部屋の鍵を持っており、時々訪ねてきたり、勝手に入ったりします。その時の表情は時に疲れた表情を見せたりします。直実には異様な馴れ馴れしさで接し、家族だからとか、子供が欲しいとか欲しかったとか、直実の子どもを育てるんだとか本心なのか適当なのかわからない話をします。

 

そのマンションは(その部屋だけということもありうるが)リビングも靴を履いたまま生活する様式です。また、叔父夫婦も直実も、食事であれ、くつろぎの時間であれ、必ずワインを飲みます。

 

直実の職場は郊外の民家を事務所にしている文芸書の出版社です。仕事場は座卓に座椅子で、数人の社員が和気あいあいと働いています。和服が板についた人の良さそうな社長が時々どこからか仕事場を覗きに来ます。編集長は作家にも見える雰囲気を持っており、別室の同じく和室で布団を敷いたままにも見える籠もり部屋で仕事をしています。

 

後輩に愛子という女性がいます。今にも生まれそうにもみえるお腹をしています。結婚式を控えています。しかし、その子の父親は結婚相手ではなく作家の吉田です。愛子はそのことを直実にだけ話しており、最後まで騙し通すと力強く言い切っています。

 

都会のタワーマンションと郊外の民家を行き来する生活が始まります。

 

ある日、直実はエレベーターで人気タレントの時戸森則(岩田剛典)に出会います。それまで興味があったわけではありませんが、愛子に知ってる?と尋ねたり、週刊誌を見たりします。

そして、再び出会います。時戸がオムライス作れる?と言います。直実は一瞬戸惑いますが、作れますと答え、自室でオムライスを作りふるまいます。電話番号を聞かれ教えます。

後日、佐藤錦があるけど食べる?と電話が入ります。時戸がやってきます。佐藤錦を食べながらワインを飲み、そしてキスをし関係を持ちます(多分)。

 

直実は編集長から売れる企画を求められています(理由は省略)。直実は時戸にあなたの哲学の本を一緒に作らない?と持ちかけます。(特に返事はなかったと思う)

 

そうした関係が続くある日、ふたりでベッドにいますとチャイムがなります。明日子です。いないのかあ、入っちゃおといつもどおりに合鍵を使って入ろうとします。しかし玄関先で気配を感じ出ていきます。

 

時戸「今の何?!」「萎えるなあ!」と出ていってしまいます。

 

ハルの調子が悪くなります。獣医に見せますと、ストレスが原因のリンパ腫(だったかな)と言われ、直実は、慣れないタワーマンション暮らしや(ハルが)人見知りの性格なのに時戸や叔父夫婦の出入りの多さに思い当たります。

 

ハルの病、時戸との別れ、明日子の馴れ馴れしさからのいらだちが重なり、直実はうつ状態になり会社を休むことになります。

 

ハルが死にます。離れがたくハルを抱いて過ごす日々(そう見えた)です。

 

編集長に求められている売れる企画、そして時戸に持ちかけた時戸の哲学の本の企画書をかきあげます。

 

仕事に復帰し企画書を編集長に見せる直実です。編集長に、あなたは時戸となにか関係がありますかと尋ねられた直実は、はい、だからこそやれる自信があります、そしてこれはハルのためなんですときっぱりと答えます。

 

直実のマンションを訪ねようとした愛子が途中で破水します。救急車を呼ぶという直実に、愛子はダメ、まだ産まない、最後まで騙し通すと聞きません。しかし結局病院に運び込まれ出産します。

 

後日、直実は自室で時戸にインタビューをします。その録音と取材データは作家の吉田に託されます。

 

ハルの処分を決心し移動火葬車を呼び海辺で火葬に付します。

 

タワーマンションの自室の窓際で大きく背伸びしながらも、その目には気だるさが漂い、空を見るわけでもなく、東京の街を見下ろすでもなく、何も見ていないようにみえる直実です(と、私には見えた)。

 

そして、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEの「空に住む ~Living in your sky~」が流れます。

 

直実の周辺人物の異様な濃さ

前半はかなり見られます。

その一番の理由は周りの人物が異様に濃いーために何が始まるんだろうとかなり期待を持たせられるからです。叔父夫婦、出版社の面々、どちらもかなり力が入っている感じで始まります。

 

しかしどちらも途中で息切れします(笑)。奥行きのありそうな人物として始めてしまったけれど、それ以上突っ込んだら主役の影が薄くなるからでしょう。

 

直実が出勤するシーン、まず電車が郊外に向かいますので、ん? と思い、さらに直実は民家の引き戸を開けて入ってきますし、そこでは数人が座卓を並べて座椅子に座って奇妙な家族っぽさの雰囲気を出しています。誰かがどこかに籠もっているとか、和服姿の日本舞踊か邦楽の先生のようなおじさんが登場して誰彼の受賞後第一作がどうこうとか、とにかく何だこれ? と興味をそそられます。

 

その前の冒頭のシーンでは、直実がハルを背負ってタワーマンションに入るところを高層階から見下ろすショットそのままに誰かが直実をエントランスに引き入れ、次のカットで叔父夫婦が直実を部屋に引き入れて、靴のままでいいよと、実際にそうしたマンションがあるにしても、一瞬、はぁ? と思わせ、叔父夫婦のふわふわとした地に足のついていない(ように見える)生活スタイルを象徴的に見せています。

 

明らかに対比させているわけですが、ただどちらも現実感もほどほど、作りものっぽさもほどほどで嫌味はないです。

 

それにしても職場の人物は皆濃いーです。

愛子(岸井ゆきの)、お腹の子どもが婚約者の子でないことをあっけらかん、というよりも力強く直実に語るところなどすごいです。医者も騙せたんだから最後まで騙し通すという決意をあの笑顔で言われたら、はい、わかりましたとしか答えようがありません(笑)。

 

そしてあらすじではあえて書いていませんが、その子の父親である作家の吉田理(大森南朋)、ほとんど台詞もなく登場も数シーンなのに妙に映画的な存在感を持たされています。

雄弁な愛子に対して意図的に台詞をなくして画づらだけで見せようとしているのかもしれません。ふたりでそばをすするシーンもわざわざ入れています。出版社のシーンがこの吉田の次回作の話を軸に進むことや直実が企画した時戸の哲学の執筆を吉田に依頼するということもあります。愛子の結婚式の日に、吉田が夫婦子連れでいるところに直実を出会わせ、なぜかわざわざ吉田の子どもに直実を注視させるシーンまで入れています。

 

編集長の柏木(高橋洋)、作家くずれの人物設定でしょう。ただ、そこまで凝る? って感じの人物で、この編集長もかなり映画を濃くしています。

 

ほかにも移動火葬屋の男(永瀬正敏)に火葬したハルは消えてなくなるのではなく星になるとか、距離となんとか(場所?)の問題じゃないですかとあたかも哲学的にもみえる意味不明な台詞を言わせたり、タワーマンションのコンシェルジュ(柄本明)にこのマンションの方は皆笑顔で明るいですねなどとわざわざ嘘くさいことを言わせていました(笑)。

 

おそらくシナリオ段階では主役のふたりでは映画が持たないと考えたんでしょう。

 

でも結果としてやりすぎでした。多部未華子さんで十分持った映画です。

 

物語の軟弱さと直実の強固な自立心

いやそうでもないかもしれないです。

もちろん多部未華子さんで持ってはいますが、出版社パートも叔父夫婦パートも表面的な描写で終わっていますし、そもそもの映画の軸である直実の不安定感も結局なんだったのかよくわからなく終わっています。

 

多部未華子さんが演じることで直実は大人の自立した女性になっています。両親の死に直面して泣けなかったことを気にしていますが、そんなことくらい自分自身で解決できない人物にはみえません。

そもそもあの直実ならタワーマンションになど引っ越さず、両親がいなくても実家でひとりで暮らす選択をするでしょう。

時戸との関係にしても完全に時戸を圧倒しています。ふたりでいる時に明日子がやってきて、時戸が萎えるとかいって出ていったときでも直実はまったく動揺していません。

 

時戸への直実のインタビューシーン、あれはなんですかね? 時戸の哲学の本をつくると言いながら、好きな色は? とか、あれは完全に脚本レベルか演出レベルかはわかりませんが、何かを意図したシーンです。ずっこけます(笑)。

 

時戸に象徴される何かを皮肉っているのかもしれません。

 

とにかく、直実の存在感はそうした物語の軟弱さを圧倒しています。

 

ちょっと言い過ぎか…(笑)。

 

ラブシーンの下手さはなぜ?

それにしても直実と時戸のラブシーンのぎこちなさは何なんでしょう?

 

青山真治監督はもう自分自身の映画は撮らないのでしょうか?

共喰い」では「これは、これからの日本映画を担っていく意思表示をした映画でしょう」などと思いっきり期待したのに…(涙)。

 

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