アメリカンレガシー/サム・シェパード監督

この作品を見て「パリ・テキサス」や「アメリカ、家族のいる風景」二作のシナリオはどんなものだったんだろうと思う

リヴァー・フェニックス幻の遺作「ダーク・ブラッド」公開記念ということで、1992年の作品「アメリカンレガシー」が劇場公開されていました。当時、東京国際で上映されたのみということのようです。

リヴァー・フェニックスさんのファンというわけでもないですので、未完の「ダーク・ブラッド」にはあまり興味が持てず、サム・シェパード監督のこちらの作品を見ることにしました。

日本語版の予告はないようです。

サム・シェパード監督は、ヴィム・ヴェンダース監督の「パリ・テキサス」や「アメリカ、家族のいる風景」のシナリオを書いているということで記憶していたのですが、監督としてはこれが2作目らしく、もともとは劇作家とのことです。

R・ハリス演じる老いた牧場主が、メディシン・ショウ(薬売りのアイルランド人の座主とインディアン女の間の長女を嫁にとったが、その娘が死に、息子は半狂乱で日々朽ちてゆく死体にしがみついている有り様。なんとかその悲しみを癒したいと、次女をくれないかともちかけに来たのである。馬二頭と引き替えだった姉より更に一頭余計にやるのを条件に……。ところが、これを怒った姉の亡霊(遺体と同じく不気味な死化粧を施してあり、現われるたび、顔面の腐敗が進んでいく)が息子や父、そして妹の前にしばしば姿を見せ、彼らを呪詛するのだった。(allcinema)

原題の「Silent Tongue」は、上の引用に、今では差別的表現とされる「インディアン女」と記されている一座の長マックリー(アラン・ベイツ)の妻のことで、舌を切られて喋れない上に、マックリーにレイプされて無理矢理妻にされ、二人の娘を産んだ女性のことです。そしてその長女アイバニーは、馬と交換で売られて、プレスコット・ロー(リチャード・ハリス)の息子タルボット(リヴァー・フェニックス)の妻にされますが、お産の際に亡くなってしまい、今再びプレスコットは馬を引き連れ妹を買いに来たわけです。

アメリカ先住民の女性たちの怨念のようなものがテーマとなっているようで、タルボットは姉の霊に取り憑かれてミイラ化している死体から離れようとしません。その霊は姿形を現してタルボットを苦しめたり、プレスコットに息子を助けるよう頼まれてタルボットに近づく妹にも敵対したりします。
といった内容で、結構興味深いテーマですし、西部の荒野のロケーションもいいのですが、映画的にはいまいちで、正直監督としてはどうなんだろうという感じです。この作品以降監督作品はないようですね。

劇作家という眼で見るからかも知れませんが、一座の興行の見せ方やマックリーと息子リーヴス(ダーモット・マローニー)の道行きの会話劇など作りが舞台っぽい感じがします。
ということで、この映画のシナリオもサム・シェパードさんなわけですから、「パリ・テキサス」や「アメリカ、家族のいる風景」との出来の違いを考えるとそれら二作のシナリオはどんなものだったんだろうと非常に興味がわく映画でした。