「見えない目撃者」(ネタバレ)吉岡里帆のなつめよりも犯人が主役のようだ

この映画が2011年の韓国映画「ブラインド」のリメイク版だというのは知っていたんですが、「見えない目撃者」でググりますと、この映画ともうひとつ同じタイトルでGAGA版がヒットします。なんと、2015年の中国版までありました。

それだけ基本的なプロットに皆がひかれるということなんでしょう。

 

見えない目撃者

見えない目撃者 / 監督:森淳一

 

確かに物語はおもしろいです。ハリウッドが飛びつきそうにも思うのですが、そんな話はなかったんでしょうか。

 

(超)優秀な成績で警察学校を卒業したなつめ(吉岡里帆)は、卒業したその日に自身の過失で交通事故を起こし、同乗していた弟を失うとともに自らの視力もなくします。

三年後、何とか後悔や呵責の念から立ち直ったなつめは盲導犬の助けを得て自由に外出できるまでになっています。ある日、なつめはスケボーの高校生と車の接触事故現場に出くわし、その車の中から女性が助けを求める声を聞きます。そのことを警察に訴えるも視覚障害ゆえに「見えない」だろうとの先入観からなかなか聞き入れてくれません。

 

そのなつめが、警察学校で身につけた鋭い観察力と「見えない」がゆえに研ぎ澄まされた聴覚、嗅覚を駆使して拉致されたその女性を救出するという物語です。

 

ということで、なつめのある種スーパーウーマン的な能力が発揮されるところを期待して見に行ったのですが、残念ながら、聴覚、嗅覚、触覚が生かされているところはほんの僅かで割と一般的なサスペンスドラマでした。

 

視覚障害者ゆえのなつめの能力が発揮されるのは、接触事故の高校生のスケボーの音を聞き分け、その車の運転手からアルコールの匂いを嗅ぎ取り、運転手がわざわざ音楽を大音量にしている中から女性の声を聞き分けて警察に訴えるシーンくらいだったと思います。もちろん細かいところではいろいろあったのですが、映画の軸はむしろ女性拉致事件の異様さの方へいってしまっています。

 

拉致された女性は風俗系で働く家出高校生らしいということがわかり、その足取りを追ううちに容疑者と思われる男の住居から四人の女性の遺体が発見されます。その男は薬物の過剰摂取ですでに死亡しているのですが、殺害された女性たちはそれぞれ、口、鼻、耳、手が切除されているのです。もちろん男は犯人ではありません。

 

で、この異常な連続殺人事件をなつめが解き明かしていくということであれば、それもまたおもしろいのですが、むしろこのあたりになりますと刑事のほうが全面に出てきています。木村刑事(田口トモロヲ)と吉野刑事(大倉孝二)です。

吉野は退職間近ですので勤務も消化試合みたいなもので上司にも内緒でなつめと連絡を取り合い犯人を追い詰めていきます。木村の方はやや曖昧な立ち位置に置かれており、いやいや吉野に付き合わされているようにも描かれています。

 

おそらくつくり手の指向としてはそれぞれの人物像を大切にしようとしたんだと思いますが、結果としてあまりよい方へはいっていないように思います。人物をしっかり描くことを軸にするのであれば、やはり中心となるなつめの視覚障害者としての人物像をもっと深めないと映画が散漫になってしまいます。

 

サスペンスを売りにするのか、人物のつくり込みを売りにするのか、どちらかにはっきりさせたほうがよかったように思います。この映画、かなりツッコミどころが多いのですが、サスペンスを売りにするのであればどうつくっても突っ込みどころが多くなりますので、むしろそれを逆手にとってあざとさギリギリのところで突っ走らないと面白くありません。これだけつくりがオーソドックスで真面目ではごく普通のサスペンスドラマから抜けきれません。ああ、そんな気はなかったのかな(笑)。

 

で、結局、クライマックスは、なつめが犯人に追われて逃げ惑うところではらはらどきどきさせるということになっています。

 

なつめを助けるのはスケボーの高校生春馬(高杉真宙)です。

犯人がなつめを襲います。なつめの盲導犬が傷つけられ、なつめは「眼」を失った状態になります。変わって春馬とのビデオ通話がなつめの「眼」となります。

 

このシーンはイマドキでなるほどとは思いますが、それよりも誰もいない無人の地下鉄や街中を逃げ惑うことや犯人がなに戸惑うことなく悠々とナイフを持って追いかけてくることの違和感が先にたち、緊迫感も盛り上がりません。

 

続く犯人が女性たちを監禁しているアジトのシーンももたもたします。まずは木村刑事の見せ場をつくり、そして木村がやられた後はいわゆるサスペンスものの定型が続きます。

結局、当然ですが、犯人の目的が達成されることはなくなつめに射殺されて(いいのか!?)しまいます。

 

で、最後の春馬のセリフが、この映画のやろうとしたこと、そしてそれが結局映画が中途半端に終わった原因であることであるを示しています。

なつめの亡くなった弟は姉には素直ではあるけれどもどこか自分を持て余しているのか危ういところがある少年でした。誘拐拉致された少女たちは家出するも親から捜索願が出されることもなくネットカフェで暮らし風俗の世界で生きています。春馬はと言えば、真面目な少年ですが、描き方としてはスケボー命というわけでもなくただ何となく日々を過ごしているようです。その春馬が最後になつめに言います。

 

「オレ、警官になれるかな?」

 

あまりにも少年少女たちのとらえ方がステレオタイプでしょう。

 

多くの人が描いてみたくなるこのプロットは、もっとスパッと切れのいいサスペンスものとして描くべき題材だと思います。見ていませんが、あるいはその点ではオリジナル、あるいは中国版のほうが面白いのではないかと思います。

 

おまけです。

犯人の意図は六根清浄を目的とする儀式殺人です。ただ、犯人自身はただ人を殺すことが楽しかったというようなことを言っていました。結局詰めきれず中途半端にしてしまっています。それに、これじゃ犯人が立ちすぎています。

 

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