雨にゆれる女

夜景や暗い室内の撮り方が美しいですね

監督の半野喜弘さんは、「ホウ・シャオシェン、ジャ・ジャンクー…映画界の名匠たちを魅了してきた音楽家」と紹介されています。

よく知りませんでしたが、確かに最近の映画では「山河ノスタルジア」にもクレジットされており、第52回金馬奨音楽賞ノミネートとあります。音楽としてはほとんど記憶していませんが、逆に言えば、それは劇伴という意味ではとても良かったということです。

その半野喜弘監督の長編デビュー作です。音楽家ではありますが、映像制作もちょこちょことやっているようです。

監督:半野喜弘

本名を隠し、別人としてひっそりと暮らす男。ある夜、突然同僚が家にやってきて、無理やり女を預ける。謎の女の登場で、男の生活が狂いはじめる。なぜ、女は男の前に現れたのか。そして、なぜ、男は別人を演じているのか。お互いに本当の姿を明かさないまま、次第に惹かれ合っていくふたり。しかし、隠された過去が明らかになるとき、哀しい運命の皮肉がふたりを待ち受けていた――。(公式サイト

で、公式サイトをみてみようと「雨に濡れる女」と入れてもヒットしません。あれ?とよく見ましたら「雨にゆれる女」でした(笑)。

見ておいてなんだ!ですが、でも、内容はかなり「雨に濡れる女」的メロドラマでした。 

どんなメロドラマかといいますと(完全にネタバレしています)、

男は、過去に人を殺しており、それゆえ人付き合いを避け隠れるように暮らしています。ある日、会社の同僚が女を預かってくれと無理矢理置いていきます。男は冷たくあしらいますが、女は男の元を離れようとせず、結局肉体関係を持ってしまいます。

男が自分の過去を語ります。男には姉がおり、貧しい暮らしの中、姉は精神を病み、医師にかかります。姉は医師と付き合うことになり、幸せそうに見えた矢先、姉が自殺します。男は、その原因が医師に捨てられたからと思い込み、殺したのです。

女が語ります。自分は、あなたのお姉さんが付き合っていた医師の娘だと。そして、お姉さんが自殺した原因は、父親に再婚の話をされた時、自分が「あの変な人がお母さんだなんて嫌だ」と、お姉さんに聞こえるように拒否したからだと告げます。

と、こんな話です。そして、ラスト、男は自殺します。

正直、こういう話はきらいじゃないのですが、さすがにつくり過ぎの悲劇的不幸物語過ぎます。

こうした話も実際にあるかもしれませんが、仮にあったとして、それを描くとするのなら、注目すべきはその物語自体ではなく、そもそもの不条理性でしょう。こんなに物語の筋が通り過ぎていては、逆に、あ、そう、で終わってしまいます。

もったいないですよね。

暗いシーンが多いのですが、日本映画らしからぬ照明でいい感じで撮れていますし、鋳物工場でしょうか、焼けた鉄(?)の飛び散るところとか、映像的にはとても丁寧ですし、色々考えて撮られています。

で、思うんですが、こういう話って、ある意味、男の妄想物語ですよね。

アウトロー、因縁のある女性との関係、死による赦し。

それに古くからあるパターンです。

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