「ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏」(ネタバレ感想)見るべきはクリステン・スチュワートのみ(かな?)

おお、J.T.リロイが映画化(ドラマ化)されたんだ! という感じです。

というのは、2年半くらい前に「作家、本当のJ.T.リロイ」という映画(ドキュメンタリー)を見て、「映画としては面白くありません。わたしなら劇映画にしますね。それだけ内容は面白いです。」とまとめたことのある題材です。それに、なんといっても J.T.リロイを演じるのがクリステン・スチュワートさんですので見逃すわけにはいきません(笑)。

 

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏

ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏 / 監督:ジャスティン・ケリー

 

J.T.リロイ、ジェレミア・ターミネーター・リロイ(Jeremiah Terminator LeRoy)、今これを読まれている方に J.T.リロイとは何者かなど説明する必要はないと思いますが、簡単にいいますと、センセーショナルな自伝的小説『サラ、神に背いた少年』で世に出た金髪、サングラスの美少年作家が、実はローラ・アルバートという女性の替え玉だったという、1999年くらいから2006年あたりに起きたアメリカの騒ぎです。

 

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映画『作家、本当のJ.T.リロイ』予告編

 

左がローラ・アルバートさん、「作家、本当のJ.T.リロイ」のプロモーションで来日しておりインタビュー記事がいっぱいあります。

 

なぜ大騒ぎになったかは、もちろん偽っていたというその事実があるのですが、それ以上に、いわゆる(セレブな?)業界人、「アーシア・アルジェント、ウィノナ・ライダー、コートニー・ラヴ、マリリン・マンソン(ウィキペディア)」といった人たちが J.T.リロイをもてはやし、今で言えばバズり、それがその後実在しない存在だったとわかるや、怒る人やら後味の悪さに沈黙する人が出たりということからなんだろうと思います。

 

ある意味、現在社会の有り様の核心をついている出来事ということです。ローラ・アルバートさんの言葉「私が J.T.リロイだと表に出ていれば注目されなかった(こんなような意味の言葉)」につきます。

 

で、映画です。

クリステン・スチュワートファンとしてはまあいいかとは思いますが(笑)、映画としてはなんだかぼんやりしています。どこにも焦点が合っていない感じです。

 

この事件の何にフォーカスしてドラマにするかと考えれば、騙す側の心理しかないと思います。確信犯的に描けば騙される側の馬鹿さ加減が見えてくるでしょうし、軽い気持ちで始めたがものが大事になっていくのであれば、戸惑いやら不安やら、ふたりの諍いやらと描けることはいっぱいあります。

 

なのにこの映画は、J.T.リロイの表の顔サヴァンナ(クリステン・スチュワート)の愛情物語にしてしまっています。わけがわかりません。

 

こういうことです。

すでに『サラ、神に背いた少年』はベストセラーとなっています。その作者であり、J.T.リロイの裏の顔となるローラ(ローラ・ダーン)は、恋人のジェフの妹サヴァンナを J.T.リロイの表の顔にすることを思いつきます。

ローラはテレフォンセックスで鍛えた話術を駆使して、電話で J.T.リロイを演じて映画化の交渉を進めています。その相手はエヴァ(ダイアン・クルーガー)です。

 

エヴァは、実際に映画化された「サラ、いつわりの祈り」の監督、主演のアーシア・アージェントをモデルにした人物だと思います。

 

エヴァは映画化の権利が欲しいためにサヴァンナに積極的に迫ります。サヴァンナは次第に(はみえないんだけど)エヴァに惹かれていき、あるパーティーで性的関係を持ちます。

 

サヴァンナは(これといったはっきりした描き方はされていないけれど)一旦、表の顔をやめます。しかし、エヴァのことが忘れられなくなり、ふたたび J.T.リロイ表の顔に戻り、撮影現場のエヴァに会いに行きます。しかし、エヴァは別の男と一緒です。

 

サヴァンナはショックを受け(というほどではない)再び日常に戻ります。

 

映画が完成しカンヌで上映されることになります。エヴァを忘れられないサヴァンナはローラに気持ちを確かめに行ったらとそそのかされカンヌに行きます。

 

で、どうなっていましたっけ? いずれにしてもエヴァはそっけなかったですし、サヴァンナもこれといったことはなかったと思います。

 

というラブストーリー(?)とは関わりなく、サヴァンナが J.T.リロイその人全部ではないことがバレてしまいます。

 

なんじゃこりゃ? といった映画です。

 

そして、その数年後のシーンがラストにくっついており、ローラがローラ自身として読書会を催しているシーンがあり、そこにサヴァンナがやってきて、自分も小説を書いているようなことを言って終わります。

 

しょうもないことを強調して書きましたが、それでも一応、たとえばサヴァンナには J.T.リロイ表の顔を演じることに創造性を感じるようなことを言わせていましたし、ローラには自分になるならないとかそんなようなことを言わせていました。

 

ただ、この映画のローラはイケイケすぎます。それも、始めたから進むだけという単純なイケイケです。迷いもありませんし、サヴァンナが途中でやめると言ってもさしたる抵抗もしません。J.T.リロイのマネージャー業を嬉々としてやって楽しんでいましたし、とにかく、始終ハイテンションで立ちすぎています。

 

もう一方のサヴァンナ、クリステン・スチュワートさんゆえの存在感はありますが、あのローラとではバランスが悪すぎます。あのローラの言われるがままに動くキャラじゃありませんし、かといって J.T.リロイ表の顔を楽しめるほど空虚じゃありません。いるだけで存在感のある俳優です。

 

この映画が何を狙ったのかははっきりしませんが、つくりとしては、どこか冷めた視点が感じられ、コメディとは言えないまでも、ちょっと茶化し気味な印象があります。

あと、エヴァが撮影現場で男どもが思うように動かないと嘆くところがかなり強調されていました。

 

いずれにしても、サヴァンナ、ローラ、どちらかに視点を絞るべきでしたね。

 

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