そんなには褒めないよ。映画評

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彼女が消えた浜辺

ベルリン映画祭最優秀監督賞も納得の、とてもよくできた作品です。子供がおぼれる前後の緊迫感の演出は、嫌みなく見事ですし、その後の展開にも隙がありません。

出だしの20,30分は、誰が誰だか掴みづらく、この先彼ら彼女らの人間関係を理解できるだろうかとか、エリって誰だ?とか、あるいはどう展開していくかが読みづらく、やや不安を感じたんですが、先に書いた事故(事件?)が起きる少し前からは、何かが起きるだろうという予兆のようなものを感じさせ、その後は、軽快に飛ばして、最後まで引っ張っていきます。

俳優たちも皆うまいです。直接には関係のない会話が幾重にも絡み合うシーンは、極めて演劇的で、こういうシーンをきちんと撮れる監督は、そう多くはないように思います。

映像感覚は、かなりヨーロッパ的です。窓越しの無音の会話シーン、引いた映像の海岸のカット、車の中からのカットなどなど、ストーリーの軸となっているイスラム的なものをのぞけば、そのままイタリア映画と言っても違和感はありません。

ただ、監督の才能を感じさせるすばらしい映画ですが、よくできた映画と心に残る映画とは、また別もの。私には、消える彼女の凧揚げのシーン以外に残るものはありませんでした。

多分、その理由は、事件や謎だけで引っ張っていくつくりになっており、人物描写にやや深みが足りないからでしょう。群像劇のようにもみえますが、それほど個々の人物や関係性に焦点を当てようとしていませんし、取り立てて主役と言える人物も見あたりません。

たとえば、消えた彼女の人物像にもう少し迫る方法をとっていたならば、また違った感想を持ったかも知れません。

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