「沈黙のレジスタンス」ネタバレレビュー・あらすじ:マルセル・マルソー、レジスタンに身を投じる

パントマイムといえばマルセル・マルソーさんと、すぐにその名前が出てくる方ですが、パントマイム・アーティストとして世に出るのは第二次世界大戦後のことです。この映画は、その戦争中にナチス・ドイツに対するレジスタンスとして活動していた時代を描いています。

第二次世界大戦が始まったが1939年、マルソーさんは1923年生まれですから、その時16歳、そしてヨーロッパで戦争が終わったのが1945年ですので、22歳までの6年間の物語ということになります。

 

沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~


沈黙のレジスタンス~ユダヤ孤児を救った芸術家~ / 監督:ジョナタン・ヤクボウィッツ

 

 

復讐よりも生きること

レジスタンスとは言っても、たとえば銃を持って戦うといったシーンはなく、多くのユダヤ人の子どもたちを救い出し、スイスへ送る活動が主になっています。

 

そのあたりのことについて、日本版のウィキペディアには「兄弟のアランとともにマルセルはシャルル・ド・ゴールの自由フランスに参加、堪能な英語力でジョージ・パットンの軍隊の渉外係として働く」としかありませんが、英語版のウィキペディアには、いとこのジョルジュにホロコーストからユダヤ人を救い出すレジスタンスに加わるよう促されたとあります。

 

その Georges Loinger さん、映画では「サウルの息子」でサウルを演じたルーリグ・ゲーザさんが演じているジョルジュですが、13歳くらい年上のマルソーさんのいとこで、ウィキペディアにはおよそ350人のユダヤ人の子どもを助けたとあります。

 

Georges Loinger par Claude Truong-Ngoc octobre 2014
Claude Truong-Ngoc / Wikimedia Commons - cc-by-sa-3.0, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

 

ジョナタン・ヤクボウィッツ監督は、当時のマルソーさんについてのリサーチをこのジョルジュさんを通して行っているようです。ジョルジュさんは2018年に108歳で亡くなっています。

 

ですので、子どもたちをスイスへ送る活動に関わっていたのは事実であるにしても、映画の中のマルセル・マルソーには多分にジョルジュさんの活動が反映されていると思われます。

 

映画が語ろうとしているのは、マルセル・マルソーの実像に迫ることよりも、子どもたちを救うという点にあり、マルソーが憎しみに燃えるエマに対して、復讐よりも多くの子どもたちを助けることが未来のためになると語るシーンがこの映画のテーマなんだろうと思います。

 

ネタバレあらすじ

映画のつくりとしては、こんなことがあった、あんなことがあったというエピソードシーンで語る方法がとられていますので、あまり現実感はなくやや大雑把に感じられます。

 

また、各シーン、主要人物であるマルソー、エマ、マルソーの兄のアラン、エマの妹のミラ、ユダヤ人孤児のエルスベート、そして後半のリヨンのシーンで登場するSSのクラウス・バルビーらを前面に出したシーンばかりですので物語の流れはあまりよくありません。

 

ナチス・ドイツ降伏後のニュールンベルグ

連合軍の司令官パットンが兵士たちを前に演説を始めます。要は、銃を持って戦う者も英雄だが多くの子どもたちの命を救った英雄がここにいるというマルソーの紹介演説です。

 

ラストはここでマルソーがパントマイムを演じるのだろうと予想されます。

 

1938年ごろ

ドイツ、ミュンヘンのユダヤ人一家がゲシュタポ(多分)に急襲され、両親は射殺、10歳くらいの少女エルスベートが孤児となります。このエルスベートがユダヤ人孤児の象徴的存在として最後まで物語に絡んできます。

 

同じ頃、ドイツ国境に近いフランス、ストラスブールのキャバレーでマルソー(ジェシー・アイゼンバーグ)がチャップリンの真似をしてパントマイムを演じています。父親がやってきます。マルソーはその姿をみて逃げ出します。父親は肉屋なんですが、後にステージに立って歌うシーンがあり、本人は自分もその道に進みたかったと言っています。

 

ジョルジュであったか、エマであったか、アランであったか忘れましたが、マルソーは誘われてドイツ国境での123人のユダヤ人孤児の引き渡しに立ち会います。

 

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引受先はスカウト団体ということだと思います。子どもたちは怖さや緊張で固まっています。それをマルソーがパントマイムで和ませます。笑顔はひとりふたりと広がっていきいつしか全員がマルソーの動きに魅了され部屋中が笑いに包まれます。

 

マルソー、レジスタンスに加わる

1939年、ドイツがポーランドに侵攻し戦争が始まります。フランスにも危機が迫っており、マルソーたちは子どもたちをユダヤ人の家族や教会などに分散して預かってもらいます。

 

マルソーはジョルジュ(ゲーザ・ルーリグ)に誘われレジスタンスに加わる決心をします。父親に話しますと賛成してくれます。この父親は後にゲシュタポに捕まるシーンがあり、最後のスーパーだったと思いますがアウシュヴィッツで亡くなったとありました。

 

リヨンの虐殺者、クラウス・バルビー

映画のクライマックスために「リヨンの虐殺者」と言われるクラウス・バルビーを登場させています。

 

このクラウス・バルビーのウィキペディアを読みますと、「ヴィシー政権下のリヨンで反独レジスタンスを鎮圧する任務に就いており、8,000人以上を強制移送により死に追いやり、4,000人以上の殺害に関与し、15,000人以上のレジスタンスに拷問を加えた責任者とされている」とあります。

 

で、それにも驚きますが、それ以上に、戦後アメリカがそのバルビーを利用価値があるとして工作員として使い、フランスの引き渡し要求を突っぱねていたというんですからさらに驚きます。

 

シーンの前後は記憶していませんが、クラウス・バルビーのシーンが数シーン挿入されています。

 

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ベルリンのゲイ・クラブ(だと思う)でバルビーが客である軍人を暴行するシーン、リヨンに赴任し、水のないプールに数人のユダヤ人を並ばせ、何の躊躇もなく射殺するシーン、妻と乳児をリヨンに迎え優しい父親の顔を見せるシーンなどです。

 

射殺のシーンには、もちろん別の場所ですが、孤児のエルスベートたちが教会でアベマリアを歌うシーンが重ねられていました。

 

このシーンの一義的な意図とは別に、孤児たちはキリスト教会で保護されているということだと思いますが、ユダヤ教徒がアヴェマリアを歌うということにもなにか意図があるんだろうかとちょっと気になるシーンではありました。

 

マルソー、リヨンに移る

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マルソー、エマ、アラン、ミラはリヨンに移ります。アランではなくジョルジュだったかもしれません。映画を見ているときにはふたりをはっきりとは識別できていません(涙)。

 

ストラスブール、リヨン、そして映画のクライマックスでスイスに子どもたちを逃すその位置関係です。

 

このシーンもどういう流れの中のシーンかはっきりしませんが、とにかく、マルソーたちとナチスの戦いを見せるシーンがあります。ナチスにジョルジュが捕まります。それをマルソーが大道芸の火吹きで助けます。

 

また、同じ頃、エマとミラがゲシュタポに捕まります。ふたりを含めた4人が、先にこのシーンの振りとしてあったプールに立たせられます。バルビーがやってきて、躊躇なく他の二人が射殺します。その後、レジスタンスの仲間の居場所を言えと、エマの目の前でミラに拷問を加えます。叫び声だけで映像はありません。

 

どういう理由で釈放されたのかわかりませんが、エマがふらふらと駅に向かい、ホームから飛び込み自殺しようとします。マルソーが間一髪で救い出します。

 

マルソーはエマに復讐よりも子どもたちを生かすことをやろうといい、子どもたちをスイスへ逃す計画を立てます。

 

スイスへの山越え

スカウトのハイキングを装い子どもたちを連れて列車で移動します。ある駅でバルビーが乗り込んできます。エマは自分が見つかれば皆が危なくなるとトイレに駆け込みます。マルソーがバルビーに相対します。

 

マルソーとバルビーの駆け引きが見せ場だと思いますが正直もうひとつであまり緊迫感は生まれていません。結局、謎の乗客が危機を救ってくれます。あの乗客は何だったんでしょう?

 

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シーンは徒歩での山越えに変わります。バルビーにあのハイキングの一団はレジスタンスとの情報が入り、後を追います。

 

雪の山越えです。追手のバルビーが迫ります。マルソーは皆に木に登るように指示します。これは映画の最初の頃にマルソーが子どもたちに木に登り気配を消せば見つからないと練習をさせていた前ぶりの関連シーンです。

 

バルビーたちは去っていきます。マルソーが皆に下りるように指示し走り始めます。バルビーたち追手が気づき追ってきます。

 

なぜ下りたのかは不明ですが、まあ映画だからなんでしょう。

 

マルソーたちの目の前に崖が迫ります。皆で飛び降ります。バルビーたちが銃を崖下に向けて乱射します。エマが撃たれて死にます。

 

そして翌朝、ひとりの男が近づいてきて、ここはスイスだと言います。

 

マルセル・マルソーのパントマイム

映画冒頭のシーンの続き、ニュールンベルグです。

 

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舞台ではマルセル・マルソーが無言劇を演じます。

 

という映画です。