黒衣の刺客/ホウ・シャオシェン監督

ホウさん、これじゃ分かりませんよ(笑)。と言うより、ストーリーなどどうでもいいか…

「最も美しく、最も静謐な、新しい武侠映画」と言われても、武侠映画であるなら、もう少しストーリーを分かりやすくしてくださいよ(笑)。これじゃ、誰が誰やら、誰と誰がどういう関係やら、よく分かりません。 

唐代の中国。13年前に女道士に預けられた隠娘(インニャン/スー・チー)が戻ってくる。両親は涙を流し迎え入れるが、美しく成長した彼女は暗殺者に育て上げられていた。標的は暴君の田季安(ティエン・ジィアン/チェン・チェン)。かつての許婚であった。どうしても田季安に止めを刺すことができず、隠娘は暗殺者として生きてきた自分に情愛があることに戸惑う。「なぜ殺めるのか」と、その運命を自らに問い直す。ある日、窮地に追い込まれた隠娘は、日本人青年(妻夫木聡)に助けられる…。数奇な運命に翻弄される孤独な女刺客を慎み深く描き”アクション”という枠を越えた壮大なドラマがスクリーンに映さだされる。(公式サイト

ホウ・シャオシェン監督の映画だからと、特別何も事前情報を入れずに見に行った私は、途中で、と言うよりかなり早い段階で、もうストーリーや人間関係を追うことは諦めました。そんなものを見せようとしてるんじゃないよと、どこからか声がしたような…。

じゃあ何を見ていたかって?

ホウ・シャオシェン監督は、こういうフルショットくらいのサイズの画とか、紗越しのような画とか、風に幕が揺れている画とか好きだよなあとか、フィックスから極めてゆっくりパンしていくカットは監督の好みなのか、リー・ピンビンさんの好みなのかとか、相変わらず台詞が少ないなあとか、そんなことを考えながら、全く映画に集中することなく終わりました。

まあ、ワン・シーン毎の画を見て下さいということかなあと思います。

あるいは、あえて言えば、隠娘(インニャン/スー・チー)の孤独を浮かび上がらせたかったのかという気もしますが、それにしては、インニャンのシーンが少なすぎますし、いくらスー・チーさんの横顔の佇まいを強調しても、そもそも刺客としての影がなさすぎて、ちょっとばかり難しいですね。

ところで、映像サイズですが、カットマスクが 16:9 くらいの幅になっているのに、映像自体は 4:3 くらいで始まりましたので、どこかでサイズが変わるのかなと思っていましたが、白黒からカラーに変わるところでも相変わらず 4:3 くらいのサイズで、あれ、最近はフィルムじゃないからこういう上映方法かなあ、見づらいなあなんて思っていましたら、中国の琴(古琴?)を弾く場面が 16:9 くらいのサイズになっていました。

で、そのまま行くだろうと思っていましたら、次のシーンからはまた 4:3 くらいに戻って、最後までそのままでした。あれは何? 私の見間違いだったのでしょうか?

ということで、静謐ではあっても、やや冗長に流れ、シーン毎は美しくあっても、映画的美しさにはやや遠く、結局のところ、新しい武侠映画というにはちょっとばかり苦しいかなという感じでした。