そんなには褒めないよ。映画評

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「ナポリの隣人」(ネタバレ)人はわかりあえないし、所詮身勝手なもの…

2011年の「最初の人間」以来のジャンニ・アメリオ監督です。寡作の印象の監督ですが、IMDbを見ますとそうでもなさそうで、TVやらドキュメンタリーやらと結構いろいろ撮っているようです。

 

ナポリの隣人

ナポリの隣人 / 監督:ジャンニ・アメリオ

 

最後まで焦点の定まらない映画でした。

 

終わってみれば、ああ、父娘の話だったのねとわかるのですが、思えば、冒頭娘のシーンから入ったことで気づくべきでした。

 

それに、唐突に起きる隣人家族の悲劇にしても、本来ドラマ的重要度からいけば、悲劇を招いた張本人の夫を問題にすべきところなんですが、そうではなく、ただひとり妻を生き残らせ、まるで実の父のように悲嘆に暮れる姿を見せていたわけですから、父娘の話以外にはないですね。

 

公式サイトにありました(笑)。

父と娘の確執、つかの間の疑似家族、
そして事件は起こった…
(略)
南イタリア、ナポリ。リタイアし、かつて家族と暮らしたアパートに独り暮らす元弁護士のロレンツォ。娘のエレナはアラビア語の法廷通訳で生計を立てるシングルマザー。母の死の原因が父の裏切りによるもの、と信じ、父を許せないでいた。
(略)
二人に和解の道はあるのか?

 

読んでから見ていればまた違った印象だったかもと思います。ただ、そのせいばかりでもなく、何とも意味ありげなカットがあったり、今の何?といった編集がなされていたりで、何に焦点を当てようとしているのかわかりにくい映画でした。

 

悪くいえば散漫な映画ということになってしまいますが、見方を変えれば、かなりリアルな映画でもあります。70歳代かという元弁護士ロレンツォ周辺の人間関係を描いているのですが、そのロレンツォにフォーカスして描くわけではなく、俯瞰して人間関係を描けばあんな感じかなという意味です。

 

で、最後にみえてくるのは、確かに娘エレナにとっては父との関係が大きいようですが、果たして父ロレンツォの方はどうなんだろうという気がします。一概に非難の意味ではないのですが、ちょっと引いて考えてみれば、身勝手に生きてきた老人が最後までそのことに気づかずに終わるという映画にもみえてきます。

 

え? と思われるかも知れませんが、あのロレンツォ、仮に隣人のミケーラが死ななければ娘のところへなど行っていませんし、もしミケーラが生還していればさらにミケーラとの関係を強く求めていくと思います。

 

だからダメと非難するつもりはなく、人間そんなもんじゃないかなあと思いますけど…。

 

ロレンツォ(レナート・カルペンティエリ)は引退した弁護士、心臓発作で入院していますが、勝手に点滴の注射をはずして家に戻ってしまいます。え? どういうこと? と思いましたが、そういう映画のようです(笑)。

娘エレナ(ジョヴァンナ・メッゾジョルノ)と息子がいますがどちらとも折り合いが悪いようです。はっきりとはわからなかったのですが、ロレンツォの住まいの所有権でも母親のものだ(違っているかも?)という息子(たち?)と揉めているようです。

折り合いの悪さの原因は(おそらく)基本的にはロレンツォの性格なんでしょうが、エレナとの間には別の問題があり、過去ロレンツォには愛人がいて、それをエレナが母親に告げたがためにそのショックで母親はその後死に至ったということのようで、エレナにはそのことへの後悔があるようです。ロレンツォが愛人のこと、妻の死のこと、娘のことをどう思っているのかは映画からはまるでつかめません。というよりも、よくも悪くも過ぎたことなど気にもかけない人物に見えます。

 

隣に夫婦と子供二人の四人家族が引っ越してきます。妻ミケーラ(ミカエラ・ラマッツォッティ)と親しくなります。後に夫とも話したりしますが、夫はかなり神経質そうで、ナポリが性に合わないと嘆いています。

 

ある日、ロレンツォが家に戻ろうとしますと、周囲が警察によって封鎖されています。静止を振り切って無理やり家に戻ってみますと、隣の家族に事件が起きています。夫がピストルで妻と子どもを撃ち、自分も自殺していたのです。ただし、妻ミケーラだけはかろうじて息があり重体です。

 

映画はこの惨劇自体にはまるで興味を示そうとはしません。その後映画が描くのは、実の父親を装うまでしてミケーラのそばに付き添うロレンツォの姿です。

 

よーく考えればかなり異常なことだと思いますが、そもそもの惨劇自体がさらりと流されていますし、最初に書きましたように、視点が何かにぎゅっと凝縮した感じではがなく、俯瞰したところに置かれて淡々と描かれていますので気にはなりません。

 

ミケーラが亡くなります。ロレンツォは茫然自失の体で街をさまよいます。そして、行き着いた先は娘エレナの職場、裁判所でアラビア語の通訳として働くエレナを寂しそうにじっと見つめています。ふと気づいたエレナは気もそぞろで通訳どころではない…、と見えたんですが、この時、エレナが訳した(台詞)言葉、なんか意味ありげだったように思うんですが、まったく記憶できていません。大した意味がなかったのかどうかも含め気になります。

 

とにかく、エレナが法廷を出て父親を探しますと、ロレンツォはベンチに肩を丸めて座っています。エレナはそっと隣に座ります。しばらくあり、ロレンツォがおもむろにエレナの手に自分手を重ねます。エレナはロレンツォの手を優しく握り返します。

 

と、言葉で書くほどベタではありません。適当な言葉が見つかりませんが、穏やかで静かな感じで終わっています。

 

で、最初に焦点が定まらないと書きましたが、父娘関係以外にもいろいろな要素が散りばめられています。

 

娘エレナは、ロレンツォが言うには、エジプトに留学し妊娠して帰ってきており、現在10歳くらいの息子をもつシングルマザーです。仕事は法廷での通訳、おそらくアフリカからやってくる移民の通訳が主な仕事なんでしょう。冒頭のシーンで、アフリカ系の男性の申し立てを訳していましたが、彼は嘘を言っていますと付け加えていました。

 

ミケーラの夫は人間関係に悩んでいる風です。一家心中を図るくらいですから悩みの領域ははるかに超えているのでしょうが、具体的なことが示されていませんのでどういうことなのかはわかりません。一家で出掛けた際にアフリカ系の物売りにしつこく付きまとわれキレていました。

 

ロレンツォには息子がいますが完全に没交渉のようです。経営しているクラブがうまくいっていない(と公式サイトにある)らしく、エレナのお金をちょろまかしたりしています。あれもよくわからないシーンです。

 

ロレンツォの元愛人をエレナが訪ねるシーンがあり、台詞は忘れましたが、ロレンツォについてかなりぼろくそに言わせていました。

 

というような、とにかく皆わかりあえない人たちばかりが出てくる映画です。本当は、もっとはっきりそこらあたりに焦点が合わされていればとてもいい映画だと思いますが、何度も言いますように映画の視点が俯瞰的ですので印象が薄い映画になっています。ただし高みから見ている感じではありません。

 

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