トランシルヴァニア

トランシルヴァニア [DVD]

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哀調を帯びたロマの音楽を堪能し、余韻に浸りながら映画館を出た私を待ち受けていたのは、目に焼きついた荒涼たる東欧の風景とはうって変わった、ヤキトリの煙漂う今池の夜の街だった。

一気に現実に引き戻された私は、さらにいつもとはやや異なった街の空気を感じ取った。出歩いている人が多い。どこか空気がざわついている。パトカーまで目に入ってきた。

と、いぶかしむ私の耳に、入り口の引き戸が開け放たれた焼き鳥屋の奥から「…ユウショウ…」の(叫び)声。ああ、日本シリーズだ! ドラゴンズが勝ったのか!? さしたる野球好きでもドランゴンズファンでもないのだが、それでも地元というだけで何かしら高揚するものがある。出自(こういう使い方はしない?)とはそうしたものだ。

ロマの血を引くトニー・ガトリフ監督は、自らのルーツにこだわり続け、作品を生み出している監督だ。この「トランシルヴァニア」では、監督・脚本・音楽となっており、音楽にもかなりの思い入れがあるらしく、エンドクレジットの使用曲リストのほとんどに「Tony GATLIF」と入っていた。

どういうことかと公式サイトをググってみたら、こんなん出ました。
「本作はトランシルヴァニアの不思議な魅力溢れる民俗音楽を元に監督がオリジナルの曲を作り、現地で出会ったミュージシャンたちが演奏し全編を効果的に彩る。」

なるほど、そういうことですか。観ていて何となく感じた違和感が解決しました。それぞれのシーンは印象的で強くひきつけられるのですが、なぜか集中力が持続しないというか、主人公ふたりのキャラクターや関係が映像からはっきりとした形で見えてこないんです。もちろん所詮男と女の間のことですから想像力で埋めればいいことなのですが、言うなれば、音楽に映像が張り付いている感じというか、音楽と音楽の間をうめる映像がないというか、やや映画としては描ききれていないと感じたのです。

しかし、こういった映画は大好きな部類に入り、特に「愛する男を捜すために世界の果てへと旅立つ女性」ジンガリナを演じるアーシア・アルジェントと「破滅的な危うさと繊細な優しさを併せ持つ」チャンガロを演じるビロル・ユーネルはいいですよ。

ビロル・ユーネルは、2004年のベルリンで金熊賞を受賞した「愛より強く」がかなり印象深く残っており、この映画でも結構似たキャラの役を演じています。一方のアーシア・アルジェントですが、この人、かなりいい感じで、ググってみたら、「サラ、いつわりの祈り」を自ら監督、脚本、主演している俳優でした。

その関連でもうひとつ情報がありました。あの(?)村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」がアメリカで映画化されつつあるらしいということです。そこにクレジットされているのが、このアーシア・アルジェント、ショーン・レノン、浅野忠信です。

コインロッカー・ベイビーズが映画化!

(後日)リンク切れです。この話、どうなったんでしょうね?

なんだか話があちこちにそれましたが、私はこの映画好きですね。

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