そんなには褒めないよ。映画評

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「アメリカン・アニマルズ」(ネタバレ)犯人たち本人が登場する実録貴重本強奪事件か??

映画の冒頭、「This is not based on a true story.」と出ます。即座に「not based on」に取り消し線が引かれ、そして取り消された文字が消えてしまいます。残るのは「This is a true story.」、これは実話であると言っています。

 

アメリカン・アニマルズ

アメリカン・アニマルズ / 監督:バート・レイトン

 

2004年、4人の学生がケンタッキー州トランシルヴァニア大学の図書館から時価1200万ドル(公式サイトによる)の本を盗もうとした事件があったそうです。目的の本は、ジョン・ジェームズ・オーデュボンの画集『アメリカの鳥類』だったんですが、その本は持ち出せず、ダーウィンの『種の起源』の初版本(じゃないかも?)ともう一冊を盗み出したようです。

 

その事件を、当人たち4人のインタビュー映像を交えながら、俳優によるドラマをみせていくという映画です。冒頭の実話云々は、俳優によるドラマ部分にもつくりごとはないよという意味なんでしょう。

 

という映画なんですが、率直なところ、その手法、成功していません。

 

事前によほど詳細に情報を入れて見るならまだしも、何も知らずに見たら誰が誰の役をやっているのかさえ、しばらくは整理しきれません。ましてや話している内容など頭に入ってくるわけがありません。

 

煩雑で映画に集中できません。そんな手法でこれが実話なんだよというよりも俳優がリアリティをもって演じればよほど実話と理解されると思います。映画ってそういうものです。

 

まあ、奇を衒いすぎということでしょう。

 

で、どんな映画かといいますと、まずは事の発端、なぜその画集を盗もうと思ったのかから描かれます。が、実はそれがよくわかりません(笑)。世の中には物の弾みということもありますが、それほど弾けてもいません。とにかく、そういうこともあるよねと思えるほどにも描かれていません。

 

スペンサー(バリー・コーガン)は、絵を描くのが好きな学生です。面接(入学のかな?)で自分の将来の目標を尋ねられてもうまく答えられません。何かやってみたいけれども何をやっていいのかわからないという段階なんでしょう。

 

ウォーレン(エヴァン・ピーターズ)はスポーツ奨学生として入学したようです。ただ、そうした描写は一切なく何のスポーツかもわかりません。こういうところが映画をつまらなくするんですが、とにかく、練習にも行かなくなっているようで、スペンサーを伴って肉屋から肉を盗んだりして憂さを晴らしています。

 

こうしたドラマの間に本人たちのインタビュー映像が(いちいち)挿入されます。

 

ある時、スペンサーは図書館で『アメリカの鳥類』を見てそれに魅せられます。ただこれもそれゆえに欲しくなるような執着があるわけではないようで、そのことをウォーレンに話したことから強奪計画が進んでいきます。

 

残る二人は、エリック(ジャレッド・アブラハムソン)とチャールズ(ブレイク・ジェナー)、ともにウォーレンに誘われ、簡単に仲間に入ってしまいます。

 

人間、こんなに簡単に犯罪行為に加担できるものか!? と驚くくらいです。展示室の司書をスタンガンで気絶させ、1200万ドルのものを盗もうというのにです。

 

これは、A true story にこだわるあまり、ことの本質をみていないんじゃないですかね。目に見えるところはそんなものかも知れませんが、そこにいたる人間の内面を見ようとし、また見せていくのが映画じゃないんでしょうか。ドラマを描くことは、何もオーシャンズとかのような描き方だけではありません。

 

ただ、こうした手法もいいように取れば、軽々しく勢いでやってしまうと後で後悔するよといった教訓的な意味はあるかもしれません。

 

で、いよいよ決行日、これ以降は、こいつらバ◯じゃないの? と思わせるようにつくられています。

 

4人全員、60歳くらいに変装して図書館に向かいます。誰がどんな役割なのかもよくわかりません。これ、本当にこんな風に乗り込んだんですかね? これこそ作り物じゃないかと思います。

 

とにかく、展示室に行ってみますと、通常は司書はひとりなのに、なぜか4人もいます。ウォーレンがびびって中止になります。皆、ああよかったと胸をなでおろします。

 

しかし、ウォーレンが明日の(閲覧の)予約を入れたと再挑戦を宣言します。スペンサーがおりると言い出します。結局、スペンサーは外からの見張り役、って何を見張ってどうやって連絡するの?とは思いますが、少なくとも一回目よりはそれぞれ役割が決まっています。チャールズは外で逃走用の車に乗って待機、まずウォーレンが展示室に入り、司書を拘束、エリックを呼んで本を持ち出すという段取りなんでしょう。

 

事の顛末を細かく書いても意味がありませんので、強奪計画の結末だけ書きますと、ウォーレンとエリックで『アメリカの鳥類』を持ち出すも、予定の地下からは出られず、一般の閲覧室を通り、なぜかわからないけれども地下に降りようとして階段で本を落とし、そのまま逃走します。

『アメリカの鳥類』は持ち出せなかったのですが、『種の起源』ともう一冊を持ち出しており、これをまたバ◯じゃないの? と思える行動を取り、サザビーズのようなニューヨークのオークション会社に持ち込みます。

 

当然、全員逮捕されます。この逮捕シーンだけは、暗闇にFBIのハンディライトが交錯する中、4人が逮捕されるという、ここだけ妙にドラマチックなつくりになっています。

 

そして、当人たち4人の後悔するインタビュー映像が流れて終わります。皆7年余り収監されていたようで、それぞれ現在どうしているかがスーパーで流れていました。

 

強奪の顛末の、いわゆるクライマックスにはインタビュー映像は挿入されていません。結構テンポよくドラマチックに、4人のバ◯さ加減が浮き彫りになるようにつくられています。であるなら、全編そのようにつくり、冒頭とラストに本人たちのインタビュー映像を入れるなど、ありきたりだとしても、その方がよほど A true story として伝わるのではないかと思います。