そんなには褒めないよ。映画評

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「告白小説、その結末」(ネタバレ)その結末なしのサスペンスは原作者の実体験かも…

オチなしのサスペンス映画でした(笑)。

言い方を変えれば、私の妄想を聞いてくれてありがとう、みたいなことですかね。

 

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公式サイト / 監督:ロマン・ポランスキー

 

ある人気作家がいて、書けないスランプに陥って悶々としているところへ、ひとりの女性が現れ、かなり強引に近づいてきます。女性は、ELLEと名乗り、ゴーストライターだと自己紹介します。作家は戸惑いつつも、ELLEに惹かれ、ついには依存するようになり、ある時、ELLEの告白を聞いてそれを次作のネタにしようとします。

ELLEの方はと言えば、その意図や目的は全くわからないのですが、作家になりすまして関係者から作家を孤立させるようなメールを打ち、作家を自分の別荘に半監禁状態にします。

作家は知らぬ間に毒を盛られ、意識が朦朧としていきますが、最後の力を振り絞り、雨の真夜中に別荘から脱出します。なんとか道路にたどり着き、ヘッドライトを照らし近づいてくる車に手を振りますが、その車に跳ね飛ばされてしまいます。

後日、救出された作家は、病室を訪ねてきた編集者から、送られてきた新作が素晴らしいと絶賛されます。しかし、作家はそんなものは送っていないと言います。

新作は発表され大反響となります。

 

デルフィーヌ・ドゥ・ヴィガンの小説『デルフィーヌの友情』が原作とのことですが、映画がどの程度原作に沿っているかはわかりません。

 

その上での話ですが、映画では、ELLEは作家に毒(殺鼠剤)を盛ったあたりから出てこなくなります。つまり、映画的には ELLEはいなかったとしか考えられませんので、ELLEそのものが作家の妄想、あるいは作り話ということになります。

 

ということで、オチなしサスペンスと書いたのですが、実はサスペンス度自体も大したことはなく、ELLEは最初から何かを企んでいることが見え見えで登場しますので、作家がELLEに囚われていくこと自体が実に不思議で、この作家さんどうかしちゃっていますねとしか見えません。

ですから、逆に考えれば、この映画は、ミステリアスなELLEを描こうとしているのではなく、作家の、もう少し言えば作家が小説を書く行為、さらに言えば何かを生み出す創造的な作業がいかに奇妙な、一般人には理解できないような妙ちくりんな世界で行われているかを描いた映画と言えなくもありません。

 

監督はロマン・ポランスキーさんで、ここ最近の作品「ゴーストライター」「おとなのけんか」「毛皮のヴィーナス」を思い返してみますと、この映画を撮ったことがかなり暗示的で、どこか内面でつながっているような感じがします。

 

もうひとつは、「毛皮のヴィーナス」でも主役をやっていた妻でもあるエマニュエル・セニエさん、1989年の結婚前後はポランスキー監督の映画に2作出演していますが、その後はなく、ここにきて、2作続けて主役ですから、俳優である妻ありきの映画と考えられなくもありません。

 

結局のところ、退屈な映画だったということなんですが、その一番の理由は、どこに向かっているかわからないまま、最初から最後まで関係の変わらないふたりの女性を見せられ続けていることにつきます。

 

作家は最初から最後まで不安に支配されていますし、ELLEはELLEで、最初から作家に対して上から目線で登場しています。それは映画が進んでも一向に変わりませんので、この女性、ELLEの目的は一体何だろう? 復讐かな? などと考えていましたが、中盤に入っても一向に目的らしきものも見えてきません。これじゃあ、普通飽きてきますわね(ペコリ)。

 

ELLEのエヴァ・グリーンさん、自分がどういう存在と理解して演技していたんでしょう? いなくなってしまう存在だと理解していたんでしょうか、興味ありますね。

 

まあ、作家だけにとどまらず、誰にでもある人間の二面性を可視化した映画と理解するのがいいのかもしれません。

 

ところで、映画では何も語られていませんが、この作家の新作の内容は、この映画の物語なのか、あるいは映画の中でELLEが語っていた物語なのかが興味あるところではあります。ただし、映画の中でELLEが語っていた自身の告白は、大して興味をそそる話ではありませんでした。

 

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