若き詩人、犬を連れた女/ダミアン・マニヴェル監督

ギヨーム・ブラック監督(女っ気なし、やさしい人)絶賛の新人監督、この二作融合の新作に大いに期待します。

公式サイトによりますと、「やさしい人」のギヨーム・ブラック監督が次のように語っているそうです。

『ダミアン・マニヴェルは、並外れたフレームと空間のセンスを持ち、フィルムに収めるその「場」に強い存在感を与え、またその「場」の空気をとらえる術を知っている。
そしてまた、彼は具象的な映画も撮る。私は、さりげないユーモアと胸を刺すようなメランコリーの融合に非常に心を打たれた。そして「若き詩人」が物語る、創作し端的に表現することの難しさ、世の中への不適応、抗えない孤独にもまた、大きな感銘を受けた。』 

シナリオもなく、わずか10日間の撮影期間でDIYのように作られた71分の作品。ところが、その新鮮なユーモアと親しみやすさ、さりげない中に確かに感じられる映画的質の高さ、現在の私たちの世界を真摯に見据えた切実さ、この小品は、瞬く間にフランス全国20館でロードショウされるまで大きく成長したのだ。(公式サイト

ギヨーム・ブラック監督がそこまで評価しているのなら見なくてはいけないでしょう、ということで、71分の「若き詩人」と16分の「犬を連れた女」二本立てです。

引用したギヨーム・ブラック監督の言葉通りです。

「並外れた」はやや誇張された褒め言葉だとは思いますが、「若き詩人」は、全カット、1ミリたりとも妥協しないぞといった確信に満ちた構図のフィックスカットで撮られています。

南仏のリゾート地セットという街がロケ地とのことですが、太陽が違うのでしょう、自然光で撮られた(らしい)画は、不思議と陰影もきつすぎず、どのカットもとても美しいです。

夜のシーンも美しかったんですが、どうやって撮ったんでしょう? 照明を使っているんでしょうか?

構図は、常に奥行きが意識されており、レミ(レミ・タファネル)がポール・ヴァレリーの墓と対話する場面(下)の遠景に街と海を入れているのは見てとおりですが、街中の路上でも、(多分)カメラを少し傾けたり、位置をずらしたりと相当こだわって奥行きを捉えようとしています。

映画.com

ただ、映画として面白いかといいますと「若き詩人」の方はフォトエッセイの趣ですのでやや退屈と言えなくもなく、むしろ4年前(2010)に撮られたという「犬を連れた女」の方が映画としての可能性を感じます。

ギヨーム・ブラック監督のコメントに「そしてまた、彼は具象的な映画も撮る。私は、さりげないユーモアと胸を刺すようなメランコリーの融合に非常に心を打たれた。」とあるのは、主にこちらの作品への評価だと思います。

迷い犬を飼い主の女性宅に届けた(映画ではよく分からない)少年(レミ・タファネル)と飼い主の女(エルザ・ウォリアストン)の微妙なやり取り、時折はさまれる女性の顔のどアップの迫力、無理やりラム酒を飲まされる少年のとまどい、酔っ払ったのかタヌキ寝入りなのか突然いびきを響かせる女、犬の後を追うとそこは寝室、眠っていたはずの女がやってきてベッドに横たわる、そしてひとこと「何がしたいの?(だったと思う)」

このいかにも映画的なシチュエーション! と、非映画的なビジュアル!

この延長線上の映画を私は期待します!