20センチュリー・ウーマン

1979年の(アメリカの)女性たちはどう生きたのか?という映画です

マイク・ミルズ監督って、ミランダ・ジュライ監督(?)の夫なんですね。知りませんでした。

マイク・ミルズ監督の映画、初めて見ましたが、ん?「サムサッカー」見たかな? という程度の知識や印象ですが、こういう映画を撮る人なら、結婚はともかく、二人は意気投合したんだろうなあと感じさせる作風です。

この映画、下の引用にもありますが、マイク・ミルズ監督の自伝的映画のようです。

監督:マイク・ミルズ

父親を題材にした『人生はビギナーズ』のマイク・ミルズ監督が、今度は母親をテーマに本作を制作。ゴールデン・グローブ主演女優賞にノミネートされたアネット・ベニングを主演に、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグが豪華共演。15歳の反抗期の少年と自由奔放なシングルマザーの親子と、2人を助ける個性的な女性たちとの、ひと夏の物語をユーモアを交えて爽やかに描く。(公式サイト

何かの紹介記事にコメディと書かれていたように思いますが、コメディじゃないですね。くすっと笑えるところはありますが、それにふたつに分類するわけでもありませんが、むしろシリアスな映画です。

1979年、自伝とするならマイク・ミルズ監督にあたるジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)15歳の話です。

といっても、物語の中心となるのは、ジェイミーではなく、母ドロシア(アネット・ベニング)、2つ年上の幼なじみジュリー(エル・ファニング)、間借り人アビー(グレタ・ガーウィグ)の3人の女性たちです。

男性は、ジェイミーの他に、もうひとり間借り人のウィリアム(ビリー・クラダップ)がいますが、ジェイミーとの関係ではさほど重要な役回りではありませんし、女性たちとの関係でもかなり曖昧な存在で、アビーに誘われて寝たり、ドロシアをさしたるはっきりした意思もなく誘ってみたりと、どちらかというとあまり主体性のある人物に描かれてはいません。

そのあたりも1979年という時代性なのでしょう。

なにせアメリカにとって1970年代は、ベトナム戦争の敗北、ウォーターゲート事件、イラン大使館の人質事件などが象徴するようにあまり良い時代とは言えなく、経済的にも停滞した時代です。

映画のひとつのキーワードとなっている「フェミニズム」についても、この時代、性行為も含めたセクシャリティから男女平等を語られることも多く、ウーマンリブという運動も起きています。

音楽的には、「パンク」の時代であり、アビーが音楽だけではなくファッションや生活スタイルにわたるサブカルチャーとしてパンク的な時代を象徴していました。

といった時代背景の中の女性たちを描いた映画ということになりますので、男性であるジェイミーは、3人の女性たちによって「いい男」とは何かを教わる対象であり、唯一大人の男性であるウィリアムは、やさしくとも一家の主とはなりえない元ヒッピーとして描かれ、ジュリーのセックスの対象となる同年代の男性たちは、いうなれば何も見えていない馬鹿な男たちとなるわけです。

で、当の女性たちはと言いますと、ドロシアは高齢出産でジェイミーを産んでおり、当時55歳、夫とも別れ、古い時代の女性として描かれています。

ですので、ドロシアは息子ジェイミーを「いい男」にしてねとジュリーとアビーに頼みます。

アビーは上に書きましたようにパンク・ムーブメントを体現している女性ですので、ジェイミーをクラブへ連れ出したり、ドロシアとジェイミーの育て方について議論したりします。

ジュリーは(多分)セックスの開放といった時代の空気の中の中の存在として描かれているのでしょう、14歳(だったかな?)で初体験、特に愛情云々とは関係なく同年代の男たちと性交渉を持っています。

ただジェイミーとは「あなたとは親しすぎてできない」とセックスは拒否しますが、毎夜ジェイミーの部屋に忍び込み同じベッドで眠ります。

ジェイミーはと言えば、そんなジュリーに、時にコトに及ぼうとしますが、ダメと言われれば素直に引き下がり、まだまだ幼い存在ではあります。

といった感じで、1979年のあるひと時が描かれます。

ただ、映画の視点は1979年にあるわけではなく、現在にあり、ドロシアが1999年にガンでなく亡くなることが示されたり、映画のラストでは、それぞれ登場人物のその後が語られます。

登場人物、おおむね皆家庭を持ち子どもを持ちといった、1979年から見れば未来、現在から見ればそういうことなのねといった過去が語られるというのが、この映画のミソではないかと思います。

え? 肝心のジェイミーのその後は語られましたっけ?

という映画です(笑)。

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