一度死んでみた

ボケとツッコミ連発、イマドキの軽やかな映画

すでに映画館が再開されてから10日ほど経ちますが、いっこうに新作が公開されません。東京で再開されなければ新作は公開されないということです。

そうしたことでもなければ見なかったであろう「一度死んでみた」を見てきました。

一度死んでみた

一度死んでみた / 監督:浜崎慎治

いろんな意味でおもしろかったです。よくできています。すきがありません。

物語はオーソドックスな親子ものにギャグで色付けしたもの、いや、逆ですね、ギャグを見せるための映画で、それじゃ持たないだろうということで物語の軸に親子ものを持ってきているのだと思います。

ですので、監督以下制作者のセンスと俳優のノリが全てです。

広瀬すずさん、吉沢亮さん、堤真一さん、小澤征悦さんの4人で物語を進めていきます。

製薬会社の社長である野畑(堤)は研究一筋の男で、一人娘の七瀬(広瀬)を研究者にしたいと思い、子どもの頃から元素記号を教えるなど親の押しつけを愛情と勘違いしています。が、そういう映画ではありませんので、突っ込みどころではありません(笑)。

七瀬は高校生くらいからでしょうか、そんな父親に反抗し、21歳の今はヘビメタ系のバンド「魂s」のヴォーカルをやっています。父親に対して、クサイ!だの、死ね! だのを連発する日々です。

母親(木村多江)は亡くなっています。父がその死を看取ることなく研究を選んだことも七瀬が父親を嫌う理由です。が、そういう映画ではありませんので、父娘間の愛憎物語にはなるわけではありません(笑)。

野畑は七瀬のことが心配ですので社員の松岡(吉沢)を監視役につけています。と言ってもストーカートラブルなど起きません(笑)。今どきの若者ですので距離のとり方が爽やかです。

野畑の会社は若返りの薬ロミオを開発中です。ライバル会社の社長(嶋田久作)は、野畑の会社に渡部(小澤)を送り込んで乗っ取りを企てています。

というのが物語のベースであり、そのロミオの開発中に研究者の藤井(松田翔太)が二日間だけ死ねるという薬ジュリエットを開発したことからてんやわんやの騒動が起きるという話です。

言葉の綾で「てんやわんや」と書きましたが実はそういう映画ではありません。

この映画は、コメディのひとつのパターンであるてんやわんや、ドタバタといったイメージのものとは違います。ほとんどのシーンが、いわゆる漫才の「ボケとツッコミ」で作られています。登場人物の誰がボケ役で誰がツッコミ役と決まっているわけではありません。ある時は七瀬がボケて松岡が突っ込んだり、またその逆もありというパターンです。

テレビのお笑いやバラエティを全く見ませんので間違っているかも知れませんが、最近のお笑いは漫才であっても役割がはっきり決まっていないように感じます。皆がボケ、皆がツッコむみたいなパターンに変わってきているように感じます。

それがあっているかどうかは別にして、この映画はそういう映画です。ですので、とにかく重要なのは間合いです。俳優同士もそうですし、編集もそうです。

そういう意味で、この映画はすきがありません。軽やかです。

監督の浜崎慎治さんのプロフィールを見てみますと、

1976年生まれ、鳥取県出身。CMディレクター。手掛けた主なCMにKDDI/au「三太郎」、日野自動車「ヒノノニトン」、家庭教師のトライ「ハイジ」、花王「アタックZERO」など。ACCグランプリ、ACCベストディレクター賞、広告電通賞優秀賞、ギャラクシー賞CM部門大賞など受賞多数。これまでに100作以上手掛けた「三太郎」シリーズはCM好感度5年連続1位。(CM総合研究所調べ。14-18年度)。本作が映画初監督作となる。(公式サイト)

脚本の澤本嘉光さんの方は、

1966年生まれ、長崎県出身。CMプランナー/クリエイティブ・ディレクター。東京大学文学部卒業後、電通に入社。ソフトバンク「白戸家」シリーズ、東京ガス「ガス・パッ・チョ!」シリーズ、トヨタ自動車「ドラえもん」シリーズ、家庭教師のトライ「ハイジ」など数々のヒットCMを担当。JAAAクリエイター・オブ・ザ・イヤー、カンヌ国際広告祭銀賞など国内外の受賞多数。東方神起などの楽曲の作詞のほか、乃木坂46などのPV制作、コラム執筆、小説執筆など多方面で活躍。映画脚本は『犬と私の10の約束』(08)、『ジャッジ!』(14)に続き本作が3作目。(公式サイト)

となっています。

なるほどという感じがします。

脇のキャスティングも軽やかです。妻夫木聡さんは野畑の告別式会場となるホテルの支配人役でそれなりに出番があり楽しそうにやっていましたが、佐藤健さんはクラブのボーイのちょい役でぼんやりしていると見逃してしまうくらいの出番です。

こういうキャスティングは今どきのCMノリですね。

他に目立つところでは三途の川の渡し守役のリリー・フランキーさん、七瀬を(最後には)スカウトしようとする音楽プロデューサーにハウンドドッグの大友康平さん、それに宇宙飛行士の野口聡一さんまで登場させていました。

とにかくこうした軽やかなノリが現代的という映画です。

で、物語は、野畑がジュリエットを飲んで一度死んだその二日間に焼いてしまおうという渡部たちと、それを阻止しようという七瀬、松岡組の争い(という感じではない)が二転三転し、当たり前ですが最後には野畑が無事に生き返り、その二日間で父娘がそれぞれに知った本心から互いに認め合うということになりハッピーエンドで終わります。

広瀬すずさんは何をやっても広瀬すずさんという吉永小百合さん系のスターだなあと再認識、吉沢亮さんはいい感じとはいえ、この年代の男性俳優は層が厚いので大変そう、その他の俳優さんは皆楽しそうにやっていました。

あまりに軽やか過ぎて(私には)気分爽快といかない映画ですが、どうなんでしょう、今はこういう映画がウケるのでしょうか。

広瀬すず2020カレンダー<卓上タイプ> ([カレンダー])

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  • 発売日: 2019/11/15
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