ガールフレンド・エクスペリエンス/バブル

バブルが面白い!

ガールフレンド・エクスペリエンス/バブル [DVD]

ガールフレンド・エクスペリエンス/バブル [DVD]

見逃したのでDVD鑑賞となりました。DVDには「ガールフレンド・エクスペリエンス」「バブル」の2作が収録されていますが、劇場公開時はどうでしたっけ? 「バブル」の方は記憶にありません。

ところが、これが素晴らしくいいですね。インディペンデント臭がぷんぷん、ソダーバーグらしいと感じます。

(略)スティーヴン・ソダーバーグが監督、撮影、編集まで行った衝撃のドラマ作品。小さな町の人形工場で起きた殺人事件を軸に、孤独な住人たちとその内面にひそむ狂気が暴かれていく。有名なキャストを一切起用せず、撮影のすべてをキャストの自宅を使って行うという実験的手法を採用。ソダーバーグ監督ならではの巧みな演出や、作品に緊張感を与える音楽なども見どころ。(cinematoday

引用はしましたが、内容の記述はあまり正確でなく、殺人事件は「軸」ではなく「結果」的に起きますし、住人たちは際立って「孤独」というわけではありませんし、「狂気」など暴かれてはいきません。

(以下、完全ネタバレです)
アメリカの地方都市(オハイオ州)に暮らす3人の男女の日常の人間関係が描かれていきます。まず、老いて動けなくなった父親の面倒をみながら人形工場で働く中年の女性マーサ(多分40代)と同僚で母親と暮らす青年カイル(多分20歳前後)の二人は、ごく普通の仕事仲間ですが、マーサは、面倒見のよい性格からなのか、同僚以上の友人関係を感じているのか、あるいは若干異性としての意識があるのか、そのあたりかなり微妙に、その微妙さが見事なんですが、車でカールを送り迎えしたり、昼食も一緒に取ったり、そんな関係が描かれていきます。

そこに、新しく仕事の同僚として、シングルマザーのローズ(多分カイルと同年代)が加わります。ローズは2歳の娘と暮らし、夫とは別れているようです。ローズは積極的な性格のようで、初日からカイルを意識している、というか、意識していることをカールに見せる態度を示します。カイルはまんざらではないようです。マーサにもそれは分かります。

こう書くと、ありがちな三角関係のような話にみえますが、この3人の関係が実にリアルでいいんですね。これは、地元のアマチュア劇団の俳優を使い、それぞれの実際の住まいを使って撮影している(らしい)ことが大きく影響していると思われます。俳優たちには過剰な演技は全くなく、それでいて微妙なところを演技している、特にマーサの演技は際立って素晴らしく自然です。全てソダーバーグ監督の意図するところでしょう。

そして事件は起きます。ある日、ローズは、マーサに夜のベビーシッターを頼みます。引き受けたマーサが、ローズの家で娘の扱いなど説明を受けているところにやってきたのは、デートの相手カイルです。そのことは決して意表を突くわけではなく、そうだと分かるように描かれており、マーサもあるいはと思っていたはずです。

デートは、パブで少し飲み、その後カイルの家で少し話しとあっけなく終わります。ローズは、2,3時間の約束だから戻らなくっちゃと別れを告げるのですが、実はカイルが席を外した隙に、飲みながら彼から聞いたタンス預金をすでに盗んでいます。これが当初から計画されたことなのか、成り行きなのかははっきりはしませんが、というより、それが分からないからリアルなんですが、カイルが話さなければローズは泥棒などしなかったかも知れませんし、知らなくても隙をみて引き出しを漁ったかも知れません。人生なんてほんのちょっとのタイミングですからね。

そのほんのちょっとしたことはさらに続きます。戻ったローズに、マーサが「なぜカイルと出掛けると言ってくれなかったの?私が馬鹿みたいじゃない。」と、かなり微妙なニュアンスで話します。ローズは、ごめんなさいと返し、その件はそれで終わってしまいますが、その時突然ドアが強くノックされ、ローズの元夫が怒って入ってきます。元夫は、ローズに自分の金とマリファナを盗んだだろうと迫り、口論になります。カウチに座ったままのマーサは、どうなることだろうと身を固くして見守りますが、意外にも男は素直に帰っていきます。こういうところも後々効いてくるんですよね。

で、男が去った後、マーサがジェシー(ローズの娘)の父親かと訊ねようとしますが、ローズは「余計なことでしょ!本でも読んでいて!」と口論の余韻そのままに強く言い放ちます。その後の2,3カットは特にいいですね。

随分細かく書いてしまいましたが、これで前半は終り、後半は、次の日の朝、ローズが死体で発見されるところから始まります。その後を簡潔に書きますと、捜査官が登場し、3人に話を聞いていき、結局、ローズの首に残った指紋と一致したことでマーサが逮捕されます。

謎解き映画ではありませんので、およそ犯人はマーサであろうとは分かりますが、元夫、カイル、マーサの3人のうち、誰が犯人でも映画として違和感はありませんし、むしろ、ほんのちょっとのことで何が起き、人生がどうなるか分からないという感覚で映画は収束していきます。ラストシーンも印象的です。カイルがもうひとつの夜間の仕事を淡々とこなす姿でカットアウトされ、人形工場で作られている人形たちをバックにエンドクレジットが流れます。

この「Bubble/バブル」は、アメリカのある地方都市の、ある人たちの、ある時間の、ある出来事が淡々と描かれているだけですが、監督、撮影、編集を一人でこなすソダーバーグ監督の手腕と、そして、重要なシーンにかぶせられるシンプルではあるが抑えられた緊張感あるロバート・ポラードの音楽により、超一級のサスペンスタッチのヒューマンな映画に仕上がっています。