桃さんのしあわせ/アン・ホイ監督

ああ香港ってこうなんだぁとまるでそこで生活しているような空気感

確かに桃さんが倒れたり亡くなったりと人生における最後のドラマが描かれてはいますが、それをも日常のひとこまなのだといった感じに香港の今が淡々と綴られていくとてもいい感じの映画でした。

60年間同じ家族に仕えるメードの存在、住まいや街の生活感、食生活、そして老人ホーム、ああ香港ってこうなんだぁとまるでそこで生活しているような空気感です。それだけに決して面白いとは言えませんが、何とも味のある映画です。

それにしても皆いい人ばかりというのも、新しく登場する人物を見るたびに「だまされるのかな?」「いじめられるのかな?」などと思ってしまう自分が情けなく感じられ、勘弁してよと言いたくなります(笑)。

久しぶりに見るアンディ・ラウは、ほとんど演技をしない演技でなかなか良かったです。 昨年のベネチアで主演女優賞を受賞したディニー・イップさんも特別どうということはないと感じさせる演技を心がけていたのか演出なのか、ほとんどがこの二人のシーンということもあり、これがアン・ホイ監督が撮りたかったものなんだろうなあと納得したわけです。