「グレタ」(ネタバレ)イザベル・ユペール恐るべし!

イザベル・ユペール恐るべし!

そういう映画です。タイトルも「グレタ」ではなく「イザベル」でいいと思います(笑)。

とにかく、映画がどうこうよりも、イザベル・ユペールさん、無茶苦茶楽しんでるやんと言うしかありません。軽やかにダンスしながら探偵を撃ち殺すところなんて、もう、笑うしかありません。

 

グレタ

グレタ / 監督:ニール・ジョーダン

 

フランスの俳優さんで言えば、カトリーヌ・ドヌーヴさんはその存在感において間違いなく大女優(大俳優)ですが、イザベル・ユペールさんはその軽やかさにおいて他に並びない大女優です。さらに言えば、ドヌーヴさんはいることで映画が締まりますが、ユペールさんは映画を乗っ取って自分の映画にしてしまいます。

 

私はそれを「エル ELLE」から強く感じるようになりました。

 

不思議なんですよね、映画の始まりは確かにグレタ・ハイデッグを演じているイザベル・ユペールさんなんですが、映画の最後の方になるとグレタを演じることを楽しんでいるイザベル・ユペールさんになっているんです。それでいてまったく違和感がないのです。

 

基本、物語はサイコ・スリラーです。でも、ユペールさんによってコメディーにされてしまっています(笑)。茶化して言っているわけではありません、ユペールさんの異常っぷりに本当に笑えてくるのです。

 

フランシス(クロエ・グレース・モレッツ)は仕事帰りの地下鉄で忘れ物のバッグを見つけます。身分証からその住所に届けますと、持ち主はグレタと名乗ります。母親を亡くしたばかりのフランシスはグレタに母親の面影(みたいな感じ)を見て親しく付き合うことになります。ところが、忘れ物のバッグは若い娘をおびき寄せるためのグレタの策略で、それに気づいたフランシスはグレタから逃れようとします。

 

グレタのつきまといが始まります。ストーカーぶりはどんどんエスカレートし尋常ではなくなっていきます。そして、ついにフランシスは監禁されてしまいます。

 

グレタとは一体何者かは、グレタの娘の友人の話とフランシスの父親が雇った探偵の話として明らかにされます。

グレタはハンガリー人(なぜハンガリーなの?)の看護師で、麻酔薬を打ち過ぎて(誰に?よくわからなかった)精神に異常をきたしたということです。娘がいたらしく、これまたよく分からないけれど、ピアノを教え込むために監禁するなどの虐待をしていたようです。

 

結果としてユペールさんでもっているのでいいのですが、このあたりのストーリーづくりはかなり適当です。普通に撮っていたらつまらない映画だったと思います(ペコリ)。

 

事の顛末のラストは、フランシスの友人エリカ(マイカ・モンロー)が、グレタのバッグ作戦を逆手にとって近づき、グレタを眠らせ、フランシスを救い出し、グレタを箱に監禁して終わります。エッフェル塔のミニチュアで箱をロックしていましたので、監督にもコメディーの意識はあったのでしょう。

 

このラストシーンは、何だか慌ててオチをつけたみたいな感じで終わっていました。

 

ということで、サイコ・スリラーとしてのストーリーにさほど新鮮なところはないと思いますので、後はいかに恐怖を演出するかがこうした映画の一般的な手法かと思います。この映画でも、効果音やカットの切り替えでドキッとさせる手法が使われてはいます。

 

でも、この映画、その手の怖さはありません(笑)。

 

怖いのはイザベル・ユペールさんです。普通なのに怖いのです。ただ通りの向こうに立っているだけなのに怖いのです。ただ普通に後ろをついてくるだけなのに怖いのです。

 

ワンシーンだけ、普通の顔をして(笑)興奮状態になるシーンがあります。フランシスがギャルソン(女性はセルヴーズというらしい)として働いているレストランに来て、フランシスの拒絶に対してワイングラスを割り、テーブルをひっくり返し、皆に取り押さえられます。ここも笑いどころです。

 

前後を忘れてしまいましたが、フランシスが逆にグレタに謝罪をして難を逃れようと策を講じたシーンだったと思いますが、ふたりで料理の途中、型抜きの道具でフランシスがグレタの指を切断します。そしてグレタは自ら切断した指に麻酔の注射をします。ニール・ジョーダン監督も、これはもうコメディーにするしかないと思ったのでしょう。吹き出していいシーンです。

 

そして、なんといってもフランシスの父が雇った探偵とのシーンは圧巻です。本来であれば狙いではないのでしょうが、この映画のクライマックスとも言えます。

家の中にフランシスを監禁しているにもかかわらず、訪ねてきた探偵を何の迷いもなく招き入れます。細かい流れは忘れました(笑)が、あっけなく探偵は麻酔の注射を打たれてしまいます。

そこからです、グレタはリストの愛の夢(だったと思う)にのって軽やかにステップを踏みながら普通の表情をして探偵を撃ち殺すのです。あんぐり口があいてしまいます。

 

と、完全にイザベル・ユペールさんの映画になった瞬間でした。

 

クロエ・グレース・モレッツさんの存在感の薄さがそれを示しています。

 

ニール・ジョーダン監督は「クライング・ゲーム」が代表作としてあげられるようですが、私には「プルートで朝食を」や「マイケル・コリンズ」が印象深く残っている監督ですので、こういう映画を撮る監督なんだと結構新鮮ではありました。

 

それにしても、「恐るべし、イザベル・ユペール!」

 

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