サイゴン・クチュール

ベトナムの活力を感じる映画

こういう映画が作られるということはその国に活力があるということでしょう。

予告編をみていましたら「1969年 サイゴン、アオザイ屋の娘ニュイはサイゴンいちのファッションリーダー!」などと始まります。

え!? 1969年? ベトナム戦争は…? と、一瞬声を失くしてしまうような語りに、これはいったいどういうこと? 是非とも見に行かなくてはということで…。

サイゴン・クチュール

サイゴン・クチュール / 監督:グエン・ケイ

意外と面白かったです(笑)。

映画のつくりはハリウッド風のガールズムービー仕立てです。有無を言わせぬ物語の運びや動きのあるカメラワーク、そして音楽で軽やかに見せていきます。テンポがありますので物語がつまらないと引かなければ結構見られます。

物語は、アオザイを古臭いと嫌うアオザイ屋の娘がタイムスリップして50年後の落ちぶれた自分に出会い、アオザイも捨てたものじゃないと再発見して戻ってくるという話です。

1969年のニュイ(画像の主役)が20歳くらいとしますと、タイムスリップするのが2017年ですから48年後となりニュイは68歳です。50歳くらいにしか見えませんでしたが、それはともかく、過去と未来の本人ふたりが、こんなになったのはあなたのせいよと罵り合うのは面白かったです。

ニュイはサイゴン(現ホーチミン)で代々続くアオザイの仕立て屋の娘で、店は母親が取り仕切っています。母親はニュイに跡を継いてほしいのですが、ニュイは古臭いと感じるアオザイを毛嫌いして欧米ファッションにしか眼がいきません。

デザイナーで言えば、サンローラン、クレージュ、マリー・クワント、イメージとしてはポップ、カラフル、そしてスタイルとしてはミニスカート、シャネルスールもあったかな、そんなファッションです。

店にはニュイと同年代のタン・ロアンがいます。タン・ロアンはニュイの母を母と慕い、代々受け継がれてきたアオザイ仕立て方法を教わります。

そして、2017年。ニュイがタイムスリップした我が店はすっかり落ちぶれており未来のニュイも飲んだくれて見る影もありません。

アオザイの仕立てはタン・ロアンが名前を継いで自分の店を持ち切り盛りしています。また、タン・ロアンの娘ヘレンがファッションリーダーとして活躍しています。

で、ニュイはヘレンの下で、最初は掃除担当から働くことになります。ここらあたりあまり筋道だって話は進んでいませんが特に気にはなりません。そういう映画とわかってみれば気にならない、映画とはそういうものだということです。

ある時、60年代ファッションの企画が持ち上がり、ニュイのデザイン画が抜擢され評価されます。気に入らないヘレンは、ニュイがアオザイを嫌っていることを知り、新しいアオザイのデザインをするよう指示します。

困ったニュイは未来の自分に相談するも役に立たず、母のアオザイ仕立てを受け継いだタン・ロアンに相談します。タン・ロアンは、そういうあなたを待っていたと快く引き受け、アオザイ仕立ての極意をニュイに授けます。

現代風アオザイのファッションショーも大成功、ショー会場で注目を浴びるニュイはヘレンを招き入れヘレンを称えるのです。

ということで、1969年のニュイの活躍で2017年のニュイも心をあらため、アオザイの仕立て屋として復活します。

ニュイは1969年に戻ります。タイプスリップのきっかけは古典的なアオザイの胸に刺繍されたグリーンのエメラルドのような翡翠のようなものの力です。

1969年に戻ったニュイは自分のつくったアオザイを母親にプレゼントします。驚く母親、ふたりはひしと抱き合って幸せをかみしめるのでした(だったと思う)。

という、言葉に書こうとするとなかなか筋道立ててかくことが難しいような物語なんですが、何度も言いますが、見ていてまったく気にはなりません。

こういうところもハリウッドっぽいです。おそらくそうした映画をたくさん見ている制作者たちなんでしょう。ニュイの母親役を演じているゴ・タイン・バンさんがプロデューサーとのことで、1979年生まれとありますので40歳くらいです。

監督はグエン・ケイさん、プロフィールには、具体的には書かれていませんが、NHKの kawaii project に関わったとあります。

この映画、製作にしても出演者にしても、また内容にしても男性の影の薄い映画です。こういうところも、日本にはないベトナムという国の力が感じられます。

それにしても、ベトナム戦争はどこへいった? とは思いますが、終結から45年くらいですか…、悲惨な傷跡を残しているとは思いますが、勝者であるがゆえパワフルさかもしれません。

青いパパイヤの香り(字幕版)

青いパパイヤの香り(字幕版)

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