「ゴッズ・オウン・カントリー」ネタバレレビュー・あらすじ:ジョシュ・オコナーの存在感に尽きる

映画関連サイトでよく目にする「ゴッズ・オウン・カントリー」、いまだ見ておらず、ずっと気になってはいたのですが、先日「アンモナイトの目覚め」を見た機にやっと見られました。

フランシス・リー監督、2019年の映画です。

 

ゴッズ・オウン・カントリー

ゴッズ・オウン・カントリー / 監督:フランシス・リー

 

 

ジョシュ・オコナーにつきる

映画の主題は同性のラブストーリーですが、映画がそこだけにとどまらず、イギリスの農村という閉鎖社会に生きる青年の成長物語的な映画になっているのは、ひとえにジョシュ・オコナーさんの存在によるところが大きいと思います。

 

物語自体は単純で、イギリス、ヨークシャー地方で先の見えない生活に刹那的な日々を送るジョニーがルーマニア人のゲオルゲと出会い、次第に愛情を感じるようになり自分自身も変化し、生活をも変えていこうとする物語です。

 

批判的な意味合いではありませんが、この映画の結末はハッピーエンド的であり、たとえばこれが異性のラブストーリーであればかなりベタなものになる危険性がある物語です。その点では同性であることが映画の緊張感になっていることは間違いなく、ただそれだけでは「アンモナイトの目覚め」のようなある種の単調さを免れない結果になっていたものを、ジョシュ・オコナーさんによるジョニーという存在により、青年期の一体何が不満なのか自分でもわからないような鬱屈した感情が強く打ち出されて単純なラブストーリーを越える映画になっています。

 

ジョシュ・オコナーさん、1990年生まれですからこの映画の撮影時は20代半ばということになります。IMDbをみますとTVドラマが多いようで、この映画以降も出演映画が日本で公開されたことはなさそうで、Netflixで見られるTVシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子を演じているくらいです。

 

このジョニーからは考えられないキャスティングですね。

 

それにしてももったいない…、さらにいい映画にめぐりあうといいですね。

 

ネタバレあらすじとちょいツッコミ

いきなりジョニー(ジョシュ・オコナー)が便器に吐くシーンから始まります。二日酔いのようです。

 

祖母と、おそらく脳機能障害の後遺症ではないかと思いますが介助が必要な父親と暮らしており、家業の牧畜業はジョニーひとりの肩にかかっています。

 

祖母に小言を言われながらボトルからミルクをがぶ飲みし仕事に出ていきます。父親が崩れた石垣(放牧の囲いかな?)を直せと命じます。ジョニーの顔には不服そうな表情がありありと出ています。ただ、父親の言葉だけへの反抗ではなく、それが日常であるかのような飽和的な鬱屈したものが感じられます。

 

当然石垣など直しはしません。出産が近い牛の様子をみた後(これは次への振り)、牛を競りに出しに町に出ます。パブで酒を飲み、行きずりの男とトレーラー内でセックスをします。相手の男が付き合いたいと言いますがジョニーはNoとそっけなくあしらいます。

 

町といってもさほど大きくはなさそうですし、この相手の男は旅行者というわけでもなく、それなのに初対面の雰囲気でしたのでちょっと不思議な感じがしました。まあ映画的には簡潔でいいと言えばそうですし、ジョニーのイライラ感がよく出ていました。

 

家に戻りますと、死産の子牛の前で父親が杖を頼りに立ち尽くしています。身体を自由に動かせない父親には成すすべもなかったということでしょう。父親は臨時に人を雇ったから迎えに行けと命じます。

 

父親は一貫して父権主義的でジョニーに対しても命令口調でやさしさを感じることはありません。母親はジョニーが幼い頃に出ていったと後に語っていました。おそらく父親のせいでしょう。

 

ジョニーにはそうした父親の権力的なところや将来性のない古い牧畜スタイルに固執することへの反感や、かと言って父親に面と向かって反論するわけでもない自分への苛立ちがたまっている感じです。そうした閉塞感からでしょう、とにかくイライラするけれども何に苛つくのか自分でもわからない状態がとてもよく出ています。

 

臨時雇いの男はルーマニア人のゲオルクです。ジョニーはゲオルクに「パキ(paki)」と差別用語を投げつけ、ルーマニア人だと言うとさらに「ジプシー」と差別的意味合いを込めて呼びかけます。ゲオルクは感情を抑えて無視しています。ゲオルクは父親が動けないために一週間だけ雇われたということです。

 

その夜もジョニーは飲みに出かけます。町で同級生と思しき女性に出会い、その女性はどことなくジョニーを誘う素振りですが、ジョニーはそっけなく、また町を出て大学へ行っているその女性へのやっかみからか卑屈さを感じさせる嫌味っぽさをみせています。そしてその夜も泥酔し、車で家の前におっぽりだされたまま朝を迎え父親やゲオルクから白い目で見られています。

 

ゲオルクとの一週間の山ごもりです。放牧してある羊の世話ということなんでしょうか。こうした牧畜のことをもう少し丁寧に描けばもっと映画が深まったのではないかと思いますが、フランシス・リー監督はあまりそういう描き方をしないようです。「アンモナイトの目覚め」でもそうですが、セクシュアリティ一本で突っ走る感じです。この一週間で牧畜のことと言えば、ゲオルクが死産で生まれた羊の子を蘇生させたところくらいだったと思います。

 

小屋で寝袋にくるまって眠る二人、ジョニーは落ち着きません。朝、水で体をふくゲオルクをチラ見するジョニー、その関心を逆にジプシーと呼びかけることで紛らわすジョニー、ついにゲオルクがキレたのか、ジョニーを組み伏せ、その呼び方をやめろ!と言葉でも力でもジョニーを圧倒します。

 

ただ、このシーンもジョニーと組み伏せたゲオルクふたりの顔のアップを上下10cmもないような位置関係で撮っています。そのままキスに移行するのかと思いました。また、その後、日は変わっているかも知れませんが、ジョニーが手に怪我をし、ゲオルクが見せてみろと手を取り自分の唾を付けて治療(というのかね?)したりします。

 

ある夜、小便のために外に出たゲオルクにジョニーが襲いかかります。ふたりは泥にまみれながらのセックスとなります。

 

このシーン、ゲオルクにその気があったのかどうなのかがよくわかりません。ゲオルクが抵抗しているようにもみえるところもあり、もしそうであるならレイプということになります。そもそもゲオルクのセクシュアリティもよくわかりません。ただ、その後はゲオルクがリードしたりしていますので同性であることに抵抗はないのでしょう。

 

フランシス・リー監督というのは同性であることを特別に描くことはしないようです。

 

この何日間でジョニーが少し変わります。心に若干ゆとりのようなものが生まれたように見えます。その変化は、ふたりがヨークシャーの美しい田園風景を丘の上から見るシーンで表現されています。ジョニーにとってはそれまでにも見ている風景なんでしょうが、自分の気持が変われば違って見えるということです。

 

何日間かの作業を終え家に戻ります。ジョニーにとってゲオルクは離れがたい相手になっているようで、ふたりきりになることが待ちきれません。トレーラーで愛を交わすふたりです。

 

ただ愛情表現としては全体的に無骨な感じがします。監督のセンスなんでしょう。

 

父親が倒れます。祖母の付き添いで入院となります。

 

ある夜、ジョニーがゲオルクを誘いパブに出掛けます。ジョニーはゲオルクにこのまま残って欲しいと言います。ゲオルクは今のやり方では牧場はダメになる、故郷で経験しているとやんわりと断ります。

 

このパブのシーンはこのやり取りも含め、この後の展開も少し無理があるように感じます。ふたりに喧嘩をさせるための流れに見えるということです。

 

ジョニーが行きずりの男を誘いトイレでセックスをしています。ゲオルクが飲んでいますと隣の男が嫌がらせのちょっかいを出してきます。ゲオルクは男を突き飛ばし、帰ろうとジョニーを探しに行きその現場を見てしまいます。ゲオルクはそのまま家からも出ていってしまいます。

 

父親が退院してきます。ジョニーは父親を風呂に入れたりと介護も自らやるようになっています。父親が初めて(多分)すまないと言葉に出します。

 

ゲオルクへの思慕は募るばかりです。残されていたセーターを自ら着てみたり、衣服に顔を埋めたりするも、自分に腹が立ったのかトレーラーに当たったりしています。

 

ある日、ジョニーは父とともに外に出て辺りの風景を見回しながら、ゲオルクを連れ戻しに行きたい、そして(牧畜の)やり方を変えたいと訴えます。父親は石垣を直したなと言いながらうなずきます。

 

長距離バスでゲオルクの今の働き場所に向かいます。大規模な農場です。ゲオルクは何しに来たんだと冷たくあしらいます。ジョニーは言葉がありません。ゲオルクが踵を返して立ち去ろうとします。ジョニーはしばし逡巡するも思い切ってゲオルクを追い掛け思いの丈をぶつけます。

 

ふたりは抱擁し熱いキスを交わします。

 

ふたりが戻ってきます。家の前、ふたりの後を売られたトレーラーが走っていきます。

 

思いの強さは伝わるが俳優次第か…

この映画と「アンモナイトの目覚め」を見る限り、フランシス・リー監督の映画は恋愛感情を、どちらも同性のそれですが、その思いを直球勝負で描いていく傾向が強く感じられます。

 

そこにあるだろう紆余曲折にあまりこだわることなく、パターンとしては抑えていた気持ちがある瞬間爆発し思いが達成されるということになります。

 

また、その人物のまわりの生活環境のようなもの、この映画であれば牧畜業、「アンモナイトの目覚め」では化石採集のリアリティといったものをあまり描くことはしません。

 

そうしたことを描いていけば映画も幅の広いものになるような気がしますが、この2本ではかなり単調です。

 

それゆえ俳優による出来不出来が端緒に現れるのではないかと思います。ベテラン俳優のケイト・ウィンスレットさんには申し訳ないのですが、「アンモナイトの目覚め」では1840年当時の女性存在が浮かび上がってきません。もちろんそれは監督の責任であり、ウィンスレットさんの熱演は評価されるものですが、やはり映画としてはこの「ゴッズ・オウン・カントリー」のほうがいい映画になっていると思います。

 

最初に書きましたように、この映画はジョシュ・オコナーさんに尽きるということです。

 

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