ザ・ギフト

監督は「キンキーブーツ」のジョエル・エドガートン、サイコ・スリラーより心理劇にすべきだった?

監督ジョエル・エドガートンと聞いても、何も浮かんでこなかったのですが、「キンキーブーツ」のチャーリーを演っていたオーストラリア出身の俳優さんでした。ハリウッドでもたくさん出演しているようですが、残念ながら他の映画は見ていないです。

この映画が初監督作品とのことですが、脚本は過去に2本ほどあり、この作品もオリジナル脚本とあります。ほぼ主演のゴード役で出演もしていますので、映画自体に相当力が入っているということでしょう。

脚本は面白いですね。

監督:ジョエル・エドガートン

カリフォルニア郊外に移り住んだ若い夫婦サイモンとロビンは、偶然にも買い物中に高校時代の同級生ゴード(ジョエル・エドガートン)に声をかけられる。サイモンはゴードのことをすっかり忘れていたが、再会を喜んだゴードは次々と贈り物を届けてくる。やがて夫妻の周囲で奇怪な出来事が続発するなか、ゴードは過去の因縁をほのめかす。はたして25年前、ふたりの間に何があったのか……。(公式サイト

以下、ネタバレあります。サスペンスでもありますので、ご注意。

基本は復讐劇で、同級生にいじめられていた男が、25年後、その相手と妻を心理的に追い詰めていくという内容です。

結論をいっちゃいますと、脚本の大筋はいいのですが、追い詰める側のゴードが普通すぎて、何をするかわからないといった危なさが足りません。サイコ度、心理的追い詰め度が足りなく、惜しい感じがします。もちろん、公式サイトにある「サイコ・スリラー」としてみた場合の話ではあります。

惜しい理由はいくつかありますが、まず、スリリングな緊迫感が中ほどまでしか続かないです。これは、あるいは意図したことかもしれませんが、前半は得体の知れないゴードの不気味さが緊迫感を生み出していい感じなんですが、中ほどから、映画のトーンが変わって、サイモン(ジェイソン・ベイトマン)の妻ロビン(レベッカ・ホール)が、25年前の出来事を追求することに主眼が移ってしまいます。

同様の意味で、ゴードが送りつける「ギフト」が、期待ほどの心理的圧迫感を生み出していないです。予想では、もっとサイモン夫婦の得体の知れない恐怖感を増幅していく要素となっていくのかと思っていましたが、それほどでもなく、これも前半だけで終わってしまっています。

追い詰められるのがサイモンの妻であって、当のサイモンではないということも、理由のひとつです。サイモンのキャラクターがどこかマヌケな感じがありますね。人を蹴落としてまでの出世欲が強いキャラクターとなっていますが、どう考えてもばれるでしょう。

過去の出来事も、映画的に言えば、ショッキングさが足りないです。サイモンがゴードをいじめていたとありましたが、映画の中ではサイモンが嘘をついたことによってゴードの人生が変わってしまったくらいの内容で、もちろん現実にはあってはいけないことですが、やはり映画的には動機としてはうすいです。

ということで、とてもていねいには作られていましたが、中途半端さが目立つ映画でした。初監督作品としてはインパクトが足りないということでしょう。

  

キンキーブーツ (字幕版)

キンキーブーツ (字幕版)