おすすめ映画

「君は永遠にそいつらより若い」ネタバレレビュー・あらすじ:吉野竜平監督の構成力と佐久間由衣、奈緒の俳優力が光る

原作の津村記久子著『君は永遠にそいつらより若い』を読んでいなければ見なかったかも知れない映画、見てよかったです。 俳優よし、構成よしの映画らしい映画でした。 君は永遠にそいつらより若い / 監督:吉野竜平 吉野竜平監督の構成力が素晴らしい 人物…

「ドライブ・マイ・カー」ネタバレレビュー・あらすじ:細かすぎて伝わらないと音が加福に言う

濱口竜介監督、私個人としても評価は高く、大いに期待する監督のひとりですので批判という意味ではなく言えば、映画としてはちょっとやり過ぎじゃないかと思います。言い方をかえれば、力が入り過ぎている感じがしますし、映画の特質である(と私が思う)直…

「モロッコ、彼女たちの朝」ネタバレレビュー・あらすじ:少ない台詞と抑制された演出で静かなるフェミニズム

予想に反してとてもいい映画でした。 劇場で本編映画の前に流れる予告編をぼんやり見た印象と邦題「モロッコ、彼女たちの朝」の響きから、それぞれ問題を抱えるふたりの女性が助け合いながら問題を解決していく甘めのハッピーな映画なんだろうと思っていまし…

「17歳の瞳に映る世界」ネタバレレビュー・あらすじ:瞳に映る世界ではなく女性たちが今現在置かれている世界

原題の「Never Rarely Sometimes Always」の意味がわかるシーンは圧巻です。 その一連の質問をオータムにしている女性は俳優ではなく実際の人工妊娠中絶クリニックのカウンセラーとのことです。 17歳の瞳に映る世界 / 監督:エリザ・ヒットマン 女性たちが…

「いとみち」ネタバレレビュー・あらすじ:すべてにおいて過不足なく完璧!

横浜聡子監督、2016年の「俳優 亀岡拓次」以来です。長編ではその前が2008年の「ウルトラミラクルラブストーリー」ですから、なかなか撮りたいものの環境が整わないということなのか、もっと撮って欲しい監督のひとりです。 で、「いとみち」、完璧でした。…

「ペトルーニャに祝福を」ネタバレレビュー・あらすじ:神は存在する 彼女の名はペトルーニャ、というマケドニア映画

邦題は「ペトルーニャに祝福を」という優しいタイトルになっていますが、英題は「GOD EXISTS, HER NAME IS PETRUNYA」です。マケドニア語の原題も同じ意味らしく、そのまま日本語にすれば「神は存在する 彼女の名はペトルーニャ」です。 ギリシャ正教とか東…

「幸せの答え合わせ」ネタバレレビュー・あらすじ:ウィリアム・ニコルソン監督自身の両親追憶映画

すごい映画ですし、面白いです。 老年夫婦の離婚話ですが、その離婚話自体が類似の映画とは随分かけ離れていますし、台詞だけではなく頻繁に語られる詩などの言葉にいろいろ意味が込められているようです。とにかくいろんな見方ができる映画で、ウィリアム・…

「オールド・ドッグ」ネタバレレビュー・あらすじ:映画から10年の今、老犬はいまだ死なず…を願う

今年の2月に見た「羊飼いと風船」のペマ・ツェテン監督、2011年の作品です。その年の東京フィルメックスでグランプリを受賞しています。 オールド・ドッグ / 監督:ペマ・ツェテン ラストシーンで一気にたちのぼる物語性 馬、バイク、走り抜けるトラック 息…

「BLUE/ブルー」ネタバレレビュー・あらすじ:昭和のドラマ、平成の価値観、令和の女性観

ボクシング映画というよりもボクシングジム映画というべき、リング上の格闘よりもそこにいたるまでの(やや年齢のいった)若者たちの「心の格闘」を描いた映画でした。 俳優によってドラマが生まれるいい映画です。 BLUE/ブルー / 監督:𠮷田恵輔 俳優がド…

「DAU. ナターシャ」ネタバレレビュー・あらすじ:ソ連全体主義再現プロジェクト

この映画を一般的な面白い面白くないという範疇で語ってもあまり意味がないかもしれません。なにせ「DAU」というのは壮大なプロジェクトであり、この映画は、13本の映画と6本のTVシリーズ(14本の映画と3本のTVシリーズかも)のうちの1本ということです。 ま…

「わたしの叔父さん」ネタバレレビュー・あらすじ:センスもよく、遊び心もあり、美しい

楽しい映画でした。そしていい映画でした。 このところ押し付けがましいドラマばかり、特に日本映画なんですが、物語を説明的に語る映画を見ることが多く、それらに比べてこの映画はとても新鮮で、あれこれ考えながら見られるとても楽しい映画でした。 わた…

「羊飼いと風船」ネタバレレビュー・あらすじ:映画のつくりやカメラワークが洗練されている

映画らしい映画です。プロの技みたいなものも感じます。 ペマ・ツェテン監督、初めて見ました。フィルメックスでは過去の作品も何本か上映され、この「羊飼いと風船」を含め3度の最優秀作品賞を受賞しているようです。 また、今年の3月には岩波ホールで「チ…

「この世界に残されて」ネタバレレビュー・あらすじ:ホロコースト サバイバーの医師と少女、そして男と女

昨年2020年のアカデミー賞国際長編映画賞のショートリストに選出されたハンガリー映画です。結局ノミネートされなかったということで残念ですが、逆に言えばアカデミー好みじゃないいい映画ということでしょう(笑)。 この世界に残されて / 監督:バルナバ…

「Swallow/スワロウ」ネタバレレビュー・あらすじ:フェミニズム、PTSD、そしてヒッチコック

すごいですね、この映画、まったく先が読めません。 で、終わってみれば、主人公ハンター(画像の女性)が「家」や「家族」という個人を抑圧する環境から自己を開放する物語でした。 タイトルの Swallow はこの映画ではツバメではありません。「飲み込む」「…

「滑走路」ネタバレレビュー・あらすじ:萩原慎一郎の歌集からのオリジナルストーリー

萩原慎一郎さんの歌集『滑走路』をベースにしたオリジナルストーリーの映画です。 桑村さや香さんのシナリオがとてもよく、それを大庭功睦監督が俳優の間合いを活かし緊張感を途切れさせず息苦しいくらいに張り詰めた映画にしています。 滑走路 / 監督:大…

「生きちゃった」ネタバレレビュー・あらすじ:圧倒的な太賀、何はなくとも映画は俳優

すごい映画ですね。 むちゃくちゃ集中させられます。ただ、映画館にいる間は、です。 生きちゃった / 監督:石井祐也 それでいいんですが、映画館から出て、あらためて思い返してみますと何の映画だったっけ? という感じがするんです。 非難ということでは…

「ダミアン・マニヴェル監督特集」若き詩人、犬を連れた女、パーク、日曜日の朝

「イサドラの子どもたち」公開記念ということでしょうか、ダミアン・マニヴェル監督の特集上映が行われています。 「犬を連れた女(2010)」「日曜日の朝(2012)」「若き詩人(2014)」「パーク(2016)」の4本です。 ダミアン・マニヴェル監督は五十嵐耕平…

「行き止まりの世界に生まれて」ネタバレレビュー・あらすじ:優れたドキュメンタリーはドラマになる

基本的にはセルフドキュメンタリーなんですが、他者であるキアーとザックのふたりにビン・リュー監督自身を投影することで監督自身の意識を客体化し、それにより映画自体を社会性のある客観的な映画に昇華させ、また映画そのものとしても見やすくすることに…

「荒野にて」ネタバレレビュー・あらすじ:居場所を求めて2000km、少年と馬の放浪の旅

劇場公開時に見ようかどうしようかと迷った映画です。 宣伝チラシの印象から少年と馬の交流を描いたほのぼの系のヒューマンドラマだと思い込んでしまったことと前作の「さざなみ(2015)」が映画としてさほどよく思えなかったことからです。 ところがDVDで見…

「LETO レト」(ネタバレ・レビュー)80年代ソ連の切ない青春物語と皮肉を込めた反権力

半月ほど前に見た「WAVES ウェイブス」に対しては「初めから終わりまでべったりくっついた音楽がうるさいですし、画のつくりがあざとすぎる」とやや(かなり?)批判的に書きましたが、この映画も同じようにほぼ全編音楽がついており、画の点でも下の画像の…

「その手に触れるまで」(ネタバレ)ラストはどちらに取るにしても衝撃的。怖さだけが残らなければいいが…

ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督、ほぼ3年に1本というペースが守られています。映画制作のプロセスが3年で出来上がっているんでしょうか、今回も2016年の「午後8時の訪問者」に続いての「その手に触れるまで Le jeune Ahmed(Young Ahmed)…

「黒四角」(DVD・ネタバレ感想)俳優の間合いと表情で物語を語る

いい映画じゃないですか! DVDのレンタル開始が2019年12月となっていましたので、最近の映画なのに記憶にないなあと思いながら借りましたら、2012年製作で日本での公開は2014年の映画でした。 ひとことで言ってしまえば、時間と空間を超えたラブストーリーと…

「レ・ミゼラブル」(ネタバレ感想)見なくてはわからないリアリティとダイナミズム

革命のダイナミズムとはこういうものかも知れない。 というのが、この映画を見てまず最初に思ったことです。戦争は突発的にでも起きますし、ある一人の意志で起こすこともできますが、革命はそういうわけにはいきません。 ある集団、階層、階級に共通した「…

「風の電話」(ネタバレ感想)この映画には俳優モトーラ世理奈ではなくハルがいる

10年という時の流れを経てもなお癒やされない悲しみを俳優の演技だけで表現することはかなり難しいことだと思います。それをやってのけたのがモトーラ世理奈さんであり、監督の諏訪敦彦さんです。 東日本大震災のことです。 ラスト、亡くなった家族へ「風の…

「パリの恋人たち」(ネタバレ)ルイ・ガレル、映画で戯れる

ルイ・ガレルさん、無茶苦茶楽しんで映画つくってます。 公式サイトにある「フランス映画界きってのサラブレッド」という枕詞(的な)がフランスでも言われていることかどうかはわかりませんが、こういう(映画の)センスには二世、三世という環境が大きく影…

「マリッジ・ストーリー」(ネタバレ)結婚、そして離婚、でも生きている Being Alive

Netflix 製作、配信は12月6日からですが、11月29日から先行劇場公開されています。 「イカとクジラ」「フランシス・ハ」「ヤング・アダルト・ニューヨーク」のノア・バームバック監督、主演は下の画像のようにスカーレット・ヨハンソンさんとアダム・ドライ…

「わたしは光をにぎっている」(ネタバレ)翔ばなくてもいい時代の青春ファンタジー

中川龍太郎監督、かなり注目している監督です。 一年ほど前に見た「四月の永い夢」がとてもいい映画であり、その名前になんとなく記憶がありましたので過去記事を検索しましたら、その三年ほど前に「愛の小さな歴史」を見ていたという、そんな始まりです。 …

「永遠の門 ゴッホの見た未来」(ネタバレ)シュナーベル監督の目を通しウィレム・デフォーの姿で見るゴッホ

フィンセント・ファン・ゴッホ37年の生涯のうち、亡くなるまでの2年あまりが描かれています。監督は「潜水服は蝶の夢を見る」のジュリアン・シュナーベル監督、あらためてこの監督の過去の作品をみてみますと伝記的な映画が多い監督です。 (的)としたのは…

「第三夫人と髪飾り」(ネタバレ)静謐なつくりに漂う悲哀、滲み出る情

始まってしばらくは、トラン・アン・ユン監督? と思うくらい雰囲気が似ていました。 ひとことで言えば静謐ということですが、ゆったりと流れる時間、少ない台詞、感情的なシーンを排しているにもかかわらずにじみ出る「情」、そういう映画です。 第三夫人と…

「ブラインドスポッティング」ネタバレ・レビュー/人種差別の複雑な内面化を描く

差別のある社会において、いや、もちろん、現在のところ、そうじゃない社会があるのかと言われれば悲観的にならざるを得ないわけですから、どんな社会においてもということになるのですが、ひとつは、差別する側に属する者は差別される者にどう対したらいい…