そんなには褒めないよ。映画評

ミニシアター系映画レビュー*沈黙する言葉

映画タイトルの50音順メニュー作りました!

おすすめ映画直近の4作品

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ナチュラル・ウーマン

監督:セバスティアン・レリオ

(ネタバレ)ロッカーの中にあったもの、それはマリーナがマリーナであるためのもの

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花咲くころ

監督:ナナ・エクフティミシュヴィリ、ジモン・グロス

(ほぼネタバレ)1992年トビリシ、14歳エカとナティアの二人は確かにその時そこで生きていたという映画

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ソニータ

監督:ロクサレ・ガエム・マガミ

(ネタバレ)ドキュメンタリーとしての問題提起も含めオススメです

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汚れたダイヤモンド

監督:アルチュール・アラリ

(完全ネタバレ)ラスト10分のピエールの描き方が見事

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最新記事

映画「海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~」難民の死体のシーンは監督の葛藤の結果のようです

ジャンフランコ・ロッシ監督、ドキュメンタリーでありながら(というのも変ですが…)、2013年の「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」がヴェネチアで金獅子、この「海は燃えている」が昨年2016年のベルリンで金熊、快挙そのものでしょう。

監督がドキュメンタリーというものをどう考えているか、記者会見でこんなことを語っています。

『ドキュメンタリーとフィクションで区別をしたくないのです。現実を切り取るとき、私はシネマという言語を使いたいだけなのです。』(webDICE

その通り、現実を切り取った映画(シネマ)だと思います。

 

監督:ジャンフランコ・ロージ

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アフリカ大陸に最も近いイタリア最南端の島ランペドゥーサ島。ヨーロッパを目指す難民移民の玄関口だ。ひとたび救難要請が入ると、無線が飛び交い、ヘリコプターが飛び立つ。そんな緊迫した様子とは対照的に、島の日常は流れていく。同じ島にありながら、島の生活と難民たちの悲劇は交わることがない。小さな島の中には死があり、生がある。美しく詩情溢れる映像と共に描かれるそれぞれのストーリーがドラマチックに心を揺さぶる。(公式サイト

 

そうした意味でもより現実を理解するためには、この映画を見る場合は事前にネットなどで情報を入れていったほうがいいと思います。

 

フィクションと区別をしていないとは言え、エンタメ度はほぼゼロですし、明確なストーリーがあるわけではありませんので、事前情報をもとにワンシーンワンシーン自分自身で組み立てつつ見ていったほうがより深く理解できます。

 

上の公式サイトからの引用にあります『島の生活と難民たちの悲劇は交わることがない』ということも、私自身ぼんやり見ていたこともありますが、映画から強く伝わってくるわけではありません。その対比が強調されているわけでもありませんし、(映像的には)ほぼ同じリズムで淡々と住民の生活と難民の救出劇が進行していきます。

 

画は一貫して美しく、ほぼ固定カメラで撮られていますので手持ちカメラのようなブレはまったくなく、それが、逆に救出シーンで映し出される船倉で折り重なって死んでいる難民たちの姿が衝撃的に目の前に現れます。実際、私自身、それまで幾度も落ちそうになっていたのですが、そのシーン、瞬きもできないくらいの衝撃でした。

このシーンついて監督は、インタビュアーから、トルコの海岸で撮られたシリアの子供の写真の話を振られ次のように語っています。

トルコの子どもの死体の写真は、搾取的だから嫌いだった。ただ見る人に大きなショックを与えるだけで、そこにコンテクストがない。(略)今回、難民たちの死体をみて、わたしのなかでこれを映画でみせるべきか、みせないでおくべきか、大きな葛藤があった。でも、映画でコンテクストが伝えられることがわかっていたから、あのシーンをみせることに決めたんだ。WIRED

 

島の住民たちを捉えたシーンでは、「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」同様、みな全くカメラを意識していません。監督は「映画づくりでいちばん大切なのは時間だ」と語ったことについて、こう説明しています。

時間が大切だと言ったのは、まずそこにいる人々と信頼関係を築く必要があるからなんだ。人々が、自分をオープンにさらけだすことができて、カメラが回っているということを忘れるくらいの信頼関係を築けるまで、じっくり待たなくてはいけない。(WIRED) 

 

フィクションであれば主役とも言える12歳の少年サムエレくん、ほんとうに自由に撮られていました。手振り身振りが妙に大人っぽく、弱視の検査を医師から受けるところの会話にはびっくりしましたし、ペスカトーレをずるずるとすすって食べるところは笑ってしまいました。

 

監督は、一年半島に移り住んで撮ったと語っています。

 

個人的にはもう少し監督の立ち位置といいますかぐいっ!としたもの(?)を明確にしてほしいと思いますが、ジャンフランコ・ロージ監督にしてみればそんなことは余計なお世話でしょう。

 

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