そんなには褒めないよ。映画評

映画を見てから読むブログ

「鉄道運転士の花束」(ネタバレ)セルビアの鉄道運転士は死者のために花を育てる

この映画はどんな映画? と聞かれたら、全体的なトーンとしては「アンダーグラウンド」っぽく、物語のベースは「人情もの」で、主演のキャラクターの矜持の有り様が「健さん」的と、そんなふうに答えるのがいいかと思います。 鉄道運転士の花束 / 監督:ミ…

「命みじかし、恋せよ乙女」(ネタバレ)樹木希林さんの遺作であり、HANAMI の続編

樹木希林さんを前面に出しての宣伝の効果でしょう、(私の)予想以上に入っていました。まさか日本ではあまり知られていないドーリス・デリエ監督の名前でということはないでしょう。 命みじかし、恋せよ乙女 / 監督:ドーリス・デリエ 「HANAMI」の完全な…

「永遠に僕のもの」(ネタバレ)アルモドバルプロデュースのクールな美少年犯罪ものを期待するが…

1971年に実際に起きた大胆な犯罪、その犯人の特異性、そしてそれを描くにぴったりの魅力的な俳優、映画を面白くできる要素は揃っています。それに半世紀前に起きた事件ともなれば、如何様にも料理できるはず、なのにどうしちゃったんでしょう? 永遠に僕のも…

「インターステラー」(DVD)理論物理学にもとづく硬派なSFを志向したけれど、軸はやっぱり父娘もの?

インターステラー(字幕版) 発売日: 2015/03/25 メディア: Prime Video この商品を含むブログ (8件) を見る こういう「終末、そして再生」みたいな物語はキリスト教世界にあっては永遠のテーマなんでしょう。過去、幾度も描かれてきた物語ではあります。何と…

「マイ・エンジェル」(ネタバレ)マリオン・コティヤールさんの熱演は認めますが、もういい加減…

またもこれかい! ネグレクトを愛情視点で描いちゃダメでしょ! という映画です。それに、子どもを救うのが擬似父親ってのもどうなんですかね…、ひと昔前の価値観じゃないでしょうか。 マイ・エンジェル / 監督:ヴァネッサ・フィロ 物語に目新しさはありま…

「北の果ての小さな村で」(ネタバレ)グリーンランド、人口80人の村の実在の人々が演じるドラマ

グリーンランドの物語です。 といっても、そもそものグリーンランドの位置をイメージしようとしても、北欧の…アイスランドの…と、(私は)その程度の曖昧さで終わってしまいます。その意味では、こういう映画は、それを機にいろいろ調べたりすることを含めて…

「ピータールー マンチェスターの悲劇」(ネタバレ)マイク・リー監督の関心は歴史ものに移っている?

マイク・リー監督、前作の「ターナー、光に愛を求めて」あたりから、興味の向く先が歴史ものに変わっちゃったんですかね。それに、そのターナーにしてもこのピータールーにしても、映画化するまでは知らなかったと語っているようです。 ピータールー マンチ…

「メモリーズ・オブ・サマー」(ネタバレ)12歳のピョトレックくんには大人の世界は不可解なはずだが…

この映画、見たときの体調が悪かったのか、ほとんど何も感じられず書かずに終わってしまうかと思っていたものを、記録程度にと書き始めましたら、やはりいいことは書けずに終わってしまいました。念の為。 メモリーズ・オブ・サマー / 監督:アダム・グジン…

「あなたの名前を呼べたなら」(ネタバレ)階級社会が色濃く残るインド、女性はどう生きる?

「あなたの名前を呼べたなら」のタイトルに、メイドの女性と裕福な男性の物語とくれば、立場が違うがゆえの悲恋物語なんだろうと割と簡単に想像できてしまいますが、この映画、そうまんざら捨てたもんじゃないです。 確かに、悲恋ではないにしてもそれに近い…

「パラダイス・ネクスト」(ネタバレ)豊川悦司、妻夫木聡、ニッキー・シエがかわいそう

フィルム・ノワール系が狙いなんでしょうが、これはかなり厳しい出来ですね。 監督は、「雨にゆれる女」の半野喜弘さん、音楽家としてのキャリアは長く、ジャ・ジャンクー監督やホウ・シャオシェン監督の音楽を手掛けている方です。映画では前作の「雨にゆれ…

「世界の涯ての鼓動」(ネタバレ)ヴィム・ヴェンダース監督の最新作はラブサスペンスか?

ヴィム・ヴェンダース監督、73歳、まだまだ精力的です。1,2年に1本の割合で撮っている印象です。 前作の「アランフェスの麗しき日々」では言葉の洪水でついていくのが大変でしたが、この「世界の崖ての鼓動」は、しばらく前から流れていた予告編を見て、…

「7月の物語」(ネタバレ)ギヨーム・ブラック監督のセンスが光る

「7月の物語」71分、「勇者たちの休息」38分、さらに「7月の物語」の方は、実質的には「日曜日の友だち」と「ハンネと革命記念日」の2本に分かれているという、劇場公開作としてはかなり変則的です。 ただ、「7月の物語」を見れば、ギヨーム・ブラック監督…

「カニバ パリ人肉事件38年目の真実」映画というよりビデオアートと思って見たほうがいい

「あまりに衝撃的な内容に各国の映画祭で途中退場者続出!」と煽っていますが、もしそれが本当だとすれば、それは映画がつまらないからでしょう。 カニバ / 監督:ヴェレナ・パラヴェル、ルーシァン・キャステーヌ=テイラー つまらないというのも正しくない…

「田園の守り人たち」(ネタバレ)絵画を見るようなフランス農村風景が美しい

思っていた以上にいい映画でした。 グザヴィエ・ボーヴォワ監督本人も語っているように、まったく戦場を描かない戦争映画という感じです。第一次世界大戦時のフランス、農業を営む一家の物語です。ふたりの息子と娘の夫、成人男性は皆戦場です。母と娘、そし…

「よこがお」(ネタバレ)筒井真理子さんよりも市川実日子さんの「よこがお」が見えてしまう

世界で認められた監督に対して失礼であることも、一観客からの余計なことであることも承知で言いますが、深田晃司監督は初心に帰るべきじゃないかと思います。 よこがお / 監督:深田晃司 丁寧に作られていることは認めますが、全く面白くありません。ネタ…

「マーウェン」(ネタバレ)モーションキャプチャによるフィギュア・アニメーションの世界

これは事前にマーク・ホーガンキャンプさんのことをよく調べてから見たほうがよさそうです。 マーウェン / 監督:ロバート・ゼメキス なぜかと言いますと、この映画の前段となるホーガンキャンプさんの身に起きた事件についてはほとんど描かれませんし、映…

「存在のない子供たち」(ネタバレ)「僕を産んだ罪」で両親を訴える子どもの絶望

ゼインという、実名と同じ役名の12,3歳の少年を演じているゼイン・アル=ラフィーアくん、下の画像の少年ですが、彼の演技があっての映画です。俳優ではなく、シリア難民で、現在は家族とともにノルウェイで暮らしているそうです。 存在のない子供たち / 監…

「慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ」(ネタバレ)人の生きざまは俗なものと裏腹の無常なり

これ、面白いですね。 チャン・リュル監督、知りませんでした。1962年生まれの中国籍の朝鮮族で、経歴は公式サイトの Director に詳しいです。アジアフォーカスや東京では上映されているようです。 慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ / 監督:チャン・リュル …

「僕はイエス様が嫌い」(ネタバレ)奥山大史監督、サンセバスチャン国際映画祭新人監督賞受賞作

奥山大史(ひろし)監督、現在23歳、この映画を撮ったのは青山学院大学(映画美?)の卒業制作だそうです。それにしてもびっくりするくらい映画がまとまっています。老成という言葉が浮かんできます。 僕はイエス様が嫌い / 監督:奥山大史 フィックスが多…

「さらば愛しきアウトロー」(ネタバレ)ロバート・レッドフォード、82歳、最後の出演作

ロバート・レッドフォードさん、82歳、俳優として最後の映画になるようです。 さらば愛しきアウトロー / 監督:デヴィッド・ロウリー 「明日に向って撃て!」からちょうど50年、下積みの時代が10年ほどあるようですのでおよそ60年、ハリウッドの第一線で俳…

「ワイルドライフ」(ネタバレ)ポール・ダノ監督デビュー作、大人ってワイルドだろぉ、って?

「ワイルドライフ」とは野生動物という意味、まさしく野生動物のように生きる両親の間にあって、必死に人間的(?)であろうとする子どもの、何とも痛々しい物語です。 ワイルドライフ / 監督:ポール・ダノ ジョー(エド・オクセンボールド)は14歳の少年…

「ゴールデン・リバー」(ネタバレ)西部劇がヒューマンドラマに変わる時

ジャック・オーディアール(オディアール)監督が西部劇? という感触を持っていたのですが、見てみれば、確かに、なるほどとも思える一風変わった西部劇でした。 ゴールデン・リバー / 監督:ジャック・オーディアール オーディアール監督は、ハリウッドで…

「Girl ガール」(ネタバレ)ララの究極の選択は本当に性別違和の解決か?

これまた何度も見せられた予告編から、性別違和を抱える男の子が周囲の偏見、差別に負けずにバレリーナ(女性バレエダンサー)を目指して頑張る感動ものかと思っていましたら、まったく、まったく、違っていました。 Girl ガール / 監督:ルーカス・ドン ベ…

「アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場」(ネタバレ)無名戦士たちの終わりなき継続戦争

現在、秋篠宮が外交関係樹立100周年ということでフィンランドを訪問しています。多少なりともその話題性を集客に結びつけようとしたかどうかはわかりませんが、2017年製作のフィンランドの戦争映画が公開されています。 アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場…

「ニューヨーク 最高の訳あり物件」(ネタバレ)マルガレーテ・フォン・トロッタ監督、ラブコメに挑戦か?

何度も見せられた予告編だけで充分だなあと思っていたのですが、ふと監督名を見ましたら、「ハンナ・アーレント」「生きうつしのプリマ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ監督ではありませんか! え、こんな映画撮るの? と半信半疑だったのですが、そうい…

「COLD WAR あの歌、2つの心」(ネタバレ)ズーラとヴィクトルを翻弄したのは冷戦か? 愛そのものか?

下の予告映像にグッときてこの映画を見たとしたら、見終えた後、どう評価すべきか迷うかもしれません。 映画『COLD WAR あの歌、2つの心』6月28日(金)公開 特報予告 この映画、想像力をフルに発揮して見ていませんと、いや、それでも初見では難しいかもし…

「新聞記者」(ネタバレ)新聞記者というより内閣情報調査室の官僚たちという映画

政治ネタを映画にするのは難しいですね。 圧力があるからということではなく、リアリティを求めれば地味だと言われたり、エンターテイメントに走ればわかっていないと言われたり、まあ、映画の題材には向いていない、特に日本ではということだと思います。 …

「アマンダと僕」(ネタバレ)パリ、ボルドー、ロンドンの日常風景の中の僕、という映画

アマンダの母親が亡くなることは予告編で知っていたのですが、理由はこれですか!? と、びっくり。それに、アマンダがその喪失感を乗り越えていく過程を描いた映画かと思っていましたら、そうでもなかったです。 アマンダと僕 / 監督:ミカエル・アース 昨…

「さよなら、退屈なレオニー」(ネタバレ)実はレオは”さよなら”しておらず、退屈と失望の真っ只中

「グザヴィエ・ドランにつづく新鋭×東京ジェムストーン賞受賞の未来を担う女優」の宣伝コピーにつられたとしても、裏切られることも後悔することもありません。 新鋭とはセバスチャン・ピロット監督、未来を担う女優とはカレル・トレンブレイさんです。 さよ…

「ウィーアーリトルゾンビーズ」ゲームボーイ世代&ロスジェネ世代の冷ややかなる憂鬱映画

「『そうして私たちはプールに金魚を、』が第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門でグランプリを受賞した新鋭・長久允監督の長編デビュー作(映画.com)」との紹介コピーですのでかなり期待度は高かったのですが… ウィーアーリトルゾンビーズ / 監督…