そんなには褒めないよ。映画評

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「バーバリアンズ セルビアの若きまなざし/イバン・イキッチ監督」コソボ独立反対のデモ(暴動?)のシーンはうまく撮れていたと思いますが、映画としてはややとりとめのない印象

セルビアの映画です。

民族や宗教が交錯するバルカン半島は、実感として日本人には一番理解し難い地域かもしれません。特にセルビアが属していた旧ユーゴスラビアは、「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」(ウィキ)と形容される複雑な国家でした。

現在は、1991年からの内戦で6つの国に分かれ、その後この映画でも描かれているコソボ自治州の独立宣言(認めていない国もある)で7つの国ということのようです。

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内紛が続いたセルビアにあふれるのは、仕事も夢もない若者たち、理想とはほど遠い現実でもがき生きる、彼らの等身大のストーリー。
旧工業地域に暮らす主人公の青年ルカ。仮釈放中で仕事も目標もなく、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、自宅を訪問した社会福祉士によってコソボ紛争で失踪したと思われていた父が生きていることを知る。そんな中、首都ベオグラードでコソボ独立反対のデモに参加したルカは、帰り道に父と再会することになり―。(公式サイト

 

こうしたテーマの映画は好きですし、映画のトーンも悪くないのですが、一向に伝わってくるものがない映画でした。

映像の質感やルカの肩越しから追っていくカメラワークもいいですし、あってないようなストーリーもこうした映画ではよくあることでマイナスになることもないはずです。

逆に言えば、そうした多くの手法にオリジナリティがないということでしょう。全体的に表面上の既視感が強く、そうした手法を取らせる、まあ言ってみれば撮る側の強い思いみたいなものが欠けているということだと思います。

ルカを演っているジェリコ・マルコヴィッチくんは俳優ではないそうで、見た目はいい感じなんですが、実在感がありません。リアリティという意味ではなく、何となくふわふわしている感じがします。こうした映画には、いわゆる閉塞感とか、何にとはいえない怒りみたいなものがないと実在感が生まれてきません。

思い返してみれば、彼が喋っている画が少なかったように思います。台詞は結構あったと思いますが、誰が喋っているかよく分からない肩越しの会話が多かったように思います。意図的だとは思いますが、そうしたことも影響しているのかもしれません。

後半に2008年のコソボ独立反対のデモ(暴動?)のシーンがありますが、あれはうまく撮れていました。映画的に言えば、あのシーンをもっと上手く使って山場にすれば、もう少し惹きつけられる映画になったのではないかと思います。

いずれにしても惜しい映画でした。