ぐるりのこと。/橋口亮輔監督

個人的には苦手な映画ではありますが、完成度は高く、劇場で見れば集中して見られたでしょう。恋人たち」では、結構厳しいレビューを書いてしまいましたが、旧作を見てみたいと書いた通り、代表作(でいいのかな?)「ぐるりのこと。」を見てみました。

ちなみに、「恋人たち」はキネ旬の2015年日本映画ベストテンの1位でした。

で、ついでに外国映画のベストテンは何かなと見てみましたら、私の見ている映画が三作入っており、何とそのいずれもが(私の)評価の低い映画でびっくりです(笑)。

5位「黒衣の刺客」、7位「セッション」、8位「雪の轍」です。

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なるほど、橋口亮輔監督はこういう映画を撮る方なんですね。「恋人たち」も、この映画を見て共感できるのであれば当然評価も高くなると思います。

役の作り込みや台詞の自然さ、と言うか日常化ですかね、それに間合い、かなり厳密に作ってあります。「恋人たち」ではアツシ(篠原篤)でしたが、この映画では翔子(木村多江)を結構、いわゆる「役者を追い込む」という手法で撮っているようです。

私はそうした手法で撮られた俳優、この映画で言えば台風の夜の翔子がそうですが、そうした俳優を見ているとさーと気持ちが引いていってしまいます。もちろんこれは好みの話ですので、映画の出来不出来とはまた別の話です。

その引き具合で言えば、リリー・フランキーさんの存在がその感覚を随分和らげている感じがします。この方は不思議な人ですね。いろいろなことをやっているようですが、俳優としても懐が深い感じがします。「凶悪」で演っていた得体のしれない悪役が結構印象に残っています。この映画では、この人の存在で「役者を追い込ん」で作る映画の鬱陶しさがうまく中和されているように感じます。

「恋人たち」は映画的にも未完成という感じを受けましたが、これはうまく出来ています。特に翔子が立ち直って生きることに自信を持っていく後半、特に説明することなく、音楽とテンポのいい編集で一気に空気を和らげて明るくしています。

ラストカットで、カナオ(リリー・フランキー)が窓辺から街の人々をながめて「ひと、ひと、ひと…」とつぶやきますが、橋口監督の思いでしょう。

さみしがりやには(多分)ぐっとくる映画です。

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