グロリアの青春/セバスティアン・レリオ監督

不思議な感じのする映画でした。もちろん中年女性の愛やら恋やらがめずらしいという意味ではなく…

不思議な印象の映画

今まで見たことのないような映画でした。もちろん中年女性の愛やら恋やらがめずらしいという意味ではなく、グロリアの人物像や人間関係が私の感覚と微妙にずれていて、とても不思議な感じのする映画だったという意味です。


映画『グロリアの青春』予告編

全然関係のない話ですが、ラテン系で「グロリアの〜」ときますと、すぐにアルモドバルの「グロリアの憂鬱」が浮かんでしまいます(笑)。

自立する女性

それにしても、ラテン系の女性(グロリアだけ?)の自立心ってのは半端じゃない気がします。男性依存傾向は強そうですが、それは女性から男性へ一方的にという意味ではなく、むしろ男性の女性依存の方が強いくらいに、互いに異性依存しつつ自立している感じがします。もちろん映画の中の話です。

チリの首都、サンティアゴ。58歳になるグロリアは、独身生活を謳歌していた。夫とは10年以上前に離婚、息子も娘も立派に成長し、それぞれ独立した生活を持っていたし、自分自身も職を持ち、会社で責任ある仕事を任せられて充実していた。時間があればヨガ教室や様々なサークルに参加、夜には中年の独身者たちが集まるダンスホールに通い、孤独を紛らしていた。

グロリアはある晩、ダンスホールで年配のロドルフォに誘われ、意気投合して一夜を共にする。 グロリアはその関係をいつもの“遊び”と割り切っていたが、数日後、電話をかけてきたロドルフォはグロリアを昼間のデートに誘い、正式に交際を申し込むのだった。

元海軍将校のロドルフォは、成功したビジネスマンでグロリアにとっては理想的なパートナーだったが、彼女は彼が今も元妻や娘たちの世話を焼いていることに我慢が出来なかった。

グロリアは度重なる彼の優柔不断な態度が許せず、ある行動に出る…。(公式サイト

このグロリア(パウリーナ・ガルシア)が、(私には)何ともつかみどころのない人物なんですね。その意味では魅力的ですし、かなりのリアリティです。つまり、普段われわれが出会う人間ってのは、映画の中みたいに分かりやすい人はほとんどいませんし、何を考えているのかさっぱりっての普通だと思いますが、その意味で、グロリアは全くつくりものじゃない不思議な人物です。

相手の男ロドルフォ(セルヒオ・エルナンデス)や元夫は分かりやすいのですが、グロリアは、何をするにもあまり表情が変わらず、強いというか、弱さが感じられないんですね。パウリーナ・ガルシアさんのキャラゆえかも知れませんが、考え方によっては、見た目に感じられない58歳の孤独は、より深いと言えるのかも知れません。

ああ、あの似合わない(笑)メガネがくせ者ですね。

邦題は「グロリアの青春」となっており、日本では老いと青春は対立項のように扱われ、58歳グロリアの第二の人生やら、再び青春を取り戻すみたいな宣伝コピーが並びますが、でも、グロリアはたまたま58歳だっただけで、40歳でも、70歳でも、同じ人生を送っているような気がします。

グロリアの青春(字幕版)

 

グロリアの青春(字幕版)

  • 発売日: 2014/09/03
  • メディア: Prime Video