「ぶあいそうな手紙」(ネタバレ・レビュー)ブラジルからハートウォーミングな物語

男が、はっきりと人生の残り時間を自覚し始めたとき夢見るファンタジーです。

 

ぶあいそうな手紙

ぶあいそうな手紙 / 監督:アナ・ルイーザ・アゼヴェード

 

実はこの映画、見てからもう2週間くらいは経っています。最近は見る本数も増えてきていますので見たらその日か次の日にはなにか書き残すようにしていますのでこういうケースは珍しいです。

 

映画としての出来はいいと思います。でもなぜか残るものがないんです。

 

多分、物語としてまとまりすぎていて欠けるものがありませんし、ああ、みんなうまくいってよかったねと終わってしまうからだと思います。

 

物語の背景を公式サイトのストーリーから書き手の思い込みを除いた映画的事実だけ引用しますと、

ブラジル南部、ポルトアレグレの街。エルネストは78歳の独居老人。隣国ウルグアイからやって来て46年。老境を迎え、ほとんど目が見えなくなった。ある日、一通の手紙が届く。差出人はウルグアイ時代の友人の妻。エルネストは、偶然知り合ったブラジル娘のビアに手紙を読んでくれるように頼む。「手紙の読み書き」のため、一人暮らしのエルネストの部屋にビアが出入りするようになる。
ワケありのビア、隣人ハビエル、昔の友人の妻ルシア、息子のラミロ……。エルネストが最後に宛てた手紙の相手は?

ということです。

 

エルネストはサンパウロで暮らす息子から同居を求められていますが断っています。特別な理由はなくただ今さら動きなくないということだと思います。視力はかなり落ちていますが、日常生活に困る様子はなくやや危なっかしくはあっても外出することも厭いません。

 

ですのでエルネストにこの先の(大きな)不安があるようには描かれていません。なんとかなるさくらいの感じに見えます。

そこにウルグアイ時代の友人が亡くなったとその妻ルシアから手紙が来ます。

エルネストと友人とルシアはある種三角関係だったのでしょう。映画の後半になり、ビアに誘われるようにエルネストはルシアと一度寝たことがあると告白します。

ビアに助けられて手紙をやり取りするうちに、ルシアも再会を望んでいることがわかり、映画のラスト、エルネストは生まれ故郷のウルグアイに戻りルシアとの再会を果たします。

 

映画では描かれませんが、おそらくエルネストとルシアは一緒に暮らすことになるのでしょう。

 

よかったねというほかありません。

 

エルネストが住まい(共同住宅)のエントランスで出会うビアは気さくで人懐っこい20代の女性です。多分家なしです。しょうもないDV男と付き合っておりその男から借金をしています。

エルネストは視力が衰えていますので手紙の読み書きをビアに頼みます。エルネストの部屋に出入りするようになったビアは鍵を盗み合鍵をつくり、忍び込んでお金を盗みます。

この映画がファンタジーたる所以ですが、エルネストはそうしたビアの行為を見て見ぬ振りをします。当然ビアは改心してお金を返し自分の行為を告白(ごめんね程度)しますのでことはうまく収まります。

ある日、ビアが目のまわりに痣をつくって現れます。エルネストは事情を察してビアを家に泊めることにし息子の部屋を自由に使っていいと鍵を渡します。

そうしたある日の朝、ビアとともにDV男が部屋から出てきます。こうした時のビアの悪びれたところのない表情には演出意図をはかりかねますが、とにかく何事もないかのようにやり過ごすエルネストです。

その日であったか、後日であったか、DV男が怒鳴り込んできます。エルネストはおもちゃの拳銃(モデルガン)で撃退します。

ビアがDV男に借金していることを知ったエルネストは息子に部屋の修理代が必要だと嘘を言いお金を工面しビアに渡します。

ラスト、エルネストは住まいをビアに託してウルグアイに向かいます。

 

よかったねビア、ということで終わります。

 

ルシアとのことはファンタジーとは言えあり得なくないと思いますが、さすがにビアの方はこんな娘がいたらいいなあという男の妄想でしょう。ただし監督もプロデューサーも女性です。

 

同年代の隣人ハビエルは妻を亡くし、息子であったか娘であったか子どものもとに引っ越していきます。

 

邦題の「ぶあいそうな手紙」の直接的な意味は、エルネストがルシアへ最初の手紙を書こうとした時、あまりにも堅苦しく「ぶあいそう」な書き出しであったのをビアの助言でエルネストの思いが伝わる手紙になったことから逆説的(否定的な言葉なのにという意味)な注目をねらったものだと思います。

公式サイトのストーリーの最後の振り「エルネストが最後に宛てた手紙の相手は?」も同じ意図からのものでしょう。

 

最後にエルネストが書いた手紙は息子ラミロにあてたもので、生まれ故郷のウルグアイに行くとのエルネスト最後の決断を告げたものです。

 

原題はポルトガル語の「Aos olhos de Ernesto」で、英題は「Through Ernesto's Eyes」です。

 

確かに手紙は映画の重要な要素ではありますが、おそらく制作者にはそうしたオチ的な意味合いをもたせる意識はなく、むしろエルネストが視力を失ったことでみえるものがあるということがこの映画のポイントなんだろうと思います。

 

ところで、ウルグアイと言えば「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれたホセ・ムヒカさんの国です。