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「ダウンサイズ」(ネタバレ)アレクサンダー・ペイン監督、SF的寓話物語を撮ってはみたが…

なんとも奇妙な映画ですね。作っているうちに、何やってんだかわかんなくなってしまったような…(笑)。 

監督は、アレクサンダー・ペインさんで、「アバウト・シュミット」「サイドウェイ」「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」と、自分でも意外と見ていることにびっくりです。

これまでの印象としては、ベースはヒューマンドラマ、主役のキャラがユニーク、スタイルはロードムービー、味のある大人の映画、といった感じで悪くないのですが、今回はどうしちゃったんでしょう?

 

監督:アレクサンダー・ペイン

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公式サイト

 

そもそもの物語の発端が、人口増加による人類の危機を乗り越えるためにある科学者が人間を縮小する技術を発見したという、何をどうひねくり回してもまともな物語になるとは思えないようなSF的ファンタジーというのが何とも…。

 

と、初っ端からそんなところにツッコミ入れていても仕方がないのですが、ただ、案の定、後半になりますと、ダウンサイジングしたことなどまるで関係ない話になってしまいますからねぇ…。

 

こんなお話です。

人間の縮小技術が発見されて5年、世界各地にダウンサイズワールドが作られ、そこでは、すべてが縮小化されるために、通常世界の資産でも億万長者になることが出来ます。ただ、一度縮小されたら戻ることは出来ません。

 

ポール(マット・デイモン)とオードリー(クリステン・ウィグ)の夫婦は、新しい家を買おうにも希望のローンも組めず、ついにダウンサイジングを決意します。

 

そして、いざ決行、二人で新しい生活をスタートさせるはずだったポールは、何とオードリーが途中でひるんで通常サイズのまま残ったことを知ります。裏切られたということですね。

 

当然、失意のポールということになり、この後オードリーとの間になにかあるのかなと思ってみていましたが何もありません。オードリー自体が出てきません。

 

えー? そうなの? とは思いますが、さらに、この後、普通サイズの人間世界の話さえ物語に関わってくることはありません。

 

とにかく話を進めますと、夢の世界であるはずのダウンサイズワールドですが、ポールの気持ちが晴れることはなく、悶々とした日々を送り、気を紛らわすためなのか、収入が必要なのか分かりませんが、コールセンターで働き始めます。

 

そしてある日、上階に住んでいるドゥシャン(クリストフ・ワルツ)に出会います。彼は日々パーティーでどんちゃん騒ぎをするような享楽(快楽)主義者です。

 

ポールは真面目で極めて一般的な人物であり、羽目を外すことも下手で、パーティーに誘われてもうまく入り込めず、無理やり飲んだドラッグのせいもあり、床に倒れたまま朝を迎えます。

 

このあたりの展開がだら~としていてつまらないです。これ、おそらくキャスティングミスですね。マット・デイモンにはこういう役は合わないということでしょう。

 

で、その朝、ドゥシャンの家の掃除にやってきたベトナム人のノク・ラン(ホン・チャウ)と出会います。ノク・ランはベトナムで反政府運動に加わったために強制的にダウンサイジングされたのです。

 

ノク・ランは片足を失って義足で生活しています。作業療養士だったポールが、その歩き方がぎこちないことで義足があっていないことに気づき、直してあげようと話しかけますと、ノク・ランは自分のことよりも他に病人がいるから診に来いと片言の英語でやや強引にポールを自分の住まいへ連れていきます。

 

そこは、ダウンサイズワールドの中の貧しい人たちの暮らす地域です。ノク・ランは清掃員として働きながら、裕福な世界の残り物をもらってきてはこの地の住人たちに分け与えているのです。

 

パラダイスであるはずのダウンサイズワールドも結局通常サイズワールドと同じように貧富の差はあり、何も変わらないということなんでしょう。そのことがさほど強調されているわけではありませんし、寓話と考えれば許容範囲ではありますが、ちょっとばかり安易だとは思います。

 

逆に言えば、この点に突っ込んだ話にすれば、それはそれで面白くなったかも知らないとは思います。これまで見てきた映画の印象で言えば、そうしたことはしないアレクサンダー・ペイン監督ということです。

 

で、この格差の話はそれで終わり(笑)、ある時突然、皆で、ダウンサイジングを発見した博士が主導してやっているノルウェーのコミュニティへ行くことになります。

 

このコミュニティは、ビジュアル的にはいわゆるヒッピーのコミュニティをイメージすればいいのですが、博士が地球滅亡説を唱えているらしく、ノアの方舟よろしく地下にシェルターを作りそこに避難するというカルト集団で、ポールたちも一緒に行かないかと誘われます。

 

ポールは、かなり象徴的に、アメリカ中間層なのか、ごく一般的な大衆なのか、そうした流されやすく、ドゥシャンによく言われていますが、すぐに挫折するキャラクターとして描かれていますので、当然ここは一緒に行こうとします。

しかし、ドゥシャンは地球が滅亡する前に彼らこそが仲間割れで滅亡すると相手にもしませんし、ノク・ランは理由はよくわかりませんが行かないと言い、この時点ですでにポールと男女の関係になっていますので、あのF***(Fワード)は愛だったのか、何何だったのか(と私にはよくわからないジョーク?)とポールに迫ります。

 

こうなれば誰でも先は読めますが、一旦ポールは皆と別れてシェルターに入ろうとしますが、結局挫折し戻ってきます。

 

そして、ポールとノク・ランはダウンサイズワールでしあわせに暮らしました、とさ。

 

結局、アレクサンダー・ペイン監督にしてみれば失敗作でしょう。

 

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