そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

おすすめ映画直近の4作品

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花咲くころ

監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス

(ほぼネタバレ)1992年トビリシ、14歳エカとナティアの二人は確かにその時そこで生きていたという映画

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ソニータ

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ

(ネタバレ)ドキュメンタリーとしての問題提起も含めオススメです

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汚れたダイヤモンド

監督:アルチュール・アラリ

(完全ネタバレ)ラスト10分のピエールの描き方が見事

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あさがくるまえに

監督:カテル・キレヴェレ

(ネタバレしても問題ない)のでよく知って見るべし。シンプルなのに情感豊か。

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最新記事

「RAW~少女のめざめ~」(ネタバレ)スタイリッシュな映像のグロさなしのカニバリズム映画

名古屋での話ですが、この映画、東方面に住むものには地の果てにも感じる(ペコリ)港方面のシネコンの、それも夜7時10分の1回しか上映しないというかなりひどい扱いをされており見逃すところでした。

なのに結構入っていましたよ。

カニバリズムを扱っていることもあるのでしょうか、マニアックな映画かと思われそうですが、映像も美しいですし、笑えるところもあったり、少女の成長物語と言えなくなく、ベタなヒューマンドラマよりは映画らしい映画で、もう少し売り方を考えればいいのにと思います。

監督:ジュリア・デュクルノー

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公式サイト

 

監督は30代なかばのフランス人ジュリア・デュクルノーさんで、この映画が長編デビュー作とのこと、2016年のカンヌ批評家週間で国際批評家連盟賞を受賞しています。

 

物語は、ベジタリアン(ビーガン)として育てられたジュスティーヌ(ギャランス・マリリエ)が、両親が卒業し姉のアレックス(エラ・ルンプフ)も在学中の獣医科大学に入学し、それが契機で肉食、ひいてはカニバニズムに目覚め、姉妹間に波乱が起き、あることを知るというものです。

 

カニバリズムを扱った映画はおそらくホラー系ではたくさんあるのでしょうが、グロさを売りにしないいわゆるドラマ系でずばりカニバリストが主役というのはさほど多くないように思います。

 

「カニバル/マヌエル・マルティン・クエンカ監督」なんて映画もありました。

 

で、この映画ですが、冒頭に少女の成長物語という言葉を出しておいてなんですが、おそらく監督にそういう意図はないでしょう。もちろんジュスティーヌはカニバリズムに目覚めはするのですが、映画はその過程やジュスティーヌが自分自身に戸惑ったりすることに興味を持っているとは思えません。

 

おそらくもっとシンプルでしょう。ああいう画が撮りたかったということだと思います。

 

ジュスティーヌが最初にカニバるシーン、誤って切り落としてしまった姉アレックスの中指(だったと思う)を食べるのですが、これが実に美味しそうに食べるのです。まるで骨付きチキンを食べるように、指を手に持ち横からかじり、そして滴り落ちる血をすすり、そしてまるごとしゃぶるのです。

 

美しいという表現が当たるかどうかは個々人の嗜好にもよりますが、おぞましさや不快さは感じられません。

 

そうした監督の美意識が前面に出た映像が連続する映画と考えたほうがいいと思います。

 

冒頭の美しい並木道の遠景、入学したジュスティーヌたち新入生が上級生に手荒く歓迎される一連の密集する人間たちの映像、(前後意味不明ですが)黄色の塗料をぶっかけられたジュスティーヌと青色の男子学生が、上級生に2人で緑色になってこいとトイレ(だったかな?)に押し込まれて抱き合い緑色になっていくシーン、ジュスティーヌが空腹(だったかな?)に苦しみシーツの中で蠢くシーン、その他学園内の様々なシーンも監督のセンスを感じさせます。

 

とにかくカニバリズムの映画であってもグロさはなく、他に言葉が見つからないのであえて言えばスタイリッシュですし、男女間の話で言えば、ジュスティーヌのルームメイトをゲイの男性にしているのも意図的でしょうし、その男性との初めてのセックスもカニバりたい欲望の高揚感なのかジュスティーヌを興奮状態にして相手の男性にもうやめろと言わせているのもちょっと笑えてセンスを感じさせます。

 

物語としては、次の朝目覚めてみればその男性の足が食われて死んでおり、ジュスティーヌは自分が食べたのだと混乱しますが、実は姉のアレックスが食べたのであり、それによりアレックスが(前後不明ですが)殺人犯として逮捕されるという展開をたどります。

ラスト、悲しみに暮れるジュスティーヌを前に、父がおもむろに自分のシャツのボタンをはずし始めます。何と、父親の上半身は傷だらけです。もちろん母親がかじった(笑)傷ですが、父親はその傷だらけの胸を見せながらつぶやきます。

「何か方法を見つけよう」(ちょっと違うかも)

 

は? なら、わざわざベジタリアンに育てた娘を自分たちが出会った獣医科大学に入れなくてもいいんじゃないのと大笑いさせて終わります。

 

この映画にあれやこれや意味を付加して何かを読み取ろうとするのはあまり良い見方とは思えません(笑)。

 

ああそうそう、冒頭の美しい並木道の遠景のシーンは結構面白いシーンです。

並木道を遠くから女性かな?というくらいしか誰ともわからない人物が歩いてきます。カットが反対方向に変わり車が猛スピードでやってきます。ふたたび元のカットに戻りますと道路には誰も見当たりません。車がフレームインしてきます。すると突然木の陰に隠れていた女性が車の前に飛び出します。車は急ブレーキを踏みハンドルを切り木にぶつかります。

 

映画の中盤、自分の指を食べたジュスティーヌがカニバリズムに目覚めたと知った姉アレックスは、ジュスティーヌをその並木道に連れていき、突然座って話そうといいます。私はここで、はあ?とぷっと吹き出してしまったのですが、次のカット、アレックスが冒頭のシーンと同じことをするのです。つまり、妹にうまく人肉を手に入れる方法を教えたということです。

冒頭のシーンは、アレックスが刑務所に入った後、ジュスティーヌがひとりで同じことをしたということです。

 

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