「復讐者たち」ネタバレレビュー・あらすじ:実話に基づくホロコーストの復讐計画「プランA」

ホロコーストサバイバーの復讐劇、事実に基づく物語ということです。

「Nakam(ナカム)」というヘブライ語で復讐という意味を持つグループの存在や映画で描かれるニュルンベルクの水道に毒を流し込んで無差別にドイツ人を殺害しようとした「Plan A」という計画があったのは事実のようです。 

映画では語られていませんが「Plan B」という計画もありそれは実行されています。

 

復讐者たち

復讐者たち / 監督:ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ

 

 

Nakam と Plan A, Plan B

映画の原題が「Plan A」です。

 

英語版ですが「Nakam」のウィキペディアがあり Plan A についても詳細に書かれています。

 

主人公であるマックス(アウグスト・ディール)やアンナ(シルヴィア・フークス)は映画のために創作された人物ですが、ナカムのリーダー「Abba Kovner」は実在の人物です。「アッバ」と字幕表記されていたように思います。

 

Abba Kovner at Eichmann trial1961

Israel Government Press Office, Public domain, via Wikimedia Commons

 

当時27、8歳の方で、1987年に69歳で亡くなられています。詩人であり作家ということです。

 

ディナ・ポラットさんというイスラエルの歴史学者の著作に「The Life and Times of Abba Kovner」というものがありますのでこうしたものが物語のベースになっているのかもしれません。

 

 

Plan A 

ウィキペディアによれば、ナカムはアッバをリーダーとするホロコーストサバイバー約50人のグループで、Plan A はニュルンベルクの水道施設に潜入して毒を流し込む計画だったということです。ニュルンベルクを標的にしたのはそこがナチ党の本拠地だったからです。

 

また、アッバが毒を調達するためにパレスチナに向かったことやその帰りの船でイギリスの警察に発見され毒を海に捨て逮捕されたことも事実とあります。

 

Plan B

Plan A の失敗により、ナカムの残りのメンバーがニュルンベルクでアメリカ軍が収容していた SS(ナチ党親衛隊)の囚人を毒殺しようとしたのが Plan B です。

 

地元でヒ素を調達し収容所に納品されるパンに混ぜたらしく、その結果 2,000人に影響はあったが死者は出なかったとあります。

 

下の画像のキャプションには、アメリカ軍の軍人とドイツの探偵がパン屋を捜索しているとあります。後ろにはパンが並んでいます。

 

Nakam bread 

Unknown authorUnknown author, Public domain, via Wikimedia Commons

 

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

「Based on a true story.」が邪魔をしているのか映画の方向性が定まっていません。ことの真相に切り込もうとしているのか(それはまずないが)、「目には目を歯には歯を」的報復行為の是非を問おうとしているのか(これはちょっとありかも)、単純にエンタメ的ドラマとしてサスペンス風、あるいは実録風ドラマにしようとしているのか、いずれをも狙いながらはっきりしない映画になっています。

 

マックスがナカムの一員になるまで

ホロコーストサバイバーのマックス(アウグスト・ディール)がナカムの一員となるまでがかなり説明的に描かれます。

 

マックスが農村の一軒家にやってきます。家の主が銃を手に出てきます。マックスは「なぜ我々を売った!」「妻(名前)と子どもはどうした!?」と詰め寄ります。主はマックスを銃床で殴りつけ家に入ってしまいます。

 

マックスは戦禍で廃墟となった街でユダヤ人の男に出会い、イギリス軍のキャンプ(かな?)に向かいます。男は悪魔を袋に閉じ込めたと言い、別れ際にその袋をマックスにくれます。

 

キャンプでユダヤ人旅団の男ミハイルと知り合います。ユダヤ人旅団(Jewish Brigade)はナチスに対抗するためにイギリス軍内に組織されたユダヤ人部隊です。ミハイルはマックスに自分たちはナチの残党を探して報復(殺害)していると言い、その現場に立ち会わせます。

 

このシーンではマックスの見せ場をつくっています。どんなに痛みつけても白状しない男に困り果てたミハイルにマックスが子どもの話をしろ、つまり希望を持たせれば人は弱気になるということなんですが、それであっけなく男はナチの残党の居場所を次々に白状します。

 

こういうことをやると映画が薄っぺらくなります。実際、この映画、ここだけではなくこういったシーンが各所にあり、それが映画を質を落としています。

 

このキャンプで、同じくサバイバーの女性から妻と子どもが殺されたことを知らされます。

 

マックスはしばらくユダヤ人旅団と行動をともにし、ある時、危機に陥り(なんだったかは忘れました)ひとりの女性に助けられます。後にわかりますがナカムのメンバーです。

 

マックス、ナカムに加わる

マックスはミハイルたちユダヤ人旅団と離れ、ナカムに加わろうとします。

 

このあたりややごちゃごちゃしていますが、ミハイルはユダヤ人の軍事組織ハガナーに移るのか、もともとそうだったのかわかりませんが、ナカムが危険な組織であるためにマックスをスパイとして送り込んだということのようです。

 

マックスは廃墟の壁に「NAKAM」と書き、待ちます。ちょっとばかり安易な展開ですが、とにかく、それを直視する女性の後をつけアジトを見つけます。

 

マックスは素性を怪しまれますが、腕の焼印を見せることで仲間に入ります。ここでリーダーのアッバが登場します。いわゆる、メンバーたちがマックスに詰め寄っているところに待て!と登場するクサいパターンです。

 

とにかく、こういうつまらないドラマパターンをいっぱい使っています。

 

ここからは Plan A の実行です。市の水道局の募集に応じて潜入し、アッバがパレスチナに向かい、計画が着々と進みます。マックスが送水管の図面を書き取ってくるところであったり、その先にアメリカ軍(だったか?)の施設があることがわかり、マックスがここを閉じればいいと解決策を考えたりとほぼマックスの見せ場だけで進みます。

 

アンナ(シルヴィア・フークス)との個人的な関係もあります。マックスがユダヤ人旅団と行動をともにしているときに助けたのはこのアンナだったようです。そのシーン、暗くてよくわからず青年だと思っていました。

 

こういうスパイ(じゃないけど)系や戦争絡みの映画には必ずこういう女性が登場します。こういうドラマ手法はもういい加減やめたほうがいいと思います。男女のドラマづくりのために登場させられているだけです。

 

ある時、マックスとアンナふたりで映画館に入ります。本編の前でしょう、ニュース映像が流れ、アウシュビッツのユダヤ人虐殺の残虐な写真が映し出されます。

 

これ、嘘ですね。1945年にドイツの映画館でアウシュビッツのニュース映像が流れていたなんてことはありえないです。

 

とにかく、その映像を見てアンナがパニックに陥ります。アンナも子どもを亡くしており、それまでも夜中にうなされるシーンもありました。ふたりは席を立ってホワイエ(のような通路のようなところ)に出ます。マックスはアンナを落ち着かせようと強く抱きしめ叫ぼうとするアンナの口をふさいだりしているうちに突然ふたりはパンツを脱いでセックスです。

 

そうしたことがあるかないかではなく、なぜ唐突にこのシーンを入れるかがよくわかりません。こういうところで映画の質を落としています。

 

マックスはスパイ? 復讐の鬼?

映画ではうまく表現できていませんが、マックスという人物は、自らがホロコーストサバイバーであることと妻と子どもを殺されていることから心の奥底では復讐心が煮えたぎっているのですがそれを理性で抑えているということだと思います。

ハガナーのミハイルは、それを利用(ということでもないが)してナカムの計画を探るためにマックスを送り込んだわけですが、そのマックスにはナカムの考えにも同調する自分がいるわけで、その復讐心と理性との葛藤がこの映画が本来描こうとしたことではないかと思います。

 

え? 描けてた? それはないと思います(笑)。

 

で、その葛藤を目に見えるドラマにするためにアンナを登場させ、そのアンナに「ドイツ人たちは私たちのことを見ていたし、すべて知っていた。目には目を、歯には歯を、600万には600万人を」と言わせ、一方のミハイルにパレスチナでのイスラエル建国の夢を語らせるという方法をとっています。

 

で、Plan A はどうなったかと言いますと、史実は曲げられませんので、アッバはパレスチナで毒を調達するものの船上で見つかり海に投棄し本人は逮捕されます。

 

アンナは子どもは殺せないとナカムを抜けてパレスチナへ向かいます。この心変わりは描かれていませんのでよくわかりません。

 

復讐心の方はと言えば、ここで最初に出会った男からもらった悪魔を閉じ込めた袋が役に立ちます。マックスはその袋を開けその空気を吸い込み幻を見ます。

 

冒頭のシーンに登場した自分たち家族を売った農夫を殺害します。そして、アッバから毒を受け取ったマックスは止めるミハイルを倒し、貯水槽に毒を流し込みます。ニュルンベルクの街には無数のドイツ人が倒れています。

 

で、現実(映画の現実)です。マックスは故郷に向かい、緑豊かな丘陵地を眺めます。

 

「しあわせに生きること、それが最大の復讐」みたいな感じのナレーション(スーパーだったかな?)が流れ終わります。

 

映画としては凡庸

ということで、先に書きましたが、やはり映画の方向性が定まっておらず、単調に終わってしまっています。

 

それに、アウグスト・ディールさんとシルヴィア・フークスさんという俳優を使いながらうまく生かせていません。

 

監督はドロン・パズさんとヨアブ・パズさん、イスラエルの兄弟監督です。ヨアブさんが1976年生まれの45歳くらい、ドロンさんが1978年生まれの43歳くらいの兄弟で、過去のキャリアとしてはTVシリーズが多く、この映画が二作目になるようです。

 

ありきたりのドラマ手法に頼らず俳優の力を信じた映画づくりを心がけたほうがいいように感じる映画でした。

 

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