レット・ザ・サンシャイン・イン

中年の恋愛を不倫系悲恋ではなく描けるのはフランスだけ

「カイエ・ドゥ・シネマが選ぶフランス映画の現在(名古屋シネマテーク)」という企画上映の一本で、ジュリエット・ビノシュさんが主演の映画です。

レット・ザ・サンシャイン・イン

レット・ザ・サンシャイン・イン / 監督:クレール・ドゥニ

「レット・ザ・サンシャイン・イン」と言えば「ヘアー」の「Aquarious〜Let The Sunshine In / 輝く星座」(フィフス・ディメンション)なんですが、なにか関係があるのでしょうか?

原題は「Un beau soleil intérieur」ですので、フランス語はわからないにしても何となくニュアンスが違うように感じられ、IMDbを見てみましたら、アメリカでの公開時にこのタイトルがつけられたようですね。World-wide (English title) (festival title) Bright Sunshine In というものもあり、直訳的な英訳はこちらなんでしょう。

映画を見ても「ヘアー」とは全く関係がありませんでした。アメリカ公開(小規模?)時の宣伝のためでしょうか。

で、映画ですが、これ、アメリカでやっても興味持たれないんじゃないの? と思うような、フランス人しか撮らないでしょうし、フランス人しか見たいと思わないのではないかというタイプの映画です。

年齢的には40代くらい、50歳前後?の設定でしょうか、イザベル(ジュリエット・ビノシュ)が、何かははっきりしませんが渇望感にとらわれてそれを探し求める姿を追い続けています。

結局、それが「愛」を求めているということで映画は進み、銀行員の横柄な、ややもすればストーカーになるんじゃないかという粘着質の男、イザベルは画家なんですが、その同業の男、あるパーティーで出会った、いわゆる住む世界が違うといわれる男、元夫の男、そして、これは手を握り合いキスをするだけですが別の同業の男…、といった具合にそれぞれとの関係が描かれていきます。

ただ、描かれていくといっても、ほとんど表面的な描き方でしかありませんので、イザベルがどういう人物で何に渇望しているのかは全くみえてきません。

ですので、公式サイトの解説にありますように「真実の愛を求めて」いると言われて見ればそう見えるかもしれませんし、寂しいだけじゃないのと言われればそうとも見えるという映画で、率直なところ、(クレール・ドゥニ監督が見ている)フランス人の人間関係ってこの程度かと思えるような映画です。

ラスト、突然、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキさんとジェラール・ドパルデューさんが車の中で、あれは別れ話?みたいな会話があり、続いてこれまた突然、イザベルがその男(ジェラールさん)から占い師みたいなアドバイスを受けているシーンになり、あれは何? 男はイザベルは口説いていたの? と、よくわからないままに終わっていました。

それにしてもこの年代の恋愛ものをこんなふうに淡々と描けるのはフランスだけですね。アメリカなら「マディソン郡の橋」、日本なら「失楽園」といった具合に、不倫系悲恋ものにしかなりません(笑)。

ところで、クレール・ドゥニ監督ってよく知りませんのでググってみましたら、「High Life」という SFの新作が出来上がっているらしく、日本で公開されるかどうかはわかりませんが、この映画のセンスで SFを撮れば、あるいは面白いかもと期待させる話題ではあります。

この企画上映の次の作品が「ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期」というフィリップ・ドゥクフレの振り付けのダンス映画だったようで見たかったのですが、時間が合わず残念でした。DVD出ないかな? 出ないよね。